「FOMA 702iシリーズ」の発表会に、鳴り物入りで登場したのがMotorolaの「M702iS」と「M702iG」。海外市場で高い人気を誇り、“スリムケータイ”の代名詞ともいえるRAZRをベースに開発されたこの3G端末は、ITmedia読者の調査でも「欲しい端末」のトップを獲得している(8月23日の記事参照)。
Motorolaは今後、日本市場にどのような形でアプローチしようとしているのか。北アジア地域を担当するバイスプレジデントのマイケル・テーテルマン氏に聞いた。
ITmedia:日本市場向け端末は、さまざまなキャリア仕様のサービスを入れ込む必要があり、開発には多大なコストや労力がかかります。にもかかわらず、完成した端末は基本的には日本のみでしか販売できず、市場規模も小さい。端末を開発する上で、グローバルメーカーが強みとする“規模の経済”の効果を発揮しにくい市場とも言えるわけですが、こうした市場への投資をどのような形で回収できるのでしょうか。
テーテルマン氏:日本は携帯ブロードバンド市場としては世界最大の市場であり、モバイルサービスという観点から見ても日本のユーザーは世界でも最も洗練されています。加えてデザインにも敏感であることから、グローバルのブランドが日本に多く入ってきていますし、日本のデザインが海外に向けて輸出されている例もたくさんあります。
このような洗練された日本の消費者とMotorolaブランドを結びつけていこうというのは、マーケティングの観点から当然の流れであり、こうした理由から私たちは、日本市場を戦略市場と位置付けています。
モバイルの通信技術という意味においてMotorolaは、まさに最高の技術を持った会社の1つだと自負しています(2月1日の記事参照)。技術的な観点からも日本市場に参入するのは当然のことなのです。
それではどうやって端末投入のコストを回収するのか。モトローラはこの3年間でグローバルで大きな成長を遂げています。その要因は2つあって、1つはデザインやハードウェアの開発でグローバルのプラットフォームを採用したことです。もう1つは、各地域、各市場のオペレーター(通信キャリア)と密に協力しながら、オペレーターの提供するブランドサービスを端末に盛り込んだことです。
つまりハードウェア面では、まさに規模の経済を活用できることになります。例えばドコモの「M702iS」「M702iG」では、UMTS(W-CDMA)のプラットフォームにドコモのFOMA 702iシリーズの固有の機能を盛り込むという取り組みを行ったわけです。
この両者の絆を作り上げることで、オペレーターも私たちも大きな成功を収められる。グローバル市場では、魅力的な端末でオペレーターブランドのサービスの価値を増幅させるという取り組みが成功を収めましたが、日本市場では、まだMotorolaのブランド力を訴求しきれていません。これについては、今後の取り組みが必要になります。
ITmedia:日本市場で売れる端末を開発するには、FeliCaやワンセグなどの機能を搭載することが重要になります。こうした機能を搭載する予定はありますか?
テーテルマン氏:対応していく予定ではありますが、問題は端末と機能をどのように組み合わせれば、Motorola端末の魅力を損なわずに売れる端末になるかという点です。
考えなければならないのは、私たちがどんなセグメントに的を絞っていくのか、的を絞ったセグメントに対してどういう機能を組み合わせるのが適切なのかという点です。
RAZRは、ファッションというセグメントに入るもので、それを象徴するデザインに仕上がっていますが、一方でこれはドコモの「702iシリーズ」という位置付けの製品でもあります。私たちはデザイン面と機能面をどうバランスさせればMotorola端末を欲しいと思うユーザーのニーズを満たす端末になるのかを把握するため、調査を実施しました。そこで出てきた結論は、「すべての機能が必要というわけではない」というものでした。
ただそうはいっても、この市場にとって重要な機能もあります。例えばFeliCaは、かなり将来的なビジネスチャンスがあり、必要になってくると思います。
ITmedia:どのような形で日本市場にブランド力を訴求するのでしょうか。
テーテルマン氏:まだ発売日が決まっていないのでお話しできないのですが、投入される段階になれば目に留まるようなものが出てくるはずです。
1つ言えるのは、日本のユーザーがMotorolaやMotorolaブランドに興味を持って調べたときに、グローバルで多くの情報を得られるということです。RAZRは世界中で5000万台売れていて、どの市場でも好評を博しています。日本市場でも同じようにインパクトを与えられたらと思っています。
ITmedia:ドコモ、英Vodafone、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、韓Samsung Electronicsと、Linuxベースの共通プラットフォームを開発することで合意していますが(6月15日の記事参照)、その狙いは?
テーテルマン氏:モバイルインターネット環境は今後、とても複雑になることが予想され、そのために私たちは、機動性の面でも固定向けのアプリ開発の面でも、大きな開発コミュニティがあるLinuxを活用するべきだと考えました。
コミュニティが持つ力をつなぎ合わせて、モバイルインターネット向けの次世代アプリケーションを開発できるようにしていこうというのが私たちの戦略ですが、これは一社でできることではありません。そのためには各パートナー間でコンソーシアムを形成する必要があると考えたのです。各社が個別に開発するのに比べて作業の重複を避けられますし、作業の進捗状況についてもコンソーシアムから定期的に発表があるので作業は進めやすいと思います。このコンソーシアムは、私たちが設立メンバーであり、業務のほとんどを主導する立場にあります。
第1の成果は、各社が集まってグループを形成できたことです。すでにMotorolaのエンジニアがプラットフォームについてかなり多くの作業を始めていますし、他社も同様の取り組みを行っています。すでに初期バージョンはできていて、Motorolaの「ROKR」にも使われています。
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