世界標準ケータイを「なんちゃって・おサイフケータイ」にする助っ人が現れた!?プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/3 ページ)

» 2007年03月14日 09時57分 公開
[竹村譲,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

 後からアルプス電気の人に聞いて分かったことだが、Suica(Felica技術を利用したJR東日本のIC乗車券)などの非接触ICカードの類は、改札機の中に仕組まれたリーダー(アンテナ)が発する「磁束」がSuicaカード内のアンテナと通信することによってカード内部の情報を読み取って認識、判断する。これによって、この利用者を改札を通過させて良いかどうかの判断するのだ。

photophoto リカロイ磁性シートで作られた「フラックス・パス」をNokiaケータイとSuicaの間に挟むと今までのトラブルがなくなる(左)、Nokiaケータイの専用ケースにSuica、フラックス・パスの順に重ねて置く(右)

 筆者はNokia E61の下側にSuicaカードを敷き、両者を革ケースに入れてJR改札を通過しようとした。改札機から出る「磁束」はかろうじて革の厚みを通過したが、Suicaカードの裏側(上側)にあるNokia ケータイの金属部分による「反作用磁束」によって、磁束が跳ね返されてSuicaカード内のアンテナに達することができず、読み取り不能のエラーとなり、改札機のアラームを鳴らす結果となった。

 薄い、クレジットカードサイズの「リカロイ磁性シ−ト」を、NokiaケータイとSuicaカードの間に挟むことによって、Suicaの周囲や付近に存在する他の金属部品などから発せられる電波や電磁波などによる反作用磁束が防止される。つまり、改札機内のリーダーから発せられる磁束はあたかも、Nokiaケータイが存在しないかのようにSuicaカード内のアンテナに到達し、無事、内部のデータを読み取ることが可能となるのだ。

photophoto 今までは不要電波の元だったNokiaケータイをケースに収める(左)、ほとんど厚みを感じないSuicaとフラックス・パスを下敷きに使ったNokia版「なんちゃっておサイフケータイ」は、JR東日本の改札や自販機、書店のレジもすべて無事にクリアした(右)

 筆者が目指したシンプルな「なんちゃっておサイフケータイ」はもちろん、同じような読み取りトラブルは、非接触ICカードを採用した社員証とSuicaを同じネックストラップホルダーに納めている場合や、Suicaカードと別の非接触ICカードを同じ定期入れに収納した場合にも多発している。

 筆者の友人も、Suicaと社員証を同じホルダーに入れていてトラブルが起こり、現在は別々のケースに入れた2つのネームホルダーをストラップ上で一個にまとめた解決策を取っているという。

photo 社員証とSuicaの同居が出来なかった友人の問題も一挙に解決した

 アルプス電気の開発したリカロイ磁性シ−トを使用すると、魔法のように、これらの問題は一挙に解決した。既にこのシートを採用した「非接触ICカード用誤動作防止カード」は商品化されており、「フラックス・パス」と呼ばれている。

 クレジットカードサイズの「フラックス・パス」を2枚の非接触ICカードの間に挟むことで、2枚のICカードの相互干渉を防ぎ、改札機のリーダー部分にかざした側の非接触ICカードを確実に読み取らせることが可能となる。2枚の非接触ICカードの片側がNokia ケータイになったと考えれば筆者の問題も同様に解決した理由は明快だ。

 前々回のコラムでは失敗に終わった「なんちゃっておサイフカード」だが、アルプス電気のリカロイ磁性シ−トを併用したことで、世界で最もユーザの多い、最も認められているグローバルケータイであるNokiaケータイで実現した(ただし「なんちゃってモード」だが)。

photo フラックス・パスの材料となっているアルプス電気のリカロイ磁性シート。0.05ミリながらの厚さながらも効果は絶大だ。非接触ICカード関連やRFID周辺には多く使われているベスト・プロダクトだ

 おサイフケータイ機能は、相変わらず世界標準とは外れた日本独自のケータイの活用方法の有力なひとつの作戦ではあるが、世界的に見れば、明確な未来は見通せていない。今後、日本のFelica技術が世界に浸透すれば、自力では海外戦略で見事に敗退した某国内キャリアにも、再び、風が吹けば桶屋が儲かる型のビジネスチャンスは巡ってくるかもしれない。筆者はそれまで、何の不自由もない「なんちゃっておサイフケータイ」を愛用しようと思っている。

開発素材:アルプス電気「リカロイ磁性シ−ト」

商品:フロムウエスト「フラックス・パス」

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年