“ケータイというよりオーディオプレーヤー”──。そんなボディデザインで登場したのが富士通の「F902iS」(記事一覧参照)だ。セキュリティ面にいち早く着目し、指紋認証機能(2003年7月の記事参照)を搭載してきた富士通が新たに盛り込んだのは、Windows Media Audio(WMA)対応の音楽プレーヤー。日本初のWMA対応FOMAを生み出した富士通開発陣の意気込みを聞いた。
2005年ごろから、携帯各キャリアは“音楽+携帯”というアプローチを強化し始め、端末メーカーも「いかに音楽機能を使いやすくするか」でしのぎを削っている(記事1、記事2、記事3参照)。携帯の音楽プレーヤー化は、そのデザインにも大きく影響するようになり、F902iSも「オーディオプレーヤー」を強く意識したデザインに仕上げられている。
それを象徴するのが、背面に装備した「ラウンドイルミネーションパネル」と呼ぶ音楽専用の操作機構。ひと目見れば“音楽再生用”だと分かるデザインであるとともに、機能面でも音楽プレーヤーと同等の使い勝手を実現するものだ。端末を閉じた状態で音楽プレーヤーのように利用でき、各種操作を行うたびに、さまざまなイルミネーションの演出を楽しめる。“音楽”という機能とデザインを融合させたのが“F902iS”だと、富士通モバイルフォン事業本部マーケティング統括部の藤野克尚氏は説明する。
「デザインそのものがコンセプトで、『オーディオプレーヤー感』を一番大事にしました。もともと富士通携帯に共通するデザインコンセプトは『上質』『洗練』『知性』の3つ。“上質感を持った携帯電話”という従来のコンセプトにオーディオプレーヤー感を加えたのが今回のF902iSになります」(藤野氏)。
F902iSを手がけたプロダクトデザイナーが、ラウンドイルミネーションパネルをデザインするにあたって重要視したのは、「パッと見てF902iSがオーディオプレーヤーとして機能することを、誰にでも分かってもらえること」だったという。
「みんなの頭の中に漠然とある“音楽機能”のイメージを形にしたデザインなんです。ある人が見たらiPod(2005年11月の記事参照)みたいと思うかもしれないし、ある人が見たら東芝のgigabeat(2006年4月の記事参照)みたいと思うかもしれない。音楽機能に対するイメージは人によって異なりますが、そこを多くの人が『確かにオーディオプレーヤーに見えるね』と思うような、最も普遍的なところをデザイン化したわけです」(藤野氏)。
操作パネルを円形にしたのは、“直感的に操作が分かるように”というユーザビリティを意識したからだと藤野氏。「操作ボタンを横に並べるのと、周りに円を描くように並べるのと、ダイヤルキーのように格子状に並べるのと、どれが直感的に人がわかるだろう──と、いろいろ検討した結果、最も使いやすいのが円形だった。
円の中にレイアウトされた音楽プレーヤー用の操作ボタンは、誤操作の可能性をなくすために、その位置や大きさに至るまで十分検討を重ねた。F902iSの開発コンセプトの1つに“片手で操作できる”というものがあり、そのためには円を大きくするにこしたことはない。しかし大きすぎると端末の下の方まで円が広がってしまい、今度は下の方を操作したときに端末を落としそうになってしまう。この微妙なバランスを調整した結果が、製品に反映されている。
ラウンドイルミネーションパッドのもう1つの特徴が、PCのトラックパッドなどに使われる「静電パッド」を採用した点だ。表面は1枚のアクリル板で完全にフラッシュサーフェス化(平面化)され、それぞれのボタン操作は指でタップして操作する。
静電パッドを選んだ理由の1つは、本体の薄さへのこだわりだ。感圧式のボタンを付けると、本体の厚みが増すことになり、902iSシリーズ最薄の19.7ミリを実現できなかっただろうと藤野氏。またボタンを付けることで表面がデコボコになると、“クールなオーディオプレーヤー感”を損なうという、デザイン面での配慮もあったようだ。
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