ソフトバンクのボーダフォン買収交渉が、注目を集めている。成立すれば通信業界にどんな影響があるのか、多くの人間にとって気になるところだ。
買収が成立して記者発表会が開かれれば詳細が分かるとはいえ、交渉が成立するとしても4月初旬前後になるとも言われており(3月6日の記事参照)、関係者から正式なコメントを聞くまでしばらく待つ必要がある。本稿では、ソフトバンクのボーダフォン買収会見が「明日行われたら」と仮定して聞きたいことをまとめた。
買収によって取りざたされているのが、1.7GHz帯の扱いだ。ボーダフォンの持つ“既得権益”としての通信帯域と、ソフトバンクが新規事業者として新たに獲得した1.7GHz帯とで電波の「二重取り」が起きるという議論だ。既にイー・アクセスが「買収した場合は、新規事業者でないのだから1.7GHz帯は返上すべきでないか」という議論を展開している(3月6日の記事参照)。
ソフトバンクの立場で見ると、実際問題としてボーダフォンのネットワークがあれば、1.7GHz帯が不要になる可能性はある。1.7GHz帯をあえて活用するならば、基地局などネットワークインフラの面でもクライアント端末の無線モジュールの面でもコスト高になることは避けられない。このため1.7GHz帯を利用しない選択肢も考えられる。
ただ一方で、ボーダフォンは1.7GHz帯の割り当てにあたって「もらえるなら欲しい」という姿勢を打ち出していた(2005年1月25日の記事参照)。実際に1.7GHz帯をテストすべく実験局免許も取得しており(2005年7月4日の記事参照)、この帯域を無理なく取り込める可能性もある。ソフトバンクとしても、多少の風当たりはあってもせっかく割り当てられた帯域を守り通したいところ。買収後にどのような決断をするのか、これがまず注目されるポイントだ。
ソフトバンクがボーダフォンのネットワーク網を手にした場合、MVNOやローミングをどう考えるかという問題もある。現時点ではイー・アクセスが、ボーダフォンにローミングでの提携を検討している。実現すればサービス開始当初から全国にサービス展開できるからで、イー・アクセスの千本倖生会長はこれまでも水面下で繰り返し交渉してきたことを明かしている(6月22日の記事参照)。ボーダフォンもMVNOに積極的な姿勢を見せ、いよいよ……というところで話し合いが白紙にもどる可能性もあるのだから、イー・アクセス側は気が気でないだろう。これにソフトバンクがどう応じるのかも気になる。
ソフトバンクはこれまで、既存キャリアに「帯域を開放せよ」と要求する側だった。買収が成立すれば1.7GHz帯の問題でもMVNOの問題でも、要求を受ける側へと立場が入れ替わることになる。
買収が成立したとして、通信業界にどの程度の影響を与えるのか。ユーザーの興味はここにある。
ソフトバンクは既存キャリアにとって「何をしてくるか分からない」という怖さがある。とはいえNTTドコモのある幹部は、2005年に開催された講演の中でソフトバンクの参入にそれほどの危機感は抱いていないと話していた。「それよりもボーダフォンのほうが怖い。今でこそauが好調だが、過去を振り返ればボーダフォンが好調でauが不振の時期もあった。『復活したボーダフォン』のほうが脅威だ」との趣旨だ。
だが、そのボーダフォンをソフトバンクが買収したとなると状況は変わってくる。
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