メタノールを使わない、90ドルの燃料電池

» 2004年10月28日 19時19分 公開
[IDG Japan]
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 競合技術よりもコンパクトで強力なノートPC向けの新しい燃料電池が、2006年初めに90ドル程度で登場するかもしれない――日本の開発者が10月25日、こう語った。

 水素エネルギー研究所(MERIT)は、ダイレクト・ボロハイドライド燃料電池(DBFC)技術に賭けている。この技術はほかの日本企業が開発しているダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)よりも安価でコンパクトだと同社は考えている。

 燃料電池は水素を含有する燃料と酸素の化学反応から電気を取り出す。生み出される電気の量は、正確な化学反応や燃料と酸素を隔てる電解質膜の面積など、多数の要因に左右される。燃料電池が電気を生み出せる時間は、特定の反応の性質や蓄えられた燃料の量によって異なる。

 MERITが開発したDBFC技術はDMFCタイプに似てはいるが、幾つか大きなアドバンテージがあると同社の須田精二郎社長は語る。

 DMFCと同様に、MERITの燃料電池にも陽極と陰極、電解質膜があるが、燃料にはメタノールの代わりに水素化ホウ素ナトリウムの溶液を使う。この燃料電池が生み出す電力は、電解質膜の面積が同じDMFCの約4倍だと須田氏は説明する。

 「DBFCでは陽極に非常に安いニッケル合金を使っており、電解質膜は従来のものだ。これらはすべて非常にコンパクトだ」(同氏)

 同氏によると、MERITの燃料電池は大きさ80×84.6×3ミリ程度で、ノートPCには十分な20ワットの電力を発生させられる。「当社ではこの燃料電池を5つ重ねてつなぎ、100ワットの電力を発生させることも考えている。4カ月以内に、量産可能なことを最高の状態で実証するために、実際に使える試作品を用意する」

 この燃料電池は2006年の最初の数カ月のうちに市販開始されるはずで、価格は90ドル程度になるだろうと同氏は語った。

 水素化ホウ素ナトリウムは室温で水に溶け、雑誌や印刷紙の漂白によく使われている。アルカリ溶液に10%までの濃度で溶かすと、ペンやプリンタインクカートリッジの形をしたカートリッジに保存できる。この燃料溶液を10ミリ〜20ミリリットル入れたカートリッジで、3〜4時間電気を供給できると須田氏。

 水素化ホウ素ナトリウムのコストは通常、キロ当たり50ドル程度。この価格なら、カートリッジ1個分はおよそ150円(1ドル40セント)になるだろうと同氏は言う。

 「当社はまた、幾つかの欧米の化学薬品会社と話し合いをしており、彼らは水素化ホウ素ナトリウムの量産契約に意欲的だ。5年ほどすれば、価格はキロ当たり1ドルにまで下がるかもしれない」(須田氏)

 MERITは、燃料電池の商用生産に向けて日本国外の企業2社と話し合っており、この電池を小売店に提供するために多数の流通業者とも交渉している。同社は、年内に電池の製造・流通契約を結ぶ自信があるという。

 またMERITは研究施設で、携帯電話向けのもっと小さな燃料電池の試作品を開発した。この電池は20×30×2ミリ程度の大きさで、1ワットの電力を生む。同社はこの試作品を10ミリ平方にまで縮小する計画だが、商品化計画はまだ確定していないと須田氏。

 日本の大手家電メーカー数社はノートPC・携帯電話充電器向けのDMFCの試作品を披露しているが、製品版の価格は発表していない。

 今月初めには日立がノートPC向け燃料電池を展示し、先週にはNECがノートPCのドッキングステーションに似たノートPC向け燃料電池を披露している(10月19日の記事参照)。

 NTTドコモと富士通研究所は8月に携帯電話向け燃料電池を発表し、日立と東芝は今月、携帯電話の充電器型の燃料電池を披露した。東芝は今年に入って携帯機器向けの燃料電池を発表している。

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