電子決済のシーンは、タクシーの移動時に指紋で個人認証したあとに決済が行われる、映画「アイ・ロボット」のシーンに出てくるアナログなUIが注目だと話す。「あえて、ガチャンという(アナログな)メーターを表示しているところが、IT業界の参考になると思う」(夏野氏)。ITだからこそ、お金を払ったことを体感できるUIが大事になるという考えだ。
「例えば、重要な取引のところは“ぐっと押す”ようなUIがあった方がいいと思う。そうすると、“間違えて押す”とか“弾みで押す”ことがぐっと減るのではないか。“何でもかんでも機械化しよう”と考えずに、“お客さんのために一番いい形”を考えると、いいものができると思う」(同)
認証方式 | 映画 | 利用シーン |
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虹彩認証 | マイノリティ・リポート | 電車の乗客すべてに虹彩認証を行い、不審者がいないか常に監視。不審者がいると警察に通報され、行動が監視される |
虹彩認証 | マイノリティ・リポート | くりぬいた目玉をかざしても認証される |
指紋認証 | シックス・デイ | 切断した他人の指で認証ゲートを通過 |
声紋認証 | クローン | 声紋で個人認証が行われる |
電子認証 | アイ,ロボット | 表面形状とICチップによる電子認証 |
操作 | 映画 | 利用シーン |
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ジェスチャー操作 | マイノリティ・リポート | 手の動きでPCを操作 |
音声操作 | A.I. | 音声でPCの操作が可能 |
タッチペン操作 | ペイチェック 消された記憶 | タッチペンでCADを操作 |
バーチャルキーボード | シックス・デイ | 机の上に投影されたキーボードでキーを打つ |
SF映画に登場する認証とセキュリティのシーンを一通り紹介した夏野氏は、「ここに共通しているのは、“何でも普通に使えるようにしましょう”という点」だと指摘する。「ジェスチャー入力や音声入力、タッチペン、バーチャルキーボードを見ていると、“いかに人間の普通の行動に近い形でデバイスをコントロールするか”を実現しているのが分かる」(夏野氏)
そして、iPhoneの発表以来、タッチパネル搭載機が急速に増えたことを皮肉るのも忘れない。「日本のメーカーは、アップルがiPhoneを出してきたからといって、“タッチ入力を実現するため”にケータイを出しているところがある。タッチパネルの利便性が、利用者に新たな価値を提供することが目標なのに、テクノロジーを実現することだけが目標になっているケースがまだある。テクノロジーの進化のためには、こうしたプロセスを踏まないと“次に行けない”という側面もあるが、そういうものは、どちらかというとごまかしになる」(夏野氏)
一連の“SF映画の中に見るケータイの未来”を紹介した夏野氏は、ケータイの未来を予測するキーワードとしてAI(人工知能)、I/O(出入力)、BIO(生体認証)、Battery(電源)、For ordinary People(すべては普通の人のために)という5つを挙げた。
夏野氏が最も重要視するのは「For ordinary People(すべては普通の人のために)」だ。“エンジニアの人だけに通じるコンセプト”や“作ることを目標とした製品開発”“研究が目標で商品化が最後”ということでは、「みんなが焦って、成果を先に取りに行っているような感じ」だと指摘する。
製品は“世の中に広まってこそ、社会的効果を呼ぶ”ものであり、「普通の人に使われるためには、どんな技術的制約や制度面の問題があるのか、どういう啓蒙活動をするのか、どういうサービスとパッケージするべきなのか。この視点を忘れると、課題が見えなくなる」とした。
キーワード | 理由 |
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AI(人工知能) | 単にデータベースからデータを引いてくるのではなく、ちょっとしたレコメンデーションをまるで人のようにやってくれればいい。ライブアシスト、エージェント、カスタマイズ、個人秘書、執事、コンシェルジェといった機能の実現をAIと総称すると、ケータイデバイスとAIの一体化が1つの未来ケータイの方向性といえる。 |
I/O(出入力) | ディスプレイ、キーボード、バーチャルディスプレイ、ソフトウェアディスプレイ、音声認識といった機能を搭載することで、ケータイは物理的なサイズの限界を超えられる。 |
BIO(生体認証) | 個人をアイデンティファイすることから、いろいろな付加価値を付けられる。このバイオメトリクス情報や個人ID、カスタマイズ情報を国民全員が登録するという話になったら、共通化することのメリットとデメリットを議論して社会的コンセンサスをとる必要がある。ちなみに、“携帯に格納しているIDは自分の指紋を照合しない限り使えない”ようにすれば、認証するものはケータイでもいい。 |
Battery(電源) | どの映画を見ても電源の話は出てこないが、電源は重要。例えば、国内外で売っている机の片隅は“非接触充電の場所”というように標準化できれば便利だろう。 |
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