作品名 | しあわせな孤独(Elsker dig for evigt) |
監督 | スザンネ・ビエール |
制作年・製作国 | 2002年デンマーク作品 |
デンマークの医師ニルスは、妻マリーと三人の子供たちと平凡ながら暖かい家庭を築いていました。携帯電話をビニールケースに入れ腰から下げているスタイルから想像できるように、ニルスは勤勉で心優しい夫。ある日マリーが車の運転中に長女と口論になり、ハンドル操作を誤って事故を起こしたことから運命の歯車が狂い出すのです。
マリーの車が追突したのは、ヨアヒムという若者でした。恋人のセシリに見送られ地質調査の旅に向かうところで、突然の悲劇に襲われたのです。ヨアヒムは病院に運ばれましたが、意識不明の重体。数日前にプロポーズされ幸せに包まれていたセシリも、奈落の底に突き落とされます。
一命を取りとめたヨアヒムでしたが、首から下の感覚がなくなってしまいました。陽気だったヨアヒムは、ベッドで横たわるだけの自分の姿に絶望し、すっかり心を閉ざしてしまいました。セシリがお見舞いに行っても、ヨアヒムは口も聞こうとしません。
セシリは愛するヨアヒムのために何か役に立ちたいと毎日病室に通いますが、ヨアヒムの神経をさかなでするばかり。
とうとうセシリは
「頼むから二度と来ないでくれ」
と、ヨアヒムに言われてしまいます。
ロビーで涙にくれるセシリに、ためらいながらも声をかけたのが同じ病院で働くニルスでした。マリーはヨアヒムに対する良心の呵責から、セシリを励ましてあげるようニルスに頼みます。
セシリは唯一悩みを打ち明けられる相手として、ニルスと幾度となく会うようになります。どんなに冷たくされてもヨアヒムに尽くす姿を見ているうちに、セシリに対する想いが同情からもっと深いものに変わっていったニルス。ヨアヒムに拒絶され傷ついた時、セシリは安らぎを求めてニルスの携帯に電話をかけるようになります。
「セシリよ。ヨアヒムが私を追い出したの。まるで私が悪いみたい」
「君のせいじゃない」
電話の向こうで泣き出すセシリ。
「君のところへ行こうか?」
「来て」
こうしてセシリとニルスは病院だけでなく、セシリの家で、それも電話があれば真夜中でも出かけて会うようになったのです。それでも、セシリは依然ヨアヒムの病室に通い、ニルスは家に帰れば良きパパを演じていました。セシリはヨアヒムを放っておけず、ニルスも家庭を壊すつもりはありませんでした。
交通事故の加害者と被害者の立場で接点を持った二人が、愛し合うなど考えられないこと。それでも二人は会うたびに、惹かれ合ってしまったのです。
ニルスは手遅れになる前にと心に決めて、セシリと距離を置こうとしますが、久しぶりに子供と一緒に出かけたスーパーマーケットで、思い出すのはセシリのことばかり。
息子には
「パパは携帯電話ばかり見てる」
と言われる始末。
耐え切れずにニルスはセシリに電話してしまいます。
「元気かい?」
「あなたは?」
「スーパーマーケットにいるんだ。買い物をしながら君のことを考えている」
思い詰めた口調でセシリに告げます。
「どうしても君に伝えたいことがある」
ニルスの気持ちは止められなかったのです。
「君に本気で恋をしたらしい」
どうしようもなく恋に落ちてしまった二人。ニルスとセシリの切ない恋の行方はどうなってしまうのでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.