現代の若者は、携帯ばかりいじっていて活字離れが進んでいるといわれる。だが中には携帯を利用して、詩を書いたり、小説を書いたり、「万葉集」の和歌に親しんだりしている女子高生もいるようだ。
携帯向けコンテンツプロバイダのボルテージは、10代のユーザー向けに「恋&詩♪10代トーク」などを提供している。同サイトでは、1日に130作品を超える詩が投稿されるとのこと。どんな雰囲気なのか、担当者に話を聞いてみた。
恋&詩♪10代トークは、ユーザー同士が情報交換したり、恋愛相談したりできるサイト。EZwebとボーダフォンライブ!で提供中で、両サイトを合わせた延べ会員数は10万人を超えている。ユーザーアンケートによれば、全体の23%が中学生。高校生が36%、専門学生/大学生が10%で、無回答が29%といった内訳になっている。
メインコンテンツは、読者からの投稿。「中でも人気があるのが、詩を扱う『ティーンズの詩』」(広告グループの中村芙美子氏)だという。内容はさまざまだが、やはり恋愛関連の詩が多いようだ。
「愛」
壊れそうな愛だった
きっとこのままじゃ
駄目になることだって
分かってた
だけど
なにもできなかった
(中略)
逃げて
諦めて
弱音はいて
カタチだけじゃ
駄目になること
分かってたのに
彼女たちは、携帯の画面上で詩を書きつづり、それをそのまま投稿してくる。携帯で読まれる詩だから、行間などにも凝っていると中村氏。上の作品も、行間を多くとることで“間”をとっている。「スクロールしないと次が読めないよう、言葉を並べたりしている」
サイトでは、いいと思った詩に肯定的な評価ポイントをつけることができる。これにより、殿堂入りする詩なども出てくる仕掛け。興味を持ったユーザーは、何度も投稿してくるという。
ボルテージでは、やはり10代の女性向けに「100シーンの恋」というサイトも運営している。こちらはショート・ショートの小説とイラスト待ち受けを配信するサイトだが、ここでも小説の投稿を受け付けている。
「原稿用紙に向かうより、携帯で小説を書くほうが簡単なようだ。びっくりするような長文を送ってくる」(笑)
全体的には、純愛系のストーリーが人気。「やはり恋に恋する年代。“セカチュー”(世界の中心で、愛を叫ぶ)のように、登場人物が死んでしまう話が人気がある」という。
もう1つ、ボルテージが注力しているのがメッセージ付き待受サイト「恋ノウタ」だ。こちらは画像に一言メッセージや、恋の格言などを添えて待受画面として配信するサイトだ。3キャリア対応で、延べ会員数は17万3500人。
興味深いのが、サイトタイトルにもなっている「恋ノウタ」。これは、万葉集に収められている和歌を、その現代語訳と一緒に提供するというもの。角川文庫で同じコンセプトの文庫本「Remix万葉集 恋ノウタ」が発売されており、その携帯版との位置付けになる。
たとえば、「恋ひ恋ひて 逢える時だに 愛しき 言尽くしてよ 長くと思はば」は、以下のようになる。
「恋しくて恋しくて やっと逢えたそのときは くりかえしくりかえし 愛してると言って ずっと私といたいなら くりかえしくりかえし 君だけと言って」
「高校生が、万葉集(の待受画面)なんかを欲しがるかな? と思ったが、想像以上に人気がある。素直な気持ちが共感できるようだ」(コンテンツ制作・運営グループの渥美恭子氏)。和歌という古風な文化も、とっかかりがあれば“おしゃれ”と感じるようだという。
ユーザーが自分で和歌を詠み、それを投稿することも可能。「『帰るね』と 毎夜決まってわざと言う 『行くな』の一言 聞くためだけに」といった具合だ。こうした和歌も、それぞれ画像を付けて配信される。
「自分の感情に合った画像を、付き合っている人に送ったりしているようだ。携帯で気持ちを伝えるために、絵文字やギャル文字などが生まれたが、その延長に(和歌の待受画面などが)あるのでは」
中村氏は、ボルテージが運営するサイトのユーザー全体に言えるのは、一昔前の「文学少女」といったウェットな雰囲気が少ないことだという。
「小説を投稿してくるユーザーなどは、多少文科系のにおいもするが、湿ったところがない。むしろ、キャピキャピしたところがある」とした。
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