今も未来も、ケータイに大事なのは“フツーに使える”こと――夏野氏(後編)ケータイの未来を予測する5つのキーワード(1/2 ページ)

» 2008年08月01日 07時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 モバイル学会が主催するシンポジウム「モバイル08」の講演で、今後のモバイル技術の進化や、新サービスが受け入れられるまでの課程を考える上で、「SF映画がヒントになる」と話した慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の夏野剛氏。15年前には電話の代名詞だった固定電話が、90年代後半にはケータイにとって代わられ、今ではケータイからのインターネットアクセスが当たり前になったことを挙げ、「世の中の進化はこのくらい速いので、今日お見せする世界が15年後に実現していても不思議ではない」と話す。

Photo これまでのケータイの歩み

電話は家の中でどう使われているか

デバイス 映画 利用シーン
携帯電話 アイランド 内蔵プロジェクターを用いた大画面でテレビ電話
留守電メッセージ スター・ウォーズ ホログラム映像でメッセージを残せる
公衆電話 アイランド 名前をいうと情報エージェントが検索を開始。登録されていれば自動で接続
車内電話 マイノリティ・リポート 車内から高音質・高画質の通信が可能
ウェアラブル化 ファイナルファンタジー 腕時計のように身につける形に進化
軽量小型化 アイ,ロボット 超小型化し、耳にかけて利用


Photo SF映画に見る屋内のケータイ利用シーン(左)と、SF映画・最近の開発事例に見るケータイの形の変化(右)

 屋内の利用シーンとして夏野氏が注目するのが、映画「アイランド」に登場する電話ボックスのシーン。ネットにつながった電話ボックスに情報エージェントの機能があり、さまざまな情報を引き出せるというものだ。「Wi-Fiがどんなに流行っても、重さやバッテリーの持ちの問題からPCを持ち歩く人は少ない。公衆電話のようなところが、常に簡単にネット接続できるようになっていて、キーボードや音声で情報を引き出せれば、便利に使える」というのが同氏の考えだ。

 「渋谷の駅前を見ていると、やることがなくてiモードで何かを見ている人がたくさんいる。そこにコンピュータクラスの画面サイズできちんとした情報検索ができるものがあると、話は違ってくるのではないか。NTTも、NGNでこういうことをやった方がいいと思う」(夏野氏)

 そして、夏野氏が手放しで絶賛するのが、映画「ファイナルファンタジー」の冒頭シーンに登場するウェアラブルコンピュータだ。「兵士の戦闘服に腕時計のようなものがあって、それを押すと8インチくらいの仮想ディスプレイとバーチャル操作ボタンが現れる。兵士は武器を構えたまま、ホルンやチューバを演奏するようなピストン操作で画面を操作する。これは卓越した未来予測で、将来のケータイのあり方として僕のイメージに一番近い」(夏野氏)

Photo BenQが2006年にコンセプトモデルとして提案した「Black Box」。フロント部がタッチスクリーンになっており、使う機能に応じてインタフェースが変化する

移動空間でどう使われているか

用途 映画 利用シーン
カスタマイズ広告 マイノリティ・リポート 虹彩認証で個人が特定され、その人に最適化した広告が現れる
電子ペーパー マイノリティ・リポート 新聞が電子ペーパーで提供され、ニュース速報でコンテンツが更新される
タクシーで移動時の決済 シックス・デイ 指紋で個人認証のあと、そのまま決済が行われる
車のバーチャルコンシェルジュ アイ,ロボット バーチャルコンシェルジュが起動し、運転手の要望に応える
バーチャルコンシェルジュ(2) アイランド 指紋認証でエンジンが起動。行き先を告げるだけでコンシェルジェが設定を行う


Photo SF映画に見る未来の移動シーン

 ここで夏野氏が着目するのは「カスタマイズ広告」だ。光彩認証で個人が特定され、その人に最適化した広告が表示されるという、映画「マイノリティ・リポート」の1シーンを例に挙げ、「うざいけど究極」(夏野氏)と評した。「『情報大航海プロジェクト』をやっている人たちの理想の世界ですね」(同)

 そして実際の運用にあたっては注意が必要だと見る。その理由は「システムを駆使してセグメントし、ターゲットしても、人間の行動は簡単に把握できず、把握できたとしても、そもそも“自分で買いそうな人が買うだけ”のマーケティングになってしまう」からだ。「データベースを掘り起こすことで喜ぶのはシステムインテグレーターなど一部の人だけ。実際に使うときにはけっこう大変なのでよく考えた方がいいと思う」(夏野氏)

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