「HSDPA」技術と最新ロードマップ(2/2 ページ)

» 2005年03月24日 03時37分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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 では、HSDPAはどうして高速なのか。基本的な仕組みはCDMA2000 1x EV-DOに似ている。ただし、EV-DOが専用の周波数幅(1.25MHz)を必要とするのに対し、HSDPAは、W-CDMAが現在利用している5MHz幅のキャリア(搬送波)を共用できるのが大きく違う。ちょうどEV-DVに近い。

 それでは5つのポイントで見ていこう。

基地局のフルパワーを余すことなく利用

 CDMA方式では、基地局からの送信電力のすべてが有効に使われているわけではない。端末の受信受信電力が一定になるように、端末との距離に応じて基地局からの送信電力を制御している。

 しかしこのため基地局は送信電力に余裕をもつ必要があり、端末の配置によって利用する電力が変動するという問題があった。HSDPAでは、この余裕分を利用できる。

 「残りのパワー(送信電力)をHSDPAが使うことで、基地局のフルパワーが使える」(藤岡氏)

「Dedicated Channel」とある青い部分が従来のW-CDMA。「HS-DSCH」(High-Speed Downlink Shared Channel)とあるのがHSDPA。基地局の送信電力のすべてを利用できる

 これはW-CDMAが使っている周波数5MHz幅のキャリア(搬送波)の中に、W-CDMAとHSDPAが混在できることも指す。別のキャリアが必要なEV-DOとは違い、HSDPAは1つのキャリアを柔軟に利用できるわけだ。

 これはちょうどCDMA2000 1xのEV-DVと同様の技術となる(2001年7月30日の記事参照)。ただし「EV-DVは、まだ商用化のめどは立っていない」(藤岡氏)。

“足し合わせ”を使ったエラー訂正

 HSDPAはソフトコンバイニング(足し合わせ)を使ったハイブリッドARQをエラー訂正に用いる。これは、通信データにエラーが起こったら、端末側でエラーデータを覚えておき、再送されてきたデータと組み合わせて正しいデータを生成するというものだ。

1ユーザーが複数の符号を利用可能

 W-CDMAでは、1つの符号を1人のユーザーに割り当てる。HSDPAでは「複数の符号を複数のユーザーに割り当てる。つまり特定の間、1ユーザーが複数のコード(符号)を利用できる。これによって高ビットレートを確保できる」(藤岡氏)。

日本エリクソンが示した「Shared Channel Transmission」の資料より

 最大で15個の符号が利用可能だが、「(端末が)すべてのコードを受けられるようにすると、回路的に大変」(藤岡氏)なため、当初の端末向けチップでは扱う符号数を限定するものが多い。HSDPAにはそれぞれ速度の異なる12個のカテゴリーがあるが、例えばカテゴリー7/8は10個の符号に対応するが、カテゴリー9/10は15個の符号に対応する(下表参照)。

16QAMを利用可能

 デジタル変調方式の種類として、HSDPAは16QAMを利用できる。現行のW-CDMAが使うQPSKに比べて、1シンボルあたり4ビットとなり、2倍の情報を送信できる。

 ただし16QAMはフェージング(受信者の移動などによって電波の強さが変化する現象)に弱いため、HSDPAでも電波条件が悪い場合はQPSKを利用する。

 どの変調を利用できるかも、カテゴリーによって異なる(下表参照)。

電送単位が2ミリ秒に

 通信を行うブロックの大きさ──Trasmission Time Interval(TTI)がHSDPAでは短くなっている。W-CDMAは10〜20ミリ秒だったのに対し、HSDPAは2ミリ秒だ。

 2ミリ秒ごとに端末が基地局に電波状況などを報告し、環境に適した方式で転送を行うため、全体として通信速度が高速になる。

 「2ミリ秒単位で伝送し、2ミリ秒ごとに各ユーザーが使うコードを割り振るなど柔軟なシステム」(藤岡氏)

 もっとも、端末側は処理頻度が高くなるため負担が大きい。そのため「2ミリ秒のTTIを連続で受けるのではなく、間欠で受ける場合もある」(藤岡氏)。下記表の「Inter-TTI」の数字が間欠受信のタイミング。1ならば1つおきに、3ならば3つおきに受信する。

 この2ミリ秒単位で、TTIを各ユーザーにうまく割り当てる「スケジューリング」も行われる。ユーザー1の電波状態がいいときにはユーザー1に、ユーザー2の電波状態が良いときにはユーザー2へと、柔軟に割り当てを変更する。

 「フェージングをうまく利用して、上手に時間を配分する。これによって基地局当たりで、うまくパフォーマンスが上がるようにする」(藤岡氏)

各ユーザーの電波状態は時間により変動する(フェージング)。2ミリ秒ごとに、最も電波状態がよいユーザーと優先的に通信を行うことで、全体のパフォーマンスを向上させる


Category Codes Inter-TTI TB size Total # of soft Bits Modulation Data rate
1 5 3 7300 19200 QPSK/16QAM 1.2 Mbps
2 5 3 7300 28800 QPSK/16QAM 1.2 Mbps
3 5 2 7300 28800 QPSK/16QAM 1.8 Mbps
4 5 2 7300 38400 QPSK/16QAM 1.8 Mbps
5 5 1 7300 57600 QPSK/16QAM 3.6 Mbps
6 5 1 7300 67200 QPSK/16QAM 3.6 Mbps
7 10 1 14600 115200 QPSK/16QAM 7.2 Mbps
8 10 1 14600 134400 QPSK/16QAM 7.2 Mbps
9 15 1 20432 172800 QPSK/16QAM 10.2 Mbps
10 15 1 28776 172800 QPSK/16QAM 14.4 Mbps
11 5 2 3650 14400 QPSK only 0.9 Mbps
12 5 1 3650 28800 QPSK only 1.8 Mbps
Qualcomm資料よりITmedia作成

HSUPAとは?

 HSDPAは、基本的に下り方向のみの高速化通信方式だが、俗にHSUPA(High-Speed Uplink Packet Access)と呼ばれる上り方向の高速化にも着手されている。

 TTIを2ミリ秒とするオプションが導入され、スケジューリングやハイブリッドARQも導入し、上り最大5Mbpsを実現する。

 3GPPのRelease.6で導入予定で、Ericssonでは現在試験中。2006年には商用化の見通しとなっている。

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