板前さんは“すし”だけでなく「W-ZERO3」も握る――「築地寿司岩」:MCPCモバイルソリューションフェア2007

» 2007年09月07日 21時47分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo 壽司岩 取締役執行役員管理本部長の西谷清二郎氏

 青山・TEPIAで開催された「MCPCモバイルソリューションフェア2007」。会場では中堅、中小企業向けのモバイル導入セミナーが行われ、チェーンのすし店が「W-ZERO3」を導入し、業務改善を行った事例も紹介された。

 「W-ZERO3で全国30数店舗の日報管理を効率化」と題した講演を行ったのは、壽司岩の取締役執行役員管理本部長の西谷清二郎氏。壽司岩は、1921年に“寿司岩”の屋号で創業した老舗すし店で、現在は江戸前寿司「築地寿司岩」を中心に、30以上の店舗を全国に持つ。およそIT化とはかけ離れた存在とも思える老舗すし店が、W-ZERO3を導入した経緯とはどんなものだったのだろうか。

 「約10年前まで各店舗からの売り上げ報告を電話で行い、7〜8年ほど前にはFAXによる報告も導入した。しかし、報告のタイミングが店舗ごとに違ううえ、中には報告しない店舗もあった。聞き取りミスや記入ミスもたびたび起き、報告内容も売り上げのみで、利益については月次で集計しないと分からないという状態だった。そのため、売り上げ対策が常に後手後手に回る悪循環になっていた」(西谷氏)

photophoto 電話とFAXによる非効率な店舗管理から、W-ZERO3と内蔵アプリのみの管理へと転換。コストはできるだけかけずに行ったという

 こうした状況から、各店舗共通の販売管理システム導入が検討された。しかし、デパートなどにテナントとして店舗を構える場合、デパート側が指定するPOSレジを使う必要があったりしてレジの共通化はできない。PCを利用した端末を置こうにも、狭い店舗の中に新たなスペースはなく、自由に回線を引けない場所もあった。なんらかのモバイル端末を使うしかないと考え始めたころ、とある携帯電話キャリアとウィルコムから、スマートフォン導入の提案を受けたという。

 「各店舗の電波状況や通信・通話の品質、月々のコストなどからウィルコムを選んだ。ウィルコム同士であれば通話料金は定額で、メールの送受信も定額。月々のコストが低く一定な点が良かった。また、ウィルコムの営業の方が、弊社の全店舗を訪ねて電波状況をチェックしてくれたのも大きい」(西谷氏)

 こうしてW-ZERO3を全店に導入することにした同社だが、肝心の業務アプリケーションを選定できずにいた。導入を決定した2006年春の時点で、要件を満たすソフトやASPサービスを見つけられず、また予算と時間の兼ね合いから新規に開発することもできない。そのため、W-ZERO3内蔵の「Excel Mobile」で日報を作成し、「メール」(Outlook互換)で本部に送信するという方法をとることにしたという。新たにサーバを用意する必要もなく、業務アプリの導入コストが0円で済む結果となった。

 「本部で作成した日報用のExcelフォームを各端末に送信して、月が変わるごとに報告をメールで送ってもらう。このフォームには売り上げのほか、時間帯別の客数や日々の原材料費、パートさんやアルバイトさんの勤務時間などを盛り込むことができた。これは電話やFAXではできなかったこと。ただ項目が増えたので、色で区別を付けるなど工夫している」(西谷氏)

 このフォームに入力すると、店舗家賃や販売管理費が控除され日々の利益が自動で計算される。また、日割り予算や前年実績なども表示されるため、各店長は日々の売り上げだけでなくコストや利益、その変動もチェックできるようになった。

 作成された日報は本部にメールで送信され、会社全体の実績表へと入力。これまでより迅速に、担当者や経営陣が実績を共有できるようになった。まさに、W-ZERO3のみで店舗管理を行っているのである。

板前さんとW-ZERO3

 当初店舗側からは、W-ZERO3を使うことへの強い拒否反応もあったという。西谷氏は「各店舗の店長は基本的に“板前”。仕事でPCやモバイル機器を使うことに縁がなく、興味を持ってもらい、受け入れてもらうまでは時間がかかった」と、当初の様子を振り返る。

 まず、「ディスプレイ」「テンキー」といった基本的な用語が分からないため、その説明から始まり、メールソフトの起動方法やExcelの入力方法をレクチャー。さまざまな理由を付けてW-ZERO3の利用に反対する店長には、影響力がある仲間の店長に説得してもらうなどして導入を進めた。また、西谷氏を初めとする本部スタッフだけでなく、ウィルコムの営業担当者が何度もヘルプで店舗を訪れたほか、勉強会も数回開くなどし、2カ月後に何とか操作ができる状態になった。その後、スムーズに運用できるようになったのはさらに半年後で、新しい店長が生まれるとまた最初からレクチャーする必要があるという。

photophotophoto 各店長は、空き時間を使ってW-ZERO3へ日報を入力し、本部へ送信。PHS同士であれば通話は定額のため、店舗間の内線電話としても機能している

 「導入してみて気が付いたのは、板前さんはキーボードを使わず画面上のソフトキーボードで文字を入力すること。スタイラスのみでダーっと入力していく。そしてそのスタイラスを良く紛失する。出しっぱなしにしてなくすので、その場にあるボールペンで入力して穴だらけにしてしまう。これから店舗管理でW-ZERO3を導入する企業さんは、最初から液晶保護シートを使うことをお勧めします」(西谷氏)

photo W-ZERO3の導入で効率的な店舗管理が可能になった。また、本部と店舗、店舗と店舗の連絡も密になったという

 店頭で板前として働く店長に、ある日降ってわいたW-ZERO3の存在。当初の拒否反応を乗り越え、今では店の実情を知るための重要なツールになった。西谷氏は「当初売り上げだけ追いかけていた現場の姿勢が、材料費や人件費の無駄を省き、利益重視になった。この効果は非常に大きい」と話す。また、PHS同士であれば定額で通話もできるため、店舗間をつなぐ内線電話としても活用されている。

 「本部と店舗、店舗と店舗の通話が定額になったので、以前より社内での会話が増えた。店長同士がW-ZERO3で仕事上の相談をしたり、お互いに励ましあう光景も見られる。板前というのは朝早くから夜遅くまで働く長時間労働。仲間同士の支え合いなどメンタルフォローが大切で、W-ZERO3はこうした役割も担っている」(西谷氏)

 スマートフォンを使った今後の構想としては、Webアプリケーションを使い本部サーバに直接入力するシステムや、バーコードリーダーを用いた勤怠管理/材料発注の実現、本部から各店舗におすすめメニューのPOPや新レシピを送信しプリンターで出力するといった構想もあるという。ただし、現在の通信速度では難しいことから、西谷氏は「ぜひウィルコムさんには、次世代PHSの開発に力を入れて欲しい」と、PHS高速化の要望を訴えて、講演を締めくくった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月08日 更新
  1. KDDIのローミング縮小でも「やめる理由にはならない」 楽天モバイルユーザー4人が語る本音と“経済圏”の囲い込み (2026年10月05日)
  2. 楽天ドライブに不正アクセス 1万5382件の保存データ閲覧、313件のパスワードも (2026年10月06日)
  3. 新コード決済「teppay」はどこで使える?  エキナカ施設からコンビニ、ファミレス、ECまで一挙案内 (2026年10月07日)
  4. モバイルSuicaのコード決済「teppay」10月20日開始 2万円を超えたチャージが可能に (2026年10月06日)
  5. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  6. Xperia純正充電器がソニーストアから消える 今後は「出力30W以上のUSB Power Deliveryに対応した充電器の使用を」 (2026年10月07日)
  7. 【ワークマン】2900円の「撥水8ポケットショルダーバッグ」 13型ノートPCも入る収納力 (2026年10月07日)
  8. PayPay、11月以降の地域限定キャンペーン発表 東京や大阪で最大6000円〜1万2000円おトク (2026年10月07日)
  9. 注目点は“可変絞り”だけじゃない! 「iPhone 18 Pro」のカメラは思った以上に変わっている (2026年10月05日)
  10. Suica、JRE POINTのキャンペーンまとめ【10月6日最新版】 モバイルSuica利用で600ポイント、交換レート35%オフも (2026年10月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー