「auの強さ」は本物か(1/2 ページ)

» 2004年04月13日 14時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 3月の戦いは、携帯電話業界にとって重要な意味を持つ。

 新生活・新年度を控えた3月は新規加入やキャリア変更をするユーザーが多く、幅広いユーザー層が動く。キャリアの実力やブランド力が如実に表れる商戦だからだ。

 これまで、3月の戦い、いわゆるサクラ商戦でドコモが他キャリアに敗れたことはなかった。他キャリアに2倍以上の大差をつけて勝つことが通例になっており、幅広いユーザー層から信頼されるドコモの底力とブランド力を見せつけた。

 小手先の新サービスや料金割引、トレンド的な端末ではドコモに勝てない。それがサクラ商戦であり、ドコモの強さの証拠だった。

 しかし、今年は春の嵐が起きたようだ。

 既報のとおり、電気通信事業者協会(TCA)の発表によると、純増1位はauで純増47万5700契約。ドコモは純増41万2800契約で2位に甘んじた。ボーダフォンは純増9万9400契約、ツーカーは解約者数の方が多い純減9600契約だった(4月7日の記事参照)。

 つば競り合いの結果ではあるが、3月の純増数でauがドコモに勝った。これは過去5カ月間、純増数でauが勝ち続けたこととは全く意味が違う。auが純増数で快進撃を続けた昨年も、3月だけはダブルスコアでドコモが勝っていたのだ。

 純増数で勝ち続け、サクラ商戦まで制したau。彼らの強さは「本物」なのだろうか。

photo 各キャリアの単月の純増数の推移。今年の3月はauが純増数1位を勝ち取ったが、昨年の3月はドコモが圧倒的な純増数を誇った

3G端末に見る「約束された勝利」

 今年のサクラ商戦が従来と異なったのは、多くのユーザーが初めてパケット料金割引の存在を意識したことだ。第2世代でもパケット料金割引を行うボーダフォンを除けば、「第3世代」であることが新規加入の前提条件のひとつになっていたことだろう。端末の完成度、商品力という点では極めて成熟したドコモの2G「ムーバ」が、あまり売れていないことを見てもそれは明らかだ。

 ドコモとauは3Gラインアップが争点になった。しかし、両社の布陣には大きな違いがあり、それが3月商戦の明暗を分ける一因だったといえるだろう。

懐が深いauの3Gラインアップ

 周知の通り、auはすべてのラインアップを3G化している。その上で投入された冬から春にかけての新端末は、ハイエンドからエントリーモデルまで幅広いラインアップが揃っており、各モデルごとにターゲットユーザー層とコンセプトが分かれていた。また「A1402S」や「A1304T」のように、コンセプトが明確で、ターゲットユーザー層にとって魅力的なエントリーモデルが存在するのも特徴だ。

 一方で、ドコモやボーダフォンのハイエンドモデルに見られる最新機能・新サービスをすべて網羅した「全部入り」モデルは存在しない。それに近いのは「A5505SA」だが、これは最新の3Gコア技術1x EV-DOを使ったCDMA 1X WINではない。

 スペックを重要視するユーザーならば、“全部入り”がなく、新機能・新サービスの対応がバラバラのau端末ラインアップを見て不満を覚えるだろう。ハイエンドユーザーの視点では選択肢が少なく感じるのだ。実は筆者も当初、auのラインアップに違和感を感じたひとりである。

 しかし、スペックや端末メーカーのブランド重視ではなく、自分の利用シーンやライフスタイル重視で選ぼうとすると、auのラインアップは選択するモデルの“落ち着きどころ”がはっきりしている。多様なニーズとライフスタイルを、方向性の違う各端末のコンセプトが受け止めている印象だ。

 例えば先述のA1402Sは、ライトユーザーのニーズが高いQVGA液晶とコンパクトで質が高いデザインにリソースが割かれており、一貫したコンセプトに基づいて機能の選択と集中が行われている。

 「(auでは)お客様がライフスタイルに合わせて端末を選べるように、意図的にラインアップ全体のターゲットは絞っていません。これが奏を功し、現在、新規ユーザー層は男女や年齢を問わず、全体的に伸びています。また、ある1機種が極端に売れるといった傾向がなく、(端末コンセプトの分散化は)いい方向に出ています」(KDDI au営業本部au営業企画部企画グループリーダーの堀田和志次長)

 つまり、auの端末ラインアップは、全体として懐が深いのである。端末メーカー同士が偏りある競合をするのではなく、それぞれ独自のコンセプトで無理なく共存できている。

入り口戦略としては正しい900i

 一方、ドコモの3G端末のラインアップ構成は、20代半ばから30代にかけての高感度ユーザーをターゲットにしたハイエンドモデル「900i」シリーズがほぼすべてだ。900iシリーズは、ラインアップ全体で端末スペックの足並みを揃えた「艦隊方式」で、シリーズ全体が同じターゲット層を向いている(関連記事参照)。

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