「競争は始まったばかり」と“謙虚”な孫社長 ソフトバンク好調

» 2007年08月08日 21時22分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 好調な決算を発表したにも関わらず、慎重で謙虚な発言に終始した孫社長。「謙虚にしないと叩かれるから、少しずつ大人になろうとしている(笑)。実績が出てきて余裕が出たのかもしれない。他社もがんばっているので、油断はできない」

 ソフトバンクが8月8日に発表した2007年度第1四半期(4〜6月期)連結決算は、経常利益が512億円で、前年同期比96.8%増とほぼ倍増した。昨年5月から連結子会社化したソフトバンクモバイルの携帯電話事業が貢献した。

 決算会見で同社の孫正義社長は、ソフトバンクモバイルの契約者純増数や新機種数、新設した基地局数などについて「われわれはナンバーワン」と繰り返し、事業の成功を強調しながらも「競争はまだ始まったばかり。手応えは感じているが、他社もがんばっているからずっと1位でいられるとは限らない」と慎重な発言も目立った。

 売上高は前年同期比34.2%増の6631億円、営業利益は44.9%増の787億円、純利益は、有価証券売却益やグループ企業の上場益などで大きくふくらみ、18倍の251億円となった。

1年で2万基地局新設、「ギネス申請も」

 ソフトバンクモバイルの携帯電話事業の売上高は、68.5%増の3917億円、営業利益は59.5%増の435億円。同事業は昨年5月から連結化したため、今期の売り上げや利益は前期よりも1カ月分多い。「その1カ月分を差し引くと、営業利益は3割ほど増えている計算」

 携帯事業に関して孫社長は、「1位」「ナンバーワン」を繰り返す。純増数は、7月まで3カ月連続ナンバーワン(関連記事参照)、今年発表した機種数、端末の色数も3キャリア中ナンバーワン――「一生懸命頑張った」と孫社長は振り返る。


画像 「薄い・軽いではナンバーワン。auやドコモよりもスタイリッシュだ」と孫社長
画像 九州地区は純増シェア67%。“ソフトバンクホークス効果”のためという

 目標としていた4万6000基地局の設置も、8月1日までに完了した。当初は、6月までの達成を計画していたため2カ月ほどずれこんだことになるが、「土地の確保から工事のスケジューリングまで本当に苦労した」という。

 「KDDIが10年かけて作ってきた基地局数は約2万。当社はそれと同じ数を、1年で達成した。1年で2万基地局設置はギネス記録を申請できるのでは、と冗談半分、本気半分で話している」

 営業体制も強化し、7月末時点のソフトバンクショップ数は2310店と前年4月末比25%増。ショップ内の窓口の数は約9000と、同45%増やした。「MNP時などにユーザーを待たせ、迷惑かけたことを反省して窓口を増やした」

「ホワイトプランはSkypeだ」

 加入者間の通話が、時間限定で無料になる「ホワイトプラン」シリーズも好調。新規加入者の9割以上が「Wホワイト」「ホワイト家族24」を含むホワイトプランシリーズを選んでいるという。

 「ホワイトプランはいわばSkypeだ。Skypeはユーザー同士の通話が無料ですごいと世界に広がった。『Skypeが携帯業界のビジネスモデルを揺るがすのでは』と質問されることもあるが、ホワイトプランも加入者同士の通話が、時間限定とはいえ無料。これはSkypeと同じだ。ホワイト家族24なら家族間は24時間無料だからまさにSkype状態」

 KDDIやNTTドコモも、基本料金を半額にするプランなどを発表して価格競争に挑んでいるが、「他社の半額プランは一番安くても1800円以上。高いものだと3000〜4000円する。当社のプランは誰でも980円だから、他社プランのさらに半額。次元が違う」

ARPUは減っているが……

 加入者1人当たりの売上高(ARPU)は5000円で、前年同期より700円減った。うち音声ARPUは3590円、データARPUは1410円。ホワイトプランユーザーの拡大で音声ARPUの減少傾向は止まらない見通しという。今後は、3Gユーザーの拡大と、動画など高トラフィックなコンテンツを拡充することでデータ定額制ユーザーを増やし、データARPUを増やしていく方針だ。

 ちなみに、音声とデータ通信料金に、端末の割賦販売制(スーパーボーナス)による収入を足し合わせれば、「ユーザーの月額支払い料金はそれほど変わっていない」という。


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 割賦販売制度については「デビュー時は他社に批判されたが、最近は他社も導入を検討するなど評価されている」と見る。総務省のモバイルビジネス研究会でも議論に上り、総務省側はインセンティブモデルよりも割賦販売を支持しているが、孫社長は「(割賦販売という)1つのやり方を押しつけるのは統制経済のようなものできゅうくつ。インセンティブモデルを含め、さまざまな手法があっていいと思う」と、他キャリアに配慮した発言を繰り返した。

「YouTubeのように著作権侵害はしない」

 ヤフーを含むインターネット・カルチャー事業の売上高は18.3%増の528億円、営業利益は25.5%増の271億円と好調だった。孫社長は「Yahoo!動画のユニークユーザー数は、USENのGyaOを大きく上回る」とYahoo!動画の好調ぶりも強調。Yahoo!動画内に新設した、企業のCMを公開する「CMミュージアム」を紹介しつつ、YouTubeとの違いをアピールする。

 「われわれも、YouTubeと同様に乱暴にやるだけの技術はあるが、著作権侵害コンテンツだらけで進めるわけにはいかない。コンテンツ提供者や広告主にも安心してもらえるよう、正々堂々とやっていく」

 Yahoo!BBを含むブロードバンド・インフラ事業は、売上高が3.8%増の657億円、営業利益が58.2%増の87億円。経営の効率化で利益率が向上した。

 Yahoo!BBはADSL中心で展開しており、FTTHの本格化はまだ「準備中」という。「われわれは携帯で忙しく、ADSL拡販に活躍した営業や技術部隊もいまは携帯にシフトさせている。(その間にFTTH加入者数を増やした)NTTは喜んでいるのでは」

日本テレコム買収は「正直、後悔したこともある」

 ソフトバンクテレコムを含む固定通信事業は、売上高は2.0%増の905億円だったが、1億円の営業損失を計上。赤字幅は縮小しているものの、黒字化には至っていない。

 「1年前ふと、日本テレコム(ソフトバンクテレコムの前身)は買わない方がよかったと感じたこともあったが、いまは違う。おとくラインは法人向けが好調で、ソフトバンクブランドの使用料を除けば黒字化している。また、法人営業部隊が携帯電話も一緒に売ってくれるため、携帯の法人売り上げが想定以上に伸びた」

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