イー・アクセス、3500億円の資金調達完了――2200億円を借り入れ

» 2006年04月05日 20時05分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 イー・アクセスは4月5日、移動体事業を行う子会社イー・モバイルの資金調達が完了したと発表した。株式を発行するエクイティ・ファイナンスで1300億円を調達し、借り入れ(デット・ファイナンス)で2200億円を調達する。

Photo 借入枠の引受幹事銀行団代表である、みずほ銀行の杉山清次頭取と握手するイー・アクセスの千本倖生会長

 この日発表されたのは、280億円の増資と2200億円の借り入れ。イー・モバイルはこれまでも、TBS(2005年8月31日の記事参照)や吉本興業(2005年11月10日の記事参照)などから出資を受けることを発表していた。今回追加で、三井物産や米Goldman Sachsグループなどに280億円の増資を割り当てる。さらに6月までに140億円の追加増資も行う予定で、「1300億円の資本金、資本準備金を事実上確保した」(イー・アクセス)という。

 「エクイティ・ファイナンスは当初1000億円の予定だったが、5倍以上の申し出があった。結局は1300億円という、予定の30%増にあたる資金を調達した」(エリック・ガンCFO)

増資割当先 出資額
イー・アクセス 60億円
三井物産 50億円
米Goldman Sachsグループ 49.3億円
そのほか(ヨドバシカメラ、コジマ、ビックカメラ、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ、ジャフコ、ビジョン・キャピタルなど) 121.5億円

 4月25日を払込期日とする増資後の、イー・モバイルの主な株主は以下の通り。

主な株主 株式持分比率
イー・アクセス 51.4%
米Goldman Sachsグループ 24.9%
TBS 7.8%
三井物産 3.5%
そのほか 12.4%

 併せて、総額2200億円、借入期間最長7年の借入枠(コミットメントライン:審査なしで融資を受けられる融資枠)を設定することで引受幹事銀行団と合意したことも発表した。引受幹事銀行は、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、ゴールドマン・サックス証券など10行。

 「事業を開始する前の段階で、まだキャッシュフローのない企業にこれだけのファイナンスが設定されるのは異例。世界最大級のプロジェクト・ファイナンスだ」(千本倖生会長)

 移動体業界で資金調達といえば、最近ではソフトバンクも巨額のノンリコースローンを発表して話題を呼んだ(3月17日の記事参照)。しかしイー・アクセス側は、同社の借り入れはソフトバンクと異なり1年のブリッジローン(短期的な融資)ではないと強調する。

 「最大7年の、長期の借り入れのアレンジが完了している。これは重要なポイントだ」(千本氏)

「あとは、ネットワークを作るだけ」

 記者会見の後、会場を変えて行われた懇親会の席上で、乾杯の音頭をとった種野晴夫社長は、満足げな表情を浮かべた。

 「イー・アクセスは、携帯事業を始めるにあたり3つの不可能なことがあると言われていた。免許がもらえないということ、資金が集まらないということ、そしてネットワークを構築できないということだ」

 しかしいまや、総務省から新規参入事業者として移動体免許を受け、今また3500億円の資金調達に成功した。種野氏はCFOであるエリック・ガン氏が頑張ったおかげだとしつつ、あとは自分の率いる実行部隊がネットワークを作るだけだと話す。この意味では、エリック氏から自分にプレッシャーが移ってくるとコメント。

 これを聞いていた千本会長は、「(事業開始まで)あと10カ月しかないからね!」とスピーチに横やりを入れる。種野氏はこのセリフに続けて「毎日のようにプレッシャーと戦って……」と苦しげな声。これには会場に集まった報道陣からも、大きな笑い声が上がった。

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