第2回 “VGA対応でこっそりパケ代アップ!”の心苦しさにぼやく:コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく

» 2008年04月16日 20時22分 公開
[トミヤマリュウタ,ITmedia]

 本題に入る前に、まず前回の記事の訂正をさせてください。すみません、電子コミックバナーに多いのはBL(ボーイズラブ)よりもTL(ティーンズラブ)でした。勉強不足です。申し訳ありません。ご指摘いただいたみなさま、ありがとうございます。

 反省しつつも、「ネットで意見を発表するのってやっぱりいいもんだなぁ」と今さらながらに思いました。自分の意見で閉じて終わらず、多くの人の知識で情報が適宜修正、最適化されていく……。こんなこと、ほかの媒体ではなかなかありませんよね。

 実は自分、名前を出してネットで原稿を書くのは初めてだったんですが、雑誌に署名記事を書くよりも反響が断然大きく、驚いています。こそーっと書籍を出したときより、業界雑誌のインタビューに答えたときより、かなーり有名なサラリーマン向け某週刊誌に顔出しで載ったときよりも、前回の+D Mobileの連載のほうがはるかに反響があった……ように感じました。あくまで、自分個人の実感レベルですけれども。

 メディアの影響力や、それが反映されきっていないように感じる媒体ごとの広告格差。ここらへんもそのうち書いてみたいのですけれど、今回はそんな大ごとの話でなく、底辺らしく、小さな小さな、しかし心苦しい悩みをぼやいてみたいと思います。

QVGAとVGAの違いってどれくらい認知されてるんだろう……

 ITmediaをご覧のみなさんに、いまさらQVGAディスプレイとVGAディスプレイの違いを説明するのもなんではありますが、念のため記しておきます。解像度240×320ピクセルのディスプレイがQVGAで、解像度480×640ピクセルのディスプレイがVGAです。最近ではワンセグ向けに16:9の比率を実現するなど、ワイドなディスプレイも多くて、ワイドQVGA(240×400ピクセル)やワイドVGA(480×800ピクセル)、さらにはフルワイドVGA(480×854ピクセル/480×864ピクセル)なんていうものもあります。

 このように、QVGAディスプレイとVGAディスプレイでは解像度が4倍も違うのですが、実寸の画面サイズはそれほど違いません。2.8インチが3.2インチになったとか、それくらいのもんです。いまいち解像度の差がつかめない……という人のために、ソフトバンクモバイルさんのFULLFACE 913SH(ワイドQVGA)とFULLFACE 2 921SH(フルワイドVGA)のPCサイトブラウザでYahoo!のトップページを表示した画面を見てみましょう。913SHは2.8インチで921SHは3.2インチなので、ディスプレイサイズも違うのですけど、こうやって同じ画面を並べると、表示されているエリアが画面サイズとは比例せず、ものすごく違うというのを理解していただけると思います。

PhotoPhoto FULLFACE 913SHとFULLFACE 2 921SHのPCサイトブラウザにてヤフー!トップをのぞいてみました。左がQVGA液晶の913SHで見た画面。右がVGA液晶の921SHで見た画面です。ちなみに文字サイズは913SHが最小で921SHはやや小です。見た目の大きさで合わせてみました

 この“実寸サイズでは同じ or ほぼ同じ”だけれども解像度が違う……というのが、ケータイサイトをデザインする上で、いろいろやっかいなんです。分かりやすい例を挙げると「QVGAサイズで作ったタイトル画像がすんごく小さくなる」という現象があります。VGAディスプレイを搭載したケータイを使っている人なら、「あるあるある」と分かっていただけることでしょう。ただ、これまた機種によってはVGA液晶搭載機でもQVGA表示されたり、はたまたされなかったりと、いろいろ複雑です。

Photo 文字より小さいタイトル画像に……。これはもはやデコメ絵文字

 ちなみに、「ITmediaのケータイ向け公式サイトってどうなってるんだろう?」と思って見てみたところ……こんな感じでした(右)。きっとQVGAディスプレイ向けに作られたまま、サイトリニューアルをなさっていないのでしょう。写真のようにえらく控えめなタイトル画像になってしまっていました。

 タイトル画像のみならず、区切り線やコーナー見出しなど、凝ったデザインで画像をたくさん使っているサイトであればあるほど、この困った現象に見舞われてしまいます。「なら機種判定してVGA機種にはVGA画像を出せばいいじゃん」という話になるかというと、それもそれでいかがなものか……というのが今日の本題です。あぁ、前置き長くてすみません。

「VGAに対応して画像を美しく!」──でもこっそりパケ代アップ

 QVGAディスプレイを前提に作っていたケータイサイトの画像を、VGAで見てちょうどいい画像にするということは、大きさでいうと倍から4倍のサイズアップになります。これをパケット通信料に換算すると2倍くらいのプライスアップになります。ガソリンよりも高い値上げ率です。

 「パケット通信料なんて、定額制があるんだから、いまさら気にしなくていいじゃん」という意見もありそうですし、2段階定額制の定額上限張りつき上等!なユーザー(主にヤングチーム)にとってはどうでもいい話かもしれません。さらにさらに、ドコモさんでパケ・ホーダイな人なんて、使っても使わなくても4095円なので、ほんっとにどうでもいい話なわけですが……。でも、やっぱり気になりますよ、パケ代は。

 実際、「パケット通信の定額制には入っているけれど、2段階制だからパケ代は気にして使っている」というauさん、ソフトバンクモバイルさんのユーザーの方、結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。データ元は公表できないんですけども、自分が見た最近の調査結果では、定額ユーザーでもパケット代を気にしているという人がかなり多く、ちょっとびっくりしました。半数以上が「普段パケ代を気にしながらWebサイトを見ている」という答えだったんです。

 そういう人たちのことを考えると、どうしても作業する手が止まります。

  1. パケ代を気にする人は、ケータイサイトに慣れていない、つまりパケ代の仕組みにはうとい人なんじゃないだろうか
  2. ということは、VGAディスプレイがどういうものか、画像のVGA対応がどういうものかなんて分からないだろうな……
  3. そんな人にもし、機種判定で自動的にVGA画像を表示させるようにしたら──。「いままでと同じサイトを見て同じようにケータイを使ってたのにパケ代が高くなってる! なんで!?」ってなるのは目に見えてるよなぁ……

 と、思い悩むわけです。なので、ユーザーの多くが「定額上限張り付き上等!」だと思われるサイト(オンラインゲームなど)でなければ、現状では「あまりVGA対応したくないなぁ」というのが本音だったりします。いや、正確にいうと“VGA画像対応”ですね。「VGAディスプレイのケータイでもレイアウト崩れを起こさないようにする」ということであれば、手段は結構ありますから。

 当社でデザインさせていただいた、「世界の中心でイマをさけぶ」(http://imachu.jp/)というサイトがあります(なんかタイトルがこの連載と酷似していますがスルーで)。このケータイサイトは、QVGAディスプレイのケータイで見ても、VGAディスプレイのケータイで見ても、それほどデザインが変わらない作りになっていますが、元の画像は横幅240ピクセルのQVGAサイズで作っています。

PhotoPhoto 左はFULLFACE 913SHのワイドQVGAディスプレイで表示した場合。右はFULLFACE 2 921SHのフルワイドVGAディスプレイで表示した場合

 別になにか特別なことをしたわけではなく、HTML上で画像の width を100%にし、heightを指定しないでおけば、縦横の比率は変わらずに、画像が画面いっぱいにビョーンと拡大されて見えるため、レイアウト的には崩れないですむ、という作りにしただけです。すごく簡単。

 最近このやり方をされているサイト、よく見かけますね。まぁこれをやると、どうしても画像がガビッとするのですが、最大公約数を取るとこの方法に落ち着く感じです。正直、ユーザーの方のパケ代に配慮したら、今はこれしかないんじゃないかな〜と思っています。

QVGA普及→パケット定額誕生! VGA普及→?

 なんだか昔にもこんな感じで悩んだことがあるなぁ……と思い返してみたら、QVGAディスプレイが普及し始めたときも同じような感じでした。ちょっとググってみると、2002年の12月に世界初のQVGA液晶搭載機、J-T08がJ-フォンから発売されて、2003年の4月にはドコモさんが505iシリーズで共通仕様としてQVGA液晶を採用したという歴史が出てきました。

 それ以降、QVGAディスプレイの普及が既定路線になったわけですが、その後何が起きたかというと……そう、2003年11月に、auさんがケータイ初のパケット定額制「EZフラット」を導入しています。その後の1年で、ドコモさんもボーダフォン(当時)さんもその流れに追随し、「パケ・ホーダイ」や「パケットフリー」をスタートしたのはご存じのとおりです。

 ポイントは、ドコモさんがラインアップの共通仕様としてQVGAディスプレイを採用したことでしょう。これを契機に、

  1. ケータイでかなりネットする先進的ユーザーの端末がQVGAディスプレイになった
  2. ケータイサイトもQVGAに対応せねば!となった
  3. 結果的にヘビーユーザーのパケ代アップした
  4. 社会問題になりかけていた(なっていた?)パケ死加速!これはまずい!
  5. キャリアはパケ代の値下げ、もしくは定額化を迫られた
  6. 定額ならコンテンツは見栄えがいいほうがイイに決まってる!

ということで、シンプルなテキスト系サイトから、画像をふんだんに使ったサイトへとケータイサイトが変わっていった……という流れがありました。

 このときと今の状況はまったく同じではありませんが、似ているところはありますよね、やっぱり。特にドコモさんが905iシリーズの共通仕様としてフルワイドVGAディスプレイを採用したところとか。これを口火に、auさんでもVGA/ワイドVGAディスプレイの普及が進むことでしょうし、ソフトバンクモバイルさんはもともとVGA率高いですし……。この流れで行くと、パケ代にもなんらかの料金改定があるのかも? などと思ってしまいます。

 さすがに、定額制の上限金額が下がることはないと思います。よくて、0.08円/パケットという単価(au:ダブル定額ライト/ソフトバンク:パケットし放題)がいくらか下がるくらいでしょう。でも、これが下がってくれると、僕ら底辺でうごめくケータイサイトのデザイナーも、「VGA画像に対応してもパケ代そんな変わらない。だから思い切っていいものを作ろう!」っていう気になれるってなもんです。

 これが実現したら、普段ネットの閲覧をセーブしてる人でも、もっとサイトを見ようと思ってくれるかもしれませんし、結果的にはARPUが上がるんじゃないですかね。あ、そんな大それた発言、私ごときが軽率にしてはいけませんね……。とにもかくにも、ケータイサイトのVGA対応という波は、すぐ目の前に来ていると感じる今日このごろ。うまく波に乗ってお金がもうかるといいなぁと夢見ているのでした。

PROFILE トミヤマリュウタ

ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。


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