道具に “ココロ”があるような愛嬌を──カシオ携帯の“ペンギン”“顔”が生まれるまで(2/2 ページ)

» 2006年11月30日 00時10分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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アイデアの元は、ふだんの生活の中にある

 カシオ端末のプリセットコンテンツが多くの人に受け入れられる理由の1つが、顔やペンギンが繰り広げるシーンのユニークさだ。表現自体はサラリとしていて押しつけがましいところがなく、それでいてときにフッと笑いを誘うようなシーンが展開し、そんなFlashの待受画面が、多くのユーザーを魅了した。

 携帯に対するニーズが多様化し、多くのユーザーに支持されるコンテンツ作りが難しくなる中、2つも人気コンテンツを生み出した発想の原点はどこにあるのだろう。

 城氏はそれが、ふだんの生活の中にあると話す。「コンテンツのアイデアの元になるのは、生活の中にある、ちょっとした機知だったり、アイデアだったり──。街を歩いていると、遊び心のあるシーンや情景があふれている。過度に流行や斬新さを意識した“デザインコンシャス”なものよりむしろ、有名・無名を問わず作り手のマイペースな愛情がひしひしと伝わってくる表現や、何年も淡々とそこに在る、といった風貌のさり気ないグッドデザインに普遍的なヒントを感じることが多いです」(城氏)

 アイデア探しの旅は海外にも及び、まとまった休暇の度に街を朝から夜まで歩き回っていると城氏。そのときに感動を受けた異国の景色や文化がインスピレーションの元になることも多く、その一端は自著の「Heart Craft」(10月6日の記事参照)でも紹介されている。

書籍「Heart Craft」は、“ユーザーへの感謝の手紙”

 この秋、顔とペンギンは紙の世界にも活動の場を広げた。プリセットコンテンツの世界を通じて、カシオが掲げる“ものづくり思想”を紹介する書籍「Heart Craft」に登場しているのだ。書籍の中には、城氏がどんなことを考えながらキャラクターを作り、アイデアを生み出し、またそれを通して携帯作りをどのように捉えているのかが記されており、「ドキュメンタリーかつバックグラウンドストーリー的な内容になっている」(城氏)という。

 この書籍は、カシオ端末を気に入って使ってくれているユーザーの方々への感謝の手紙だと城氏。「ユーザーの方々の声に、励まされたり、時にへこんだりしながらデザインしています。この本は、カシオからの感謝の気持ちを伝える機会にもなれたらと思いました。そこで、“画面デザインのイラストに後付けや架空の物語を付けた即興絵本に仕上げしまうのでは、そこに何の“ホント”もない形式的なものになってしまう気がして、『こんなこと考えながら作っています、こんなふうに楽しんで頂けたら嬉しいです』と、朴訥ですが愚直なまでに、まんまお話しさせていただいた内容になっています。A5512A、W41CA、W43CA、どの端末をお使いの方にも『あ、コレ、自分のケータイのだ!』とお分かり頂けると思います」(城氏)

Photo 書籍「Heart Craft」は、構成から執筆、レイアウトまですべてを城氏が手がけた。「“ユーザーの方々への手紙”を販売する、というのは心苦しくもあるのですが……。そのかわり構成や加工には、出来る限りの工夫を盛り込みました。見て、触って、楽しめる本にしたかったので」(城氏)

 また、カシオのものづくり思想を伝えたいユーザーへのプロポーズでもあると話す。「等身大の心地よさを探して、ささやかな工夫やユーモアを取り入れて日常を楽しんでいる人たちや、ちょっとしたものの見方の工夫でふつうの毎日に小さな発見を連発できる人たちに、『私たちのモノ作りも、限りなくおんなじところを目指してるんです』と話しかけさせていただける場は滅多にない。とても貴重な機会でした」(同)

新キャラクターのアイデアも

 ユーザーとしては、いつまでもシリーズとして登場し続けてほしいと思うペンギンや顔だが、「作り手自身がキャラクターに依存して惰性的に扱うようになってしまっては、キャラクターに対しても見て下さる方々に対しても誠実と言えません」と城氏。「その時は、次の新しい何かを見つけるタイミングなのかなと思います。ペンギンは愛称(カシペン)まで付けて頂けた幸せもので、『すくすく育っておくれ』と思うのと同時に、実は1つ新しいアイデアも模索中です」(城氏)


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