ファンタジーよりもリアルが大切――森本氏が込めた「sorato」「ヒトカ」への想いau design projectのコンセプトモデル(1/2 ページ)

» 2007年08月09日 22時42分 公開
[田中聡(至楽社),ITmedia]

 東京原宿のKDDIデザイニングスタジオで、7月31日から9月2日まで開催されている「ケータイがケータイし忘れていたもの展」(7月12日の記事参照)。このイベントで発表された2機種のコンセプトモデル「sorato」と「ヒトカ」のデザインを手掛けたアートディレクターの森本千絵氏と、シンガーソングライターの坂本美雨氏、フォトグラファーの森本美絵氏の3人によるトークショーが実施された。

 soratoはKDDIデザイニングスタジオの1階に展示されているが、端末のほかにsoratoの世界観を表現した映像と音楽も視聴できる。森本千絵氏によると「soratoが形になっている未来に一歩ずつ近づいている、この気分や概念を伝えるのが大事だと思い、映像と音を作った」という。そこで、かねてから親交の深かった森本美絵氏と坂本美雨氏に声をかけ、soratoの映像作品を手掛けることが決定したという。

photophoto KDDIデザイニングスタジオに展示されている「sorato」。映像作品も公開されている
photophotophoto soratoは全面タッチパネルで、背景に空が描かれている。画面はさまざまな色に変化する。表にボタンはなく、裏面に1つだけ「soratoボタン」があるという
photophoto ヒトカも全面タッチパネル。キー操作に連動して中の人間(男女1人ずつ)がコミカルに動く

空を映すことで視覚的なコミュニケーションが可能に

photo アートディレクターの森本千絵氏。今回のコンセプトモデルを手掛けるにあたり、「ありとあらゆる人にどんなケータイがあったらうれしいか相談した」という

 一見するとケータイとは分からないほど独特な形のsoratoは、どのようなコンセプトを持つモデルなのだろうか。

 「私はかなり携帯電話に依存しているタイプで、毎日メールをしていて、ケータイを見ていることが多いんです。そういう自分を考えたとき、私って下ばっかり見てるなぁと。そんな自分と照らし合わせ、コミュニケーションという観点でケータイを考えたとき、空を見上げているような気持ちになれば、毎日一緒にいられるものとしていいな、と思ったんです。置いたままでも楽しい、訴えかけてくるものがある、固いというより情緒的で体温がある――そんな気持ちを優先して考えました」(森本千絵氏)

 森本千絵氏のイメージでは、実際の時間が夕方になったらsoratoの画面も夕方になるという具合に、soratoには今の空がリンクして映るという。また、遠くにいる人から見える空を自分のsoratoに映すことによって、言葉だけではない視覚的なコミュニケーションができるという。「日常の当たり前のことが、今までプロダクトと密接な関係で描かれていることはなかったので、そこを形にしてみたいですね」(森本千絵氏)

 もう1つの「ヒトカ」については、「名前どおり“人化”している」と森本千絵氏。「“中の人”によって操作スピードが変わるなど、一瞬不便さを感じるかもしれないけれど、中の人に対して別の感情を抱いてしまうかもしれないケータイ」と話した。

空巡りの旅で空を撮り続ける日々――そこから見えたものとは

photo フォトグラファーの森本美絵氏

 soratoの映像作品を手掛けるにあたり、森本千絵氏はフォトグラファーの森本美絵氏を起用した。その理由は「感情を共有できるから」だという。「soratoを使う人のことを考えたとき、すごく女の子っぽい世界になりすぎても嫌でした。美絵さんは女性の感性でモノを発見していますが、シャッターを切るときは男なんです(笑)」(森本千絵氏)

 これに対して森本美絵氏も「その通りだと思います。そんなに感情メインで撮っているわけではなく、男か女かで言われたら“男”だと思います」と同意していた。

 そして“歌い手”としては、シンガーソングライターの坂本美雨氏を起用した。「本当はデザイナー同士で作るほうがいいんですが、感情という部分を考えたとき、耳から入るコミュケーションが必要と考えて、美雨さんにプロダクトのことを相談しました」(森本千絵氏)


photo シンガーソングライターの坂本美雨氏

 「最初にプロジェクトの話を聞いたのは、私に何かがあって大泣きしている日で、ご飯も食べられない状態でした。そんなときに千絵さんがポンとテーマを投げかけてくれて、『歌っちゃう?』みたいな感じで誘ってくれました。“空で人とつながる”というテーマで、感情の動きなら声が出せると思えたので『やります』と即答しました」(坂本氏)

 こうしてそろった3人の“soratoチーム”。まず最初の課題としてぶつかったのが、「どうやって空を表現するか」だった。

 「美絵さんに空の話を始めたら、未発表の映像を持ってきてくれて、それを流したら、空だったり電車の中から流れる景色だったり星空だったり……。刻々と今を描いた映像がつながっているんです。この感じは面白いんじゃないかと思い、今の空をリアルタイムで描いていかないかと提案しました」(森本千絵氏)

 こうして、美絵氏と千絵氏の2人はケータイを持って旅に出ることになった。「それこそ日本地図を広げてダーツの矢を刺すような気持ちで(笑)。とりあえず上(北海道)から攻めていこうと」(森本千絵氏)

 とにかく空を撮っていって、撮った写真はネットに上げて、坂本さんはそれを見ながら曲のイメージを膨らませていく――そんなやり取りがしばらく続いたという。坂本氏はそんな状況を指して「全部が同時進行だった」と話した。

 「でも実際に空を撮ると大変。空を意識して見ると常に違う形が描かれていて……。プロダクトデザインとしてカチッと手に持てるものになるまで、“感情”と“空”と“プロダクト”の狭間の旅に出ていた感覚でした」(森本美絵氏)

 「最終的に我々旅のチームは、このケータイのコンセプトに負けたかなと(笑)。そう簡単に、ずっと空を追うことはできないことが分かりました。これは機能に任せて、GPSとプログラムで空を見せるほうが効率的です。ケータイができるまで毎回毎回はしゃいで旅に出るとボロボロになってしまうので、プロダクトデザインのほうを頑張ることにしました」と森本千絵氏は旅の苦労を話す。だが、soratoの映像作品自体は完成したわけではなく、今後も継続して制作していくという。森本美絵氏も「製品化されるまでの過程は終わっていなくて、まだ関係を持てるのは面白い」と話した。

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