フィルタリングでは“すべての解決”にならない――「安心ネットづくり」にキャリア3社が参画

» 2008年10月08日 23時43分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo 「安心ネットづくり」促進協議会世話人の慶應義塾大学教授 中村伊知哉氏

 10月8日、企業と地方自治体、PTA、大学教授らが参画し、安全なインターネット環境の構築を目指す「安心ネットづくり」促進協議会の発足が発表された。

 発表記者会見には、慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏を世話人とする発起人17人が出席。ドコモ代表取締役社長の山田隆持氏、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏、ソフトバンクモバイル代表取締役社長兼CEOの孫正義氏という携帯キャリア3社のトップに加え、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)代表取締役社長の南場智子氏、ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏といった、大手サイトの経営者も顔をそろえた。

 中村氏は協議会設立の目的について、「インターネットは今や生活に欠かせない存在になっているが、一方でマイナス面も拡大している。民間主体で行われている取り組みを強化し、利用環境の整備を行いたい。ネット上の有害コンテンツへの対応はこれまでも数多くあったが、対処療法的であったり、地域差があった。これらを横断的に連携させ、点のつながりを面にすることで底上げを図りたい」と説明した。

photophotophoto NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏(写真=左)、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏(写真=中央)、ソフトバンクモバイル代表取締役社長兼CEOの孫正義氏(写真=右)

 協議会は2009年1月に任意団体として設立し、同4月から活動を始める。事務局は、e-ネットキャラバンの活動を支援する財団法人マルチメディア振興センターに置かれ、センター職員のほか、各発起人企業からの出向者で運営を行う予定だ。

 初年度の主要事業として計画しているのは、大きく3つ。1つ目は総合的なリテラシーの向上推進。キャラバンやシンポジウムの開催を通じて、インターネットを利用する子どもと保護者に対し、ネットの負の面だけでなく有用性も知ることができるような情報発信を目指す。2つ目は、“自主憲章”を制定し、サイト事業者がそれを共有する取り組みを進める。また、セルフレーティング(事業者による自己評価)に加え第3者によるレーティングも行うなど、民間が主体となって取り組みを進めることで“目に見える”安心・安全なネット環境の構築にも取り組む。そして3つ目は、機関誌やポータルサイトを通じて、企業や教育機関、地方ごとの取り組みを集約し、さらなる工夫を図るための議論の場を提供する。

photophotophoto ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏(写真=左)、ディー・エヌ・エー(DeNA)代表取締役社長の南場智子氏(写真=中央)、ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏(写真=右)

 あくまで民間(産学連携)が主体となって設立する本協議会だが、発起人には東京都三鷹市市長の清原慶子氏も参加しており、地方自治体や関係省庁との連携も図る。また、今後の事業内容によっては公的な資金の支援を受けることも検討するという。さらに、利用者/事業者の国籍を問わないインターネットの性質から、海外にある同様の団体との国際連携も視野に入れている。

 発起人となった携帯3キャリア代表のコメントは以下のとおり。

 「NTTドコモは、安心・安全なモバイル社会の実現のため、フィルタリングサービスの普及促進活動の強化、携帯電話を使う際のマナー等を啓発する『ケータイ安全教室』などの取り組みを積極的に実施してきた。今後も、本協議会への参画を通じ、関係各所と連携しながら、引き続き、こうした取り組みを強化・推進していきたいと考えている」(NTTドコモ・山田氏)

 「KDDIは、誰もが安心・安全に情報通信を利用できる社会の創出に向け、事業に取り組んでおり、フィルタリングの普及・啓発活動や、携帯電話の正しい利用ルールやマナーを伝える『ケータイ教室』なども積極的に実施しきた。今後もこの協議会の会員の皆様と連携し、これまでの取り組みをさらに強化したいと考えている」(KDDI・小野寺氏)

 「ソフトバンクモバイルは、インターネットを安心・安全に利用して頂くため、フィルタリングサービスの普及促進といった整備環境やお客様のICTリテラシー向上のための取り組みを行ってきた。インターネットの有効活用は、日本の国際競争力の維持・強化を図るために必要不可欠なものであり、国民が安心・安全に利用できる環境を整備することは重要なことと考える。本協議会には、国民の自主的取り組みの強化により、インターネットの活用を促進し、日本を盛り上げていくことを期待しており、ソフトバンクモバイルもその取り組みに積極的に参加する」(ソフトバンクモバイル・孫氏)

 またソフトバンクモバイルの孫氏は質問に答える形で、必要以上の規制は日本の国際競争力低下を招くという持論を重ねて強調した。

 「ADSLやFTTHの普及など、日本のブロードバンド環境は世界に劣ることはないと考えている。また携帯電話についても3G規格が8割以上を占め、HSDPAも普及するなど、インフラでは世界の最先端を行っているだろう。しかし、コンテンツとケータイアプリの開発や活用については、韓国・中国・アメリカのほうがすぐれており、決して日本のネット利用が最先端というわけではない。

 行き過ぎた規制は“インターネット音痴”を生み出し、国際競争力の低下をもたらしかねない。だが、海外ではネットの安心安全への取り組みはあまり積極的ではない。日本のこうした働きは健全で、諸外国の参考になるだろう」(孫氏)

photo 記者会見に出席した17人の発起人。後列向かって左から、全日本空輸専務取締役執行役員 長瀬眞氏、楽天執行役員渉外室室長 関聡司氏(楽天代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏代理)、一橋大学名誉教授 堀部政男氏、マイクロソフト業務執行役員CTO 加治佐俊一氏(マイクロソフト代表取締役社長 樋口泰行氏代理)、全国高等学校PTA連合会会長 高橋正夫氏、日本PTA全国協議会会長 曽我邦彦氏、清原三鷹市市長、小野寺KDDI社長。

前列向かって左から、世話人の中村慶応大学教授、ドコモ山田社長、富士通経営執行役常務 川妻庸男氏、ベネッセコーポレーション代表取締役社長兼COO 福島保氏、DeNA南場社長、ソフトバンクモバイル孫社長、インターネットイニシアティブ代表取締役社長 鈴木幸一氏、ミクシィ笠原社長、ヤフー井上社長

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