2004〜2005年 いよいよ始まる「番号ポータビリティ」戦争(2/2 ページ)

» 2004年12月24日 11時52分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 匿名を条件に取材に応じた複数のドコモ関係者は、「901iは小粒なのではなく、902iに向けてあえて堅実路線を取ったモデル」だと話す。稼働(累計)シェアの大きいドコモにとって、MNPはどうしても防衛戦になる。そこで勝つためにはMNP導入時に選べる端末やサービスが他社より強力である必要がある。

 「2006年夏頃の商戦を睨むと、(その時期に価格が落ちる)902iと902iSのラインアップが重要。そこに向けてドコモとメーカーの開発力を集中させている。新サービスや新機能で攻めるのは902iだ」(ドコモ関係者)

 むろん、901iは捨て駒などではなく、既存ユーザーを3Gに移行させて、おサイフケータイや3G向けiモードに慣れさせる重要な役割を担っている。またFOMAエントリーモデルである「700iシリーズ」(10月29日の記事参照)が未だ存在しない以上、901iの性能や価格を“ハイエンド向け”に絞りきれない事情もあるという。

 一方、auとボーダフォンはMNPに向けて、まずはブランド力を向上させる必要がある。特にauは目標がドコモだけに、MNP開始までにドコモ並の知名度と信頼性を獲得し、その上でドコモより魅力的なイメージを持てるかが重要だ。

 『着うたフルの勝算』でKDDI執行役員コンテンツ・メディア本部長の高橋誠氏が話したとおり、auブランド戦略の両翼が着うたフルとau design projectである。この2つを要として、auは2006年までドコモを攻め続けていく必要があるのだ。

 前述のとおり、ドコモが本格的な反撃にでるのは2005年後半から2006年。それまでは今の「果敢に攻めるau、堅実に守るドコモ」という構図は変わらないだろう。

ボーダフォンとツーカーはどうなる

 今年はボーダフォンにとって悪夢の一年だった。

 auの攻勢に触発され、ドコモも3Gシフトを加速する中、ボーダフォンは年末商戦まで本格的な3Gの陣容を整えることができず、頼みの綱だったプリペイド携帯電話にも逆風が吹いた(9月30日の記事参照)。ダリル・E・グリーン社長の辞任(6月23日の記事参照)とリストラで社内が動揺し、2003年から続いた朝令暮改ともいうべきサービスの改変で、ユーザーからの信頼とブランドイメージが大きく傷ついた。

 しかし、年末にはいいニュースが続いた。3G端末が出そろい、新3G向けの新サービスの準備が整った(11月10日の記事参照)。また代表執行役社長兼CEOに、ドコモから転身した津田志郎氏が就任した(8月16日の記事参照)。これらの出来事により、ボーダフォン社内の士気は上がってきている。

 MNPを前提に考えると、ボーダフォンに残された時間はあまりない。2005年中にサービスとブランド力を大きく向上させなければ、2006年に三つ巴の戦いに持ち込むどころか、既存ユーザーを切り崩される危険性すらある。

 今年のボーダフォン3Gラインナップは、端末とサービスともに、ようやくスタートラインについた段階だ。メール機能の充実や海外メーカー製モデルの存在など他社にない魅力もあるが、まだドコモとauの3Gに正面から対抗できる段階にはないだろう。ユーザーの信頼とブランド力も、早期に回復させる必要がある。

 同社の津田志郎社長は、社長就任記者会見において、「新端末、新料金、新サービスにおいて、写メールのようなヒットが必要」だと語った(12月8日の記事参照)。ボーダフォンの焦眉の急はまさにここである。ドコモとauの後追いでは、ボーダフォンは消耗戦を強いられるだけで終わる。写メールの時のように、ケータイに新たな使い方を加えるような斬新なアイディアが、独自のサービス・端末として投入されなければ、2005年も苦しい戦いで終始してしまうだろう。

 社長会見を見るかぎり、津田新体制のマインドはいい方向を向いている。あとはそれが“いつ”サービスとして実現できるか、であろう。

 また、「ツーカーS」で一躍脚光を浴びたツーカーセルラーの来年も気になるところだ。同社はこれまでKDDIグループにおける立ち位置が今ひとつ定まらなかったが、ツーカーSによって「auにできないことをやる」という立場がはっきりした。

 auはドコモに対抗するため、清新でセンスのよいイメージを持つプレミアムブランドを目指している。自動車業界でいえば、メルセデスベンツに対抗するBMWやアウディのような位置づけだ。しかし、そのブランド戦略の課程では、ツーカーSのように高齢者向けの取り組みはしづらい。auブランドの補完として、ツーカーセルラーが果たす役割は今後大きくなるだろう。

2005年は「総力戦」の始まり

 来年、2005年は、MNPに向けた総力戦が始まる。

 キャリア間はもちろん、端末メーカー同士の戦いも激しさを増すだろう。ケータイは端末・サービス・ブランドの総合力で選ばれる。サービスとブランドは一朝一夕では育たないため、剣が峰はMNP導入の2006年だとしても、そこまでの前哨戦が重要だ。

 また、MNP開始後の2006年〜2007年には、ソフトバンクなど「新規参入組」が登場する可能性が高い(12月6日の記事参照)。既存キャリアにしてみれば、2005年の前哨戦から2006年の早い段階で総力戦に持ち込み、地歩を固めたいと考えているだろう。

 ケータイの進化とビジネスの両面で、「次の5年」はその前の5年よりも流れの速い時代となるのは確実だ。それがユーザーにとってメリットのあるものとなることに期待したい。

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