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» 2007年07月06日 20時33分 公開

韓国携帯事情:携帯電話と固定電話、WiBroをセット販売――韓国で「結合販売」がスタート

「携帯電話とブロードバンド」「携帯電話と固定電話」など、異なる通信サービスのセット販売が韓国でスタートした。これまで禁止されていた販売方法が許可されたことで、韓国の通信市場にどんな変化が訪れるのだろうか。

[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国ではこれまで、市場占有率が高い通信事業者が異なる通信サービスをセットで販売することができなかった。しかし韓国情報通信部は、この規制を7月から緩和し、通信サービスをセット販売する「結合販売」を許可すると発表した。結合販売の開始でどんなことが起こるのだろうか。

結合販売の条件

 結合販売は複数の通信サービスをまとめ、比較的安い価格で提供する販売方式だ。これまで、韓KTや韓SK Telecom(SKT)のような占有率の高い事業者は、通信市場の活性化を妨げるとして情報通信部により結合販売を禁止されていた。

 しかし、7月から規制が緩和され、携帯電話やブロードバンド、固定電話を組み合わせた割引販売ができるようになった。たとえば固定電話とWiBro、携帯電話とブロードバンドがセット売りされることで、消費者は従来よりもサービスを安く利用でき、事業者は顧客の囲い込みと市場拡大が可能になる。

 ただし何でもかんでもセット売りできるわけではない。事業者が結合販売を行うには、まず情報通信部に認可申請をしなければならない。申請内容には、利用約款と結合販売提供企画書、料金設計書、利用者保護計画書などが含まれる。情報通信部が提出された販売計画を審査し合格を出さなければ、結合販売は行えないのだ。

 審査では、結合販売そのものを目的として複数サービスを利用または加入させる行為(抱き合わせ)や、不当にサービス提供対価を差別する行為などが厳しくチェックされる。つまり利用者の権利や利益を守りつつ、セット販売を行っていかなければならないというわけだ。

 ただし「市場に及ぼす影響が微々たる水準の」(情報通信部)、具体的には割引率が10%以下のサービスに関しては審査を簡素化して進める。

MSOと提携するSKT

 SKTは韓国の携帯事業者としてトップの存在だが、自前の固定電話網を持っていないため、結合販売を行には他社と提携するしか方法はない。

 同社は6月末にTbroad、C&M、CJケーブルネットといった「MSO(Multiple Systems Operator)」と提携。ブロードバンド回線と携帯電話回線を組み合わせたセットを、7月中に販売する予定だ。

 MSOのブロードバンド回線に加入し、さらに3人以上のグループで加入すると携帯の通話料が安くなるSKTの「トゥギャザー料金制」を申し込むと、月額基本料を3000ウォン(約400円)割引するほか、さらに通話料も5〜20%安くなる。

 さらにHSDPAサービスの「T LOGIN」と、MSOのブロードバンド回線との結合販売も行う。T LOGINの加入料金が10%割引となるほか、ブロードバンドも割引料金で利用できる。SKTはこのほかにも、子会社のTU Mediaが提供している衛星DMBサービスとの結合販売も企画しているという。

 SKTは「まずはMSOを中心に提携を進め、その後対象事業者を拡大する予定だ。顧客の需要度を見て、デジタルCATVなどの放送やVoIPなどを含む多様な商品を継続して発売する方針だ」と述べている。

自社インフラをフル活用するKT陣営

 他社との提携が必要なSKTとは逆に、KTFは強力な自社ネットワークを持つ親会社KTとの提携が活発になりそうだ。6月末にはKTが同社のブロードバンドサービス「Megapass」とKTFのHSDPAサービス「SHOW」、MegapassとWiBro、Megapassと保険(インターネット上で契約できる各種保険)といった3つの結合販売商品を提供すると発表した。

 これらに加入すると、Megapssで5〜15%、SHOWは約10%、WiBroで約10〜20%程度の基本料割引が受けられる。また長期割引商品として、3年以上Megapassを使用している加入者が、さらに2年間のMegapass継続利用を契約すれば、基本料の10%程度を割り引くサービスも用意する。

 KTは今後、放送などのサービスも加えることで3〜4つのサービスをセットにした結合販売商品も積極的に発表していくと意気込んでいる。

LG TelecomはVoIPと提携か

photo LG DACOMが発表した「myLG 070」。加入すると、「070」で始まるVoIP専用の電話番号が付与される

 韓LG Telecom(以下、LGT)を持つLGグループには、LG DACOM、LG Poewercomといった通信会社がある。最近では、LG DACOMが家庭用のVoIPサービス「myLG 070」を開始した。

 myLG 070の専用端末はWiFiに対応しており、単なる音声通話だけでなくインターネット接続やSMSの送受信なども可能だ。加入者間の通話は全て無料で、市内外・国際電話料金も大幅に安くなっている。

 LG DACOMは、myLG 070の開始が結合販売を見越したものであるか明らかにしていない。しかし、KTにも対抗しうる強力なサービスであることは確かで、LGTなどグループ内の通信事業と組み合わせる可能性は十分にある。

 グループ内の協力体制についてはまだ協議中ではあるが、LG DACOM単体では9月頃からブロードバンド回線とVoIP、そしてインターネットTVをセットにした結合販売を行うと明言している。

比較的ゆっくりとしたスタート

 結合販売を許可すること自体は2006年から発表されていたが、実際には6月末の規制緩和目前になって、各通信会社から結合販売の計画が次々と発表された。

 そこからは、結合販売をしないわけではないが、かといって積極的に取り組むわけでもないという印象を受けた。採算性や事業性の面で迷う部分があり、他社の様子を見ながらゆっくり展開していきたいという意図があるのだろう。

 それにしてもSKTの場合は、割引してもらうためには3人以上で加入する必要があるなどハードルが高いわりに、割引幅がそれほど大きくはない。KTも、固定電話の料金は割引の対象から外れている。こうした点から、本当に結合販売に飛びつくユーザーが多くいるのか疑問だ。

 キャリアが自分たちの利益を守りつつ、消費者にも価値ある結合販売商品が出てくるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。今後さまざまな商品が登場し、活発な競争が行われることに期待したい。

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