7月12日、NTTドコモは「FOMAネットワークの現状と今後の展開」と題した記者向けの説明会を行った。説明に当たったのは、NTTドコモ副社長ネットワーク本部長の石川國雄氏。
2006年6月で、FOMA契約数はムーバの契約を超えた(6月19日の記事参照)。「2007年3月末で、全契約数の3分の2をFOMAに移行したいと考えている。今年(2006年)はマイグレーションのピーク」(石川氏)
3Gへの移行を順調に進めるドコモにとって、FOMAエリアの拡大は大きなテーマである。「ムーバは『どこでもつながる』という評価をいただけているのに対して、FOMAは『つながらない』とお叱りを受けることが多かった。13年という年月をかけて構築したムーバ(のネットワーク)を、いかにFOMAに移行するか。秋に控えているMNPに向けて、9月末までにエリアの広さと深さでムーバ相当以上を達成する」(石川氏)
FOMAエリアの構築方針として、石川氏は「お客様の要望に沿ったネットワーク品質強化」「MNPまでにエリアの“広さ”“深さ”でムーバ相当以上を達成する」「重要施設、屋内の品質強化に取り組む」の3つを挙げた。
これまでは、基地局のカバーエリアには入っていても、スポットで圏外になってしまうといったケースがよくあった。しかしユーザーからFOMAのエリア状況についてアンケートを集める「聞かせてFOMA」は、こういったエリアの発見・改善に役立っている。通常、聞かせてFOMAには月間3000件程度の書き込みがあるが、6月27日〜30日に新聞に広告を掲載したところ、約1週間で7000件の声が集まったという。
ムーバを上回るエリアカバーを実現するには、「広さ」と「深さ」両方の対応が必要になる。まず「広さ」対策としては、基地局の大幅な増設を行う。今年度中に屋外用基地局を1万800、屋内用施設を3000増設。今までの1.5倍に基地局・施設数を増強する。ムーバの基地局が1万7000局なのに対し、FOMAは2006年度末までに3万4800局になる予定だ。
また、特定施設のカバー率を上げるように努めていく。特定施設として挙がっていたのは、JRの駅(無人駅含む)、高速道路のSA/PAや道の駅、大学、短大、高校、高専といった施設だ。今年の秋までにこれらの施設は100%FOMAのエリアになる。
「深さ」対策としては、屋外、屋内それぞれに対策が必要だ。まず屋外は、適切な場所に適切な装置を設置することが品質向上につながる。たとえば、大容量の基地局から最大約20キロメートル延長できる光張出し局を設置。基地局を集約してコストダウンを図りながら、圏外となっていたエリアをカバーしていく。
光張出し局は小さな設備なので、住宅地の電柱などに設置することも可能だ。PHS用基地局を設置していたところに、FOMA用の光張出し局を共用で設置する例もあるという。
屋内対策としては、屋内専用基地局を積極展開したり基地局の受信感度を上げたりすることによって、屋内でのエリアを整えていく。新宿都庁、六本木ヒルズレジデンス、品川のワールドシティタワーズといった高層ビルでは、周辺の建物にアンテナを設置し、目的の場所に対して電波を吹き上げることによって屋内をエリア化する例などを紹介した。
こうした取り組みによって、「ムーバよりもFOMAのほうがつながる」エリアも出てきている。例えば小笠原諸島では、ムーバは音声通話のみの対応で、パケット通信は圏外となっていたが、FOMAではiモードやメール、テレビ電話も利用できるようになった。
FOMAは2GHz帯を利用しているが、山間部などのエリア化するため、800MHz帯を使ってエリアを拡大している。「FOMAプラスエリア」と呼ばれるもので、端末としては901iSシリーズから対応している(2005年6月24日の記事参照)。これに加えて、東名阪では1.7GHz帯を使い、都市部のエリア増強に利用している。「東名阪エリアについては1.7GHz帯の利用を進めている。800MHz、2GHzと共用の基地局を設置している。端末としては、902iSシリーズからの対応になる」(石川氏)
また輻輳(ふくそう)対策についても触れた。
災害の場合や新年、また大規模イベントがあるときには、ネットワークが混雑して電話がつながりにくくなる。キャリアは輻輳を防ぐために通話規制を行うが、現在FOMAは、音声通話とパケット通信を分けて規制を行うことができない(ムーバは可能、2004年4月8日の記事参照)。これについて石川氏は「9月末までに、FOMAでもムーバと同じように、(音声とパケットを)別々に規制できるようにする」と答えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.