KDDI、電子書籍端末「biblio Leaf SP02」と配信サービスを12月25日から提供発売4日前の発表

» 2010年12月21日 20時12分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

KDDIが電子書籍市場に向けて侵攻を開始

biblio Leaf SP02 12月25日から発売される「biblio Leaf SP02」

 KDDIは12月21日、電子書籍端末「biblio Leaf SP02」を、12月25日から発売することを発表した。まずは12月25日から関西、沖縄地域で発売し、そのほかの地域では2011年1月上旬以降に順次発売していく予定。

 biblio Leaf SP02についてはすでに「KDDI、電子書籍端末「biblio Leaf SP02」を発表。ストアはXMDF採用?」や「電子ブックリーダー『biblio Leaf SP02』、12月25日から順次発売」でも取り上げたため、そちらも参考にしてほしい。この日都内で開催された説明会では、本体価格や3G契約の詳細、そしてKDDIもいよいよ参戦する電子書籍ストアサービスが紹介された。


日本版Kindle 3のポジションを狙えるか?

 E Ink製の6型電子ペーパーを採用したLinuxベースの電子書籍専用端末であるbiblio Leaf SP02。同サイズの電子ペーパーを採用している他社の電子書籍端末と比較してみると以下のようになる。比較したのは、ソニーのReader(Touch Edition)と、Amazon.comのKindle 3だ。

biblio leaf SP02 Reader(Touch Edition) Kindle 3
解像度 600×800ドット 600×800ドット 600×800ドット
内蔵メモリ 2Gバイト 2Gバイト 4Gバイト
外部メモリ microSD/microSDHC メモリースティックPRO デュオ、SDメモリーカード(SDHC対応) なし
通信機能 3G(WIN Rev.A)+Wi-Fi(IEEE802.11b/n/g) なし 3G+Wi-Fi(IEEE802.11b/n/g)
サイズ(幅×高さ×奥行き) 198×129×9.8ミリ 119.1×169.6×10.3ミリ 190×123×8.5ミリ
重さ 282グラム 215グラム 約247グラム
価格 オープン(1万円代前半) 2万5000円前後 189ドル(約1万5800円)
6型の電子ペーパーを採用した主要な電子書籍端末のスペック比較

 上の表で一目瞭然(りょうぜん)だが、ディスプレイの解像度は横並びで、biblio leaf SP02のサイズはKindle 3に近い。ただし、3製品の中では最も重い282グラムだ。なお、ReaderやKindle3では電子ペーパーにE-Inkの最新型電子ペーパー「Pearl」が用いられているが、biblio leaf SP02でもPearlが採用されているかどうかについては明確な回答を得られなかった。展示機に触れてみた印象では、若干描画速度が遅いように感じたため、Pearlでない可能性がある。

 そのほか、PC用の管理アプリなども特に用意されず、完全に端末だけで完結した使い方ができるようになっている。

展示されていた「biblio Leaf SP02」。端末には青空文庫から100作品がプリインストールされているほか、KDDIの電子書籍配信サービス「LISMO Book Store」も確認できる(写真=左)。なお、同端末の存在が発表された際、禁則処理がうまくできていない写真がサイト上に掲載されるなどして話題となったが、幾つか確認した限りでは、そうしたバグはつぶされているようだ(写真=右)

3G対応、価格は月額525円

今野敏博氏と雨宮俊武氏 ブックリスタ代表取締役社長の今野敏博氏(左)と、KDDI グループ戦略統括本部新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏

 価格はオープンだが、KDDIのグループ戦略統括本部新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏は、「1万円台半ばだろうか」と話しており、普及のためにかなり安価な本体価格にする考えだ。

 biblio leaf SP02で特筆すべきは、国内の電子書籍専用端末としては初となる3G対応を果たした点だ。先行して国内市場に投入されたシャープの「GALAPAGOS」やソニーの「Reader」も、現状で3Gには対応していない。3G対応を果たすということは、いつでも気が向いたときに書籍を端末から購入できるという利便性につながる。海外ではKindle 3など3Gに対応したものが人気を博しており、日本での登場も待たれていたが、キャリアとしてはKDDIが先陣を切ったということになる。

 今回KDDIはbiblio Leaf SP02専用の料金プラン「誰でも割シングル(特定機器)」を用意した。同プランを申し込むと、月額基本使用料1575円が525円に割り引かれる。つまり、月額525円(別途ユニバーサルアクセス料8.4円が必要)で、3G回線を利用していつでもどこでも好みの電子書籍を端末から直接購入できることになる(有料コンテンツの購入には別途コンテンツ料が発生する)。ただし、後述するLISMO Book Store以外の通信はできないという。

 このプランは2年契約のため、契約期間中の解約は契約解除料(9975円)が発生する。25カ月目以降も自動で割り引きは継続されるが、契約や廃止時に契約解除料は発生しない。また、3G回線の契約自体を解約した場合でも、Wi-Fiを利用してLISMO Book Storeのコンテンツを購入することは可能だという(この場合はクレジットカードを利用するとみられる)。

電子書籍配信サービス「LISMO Book Store」も発表

 biblio Leaf SP02の発売に合わせ、KDDIは電子書籍配信サービス「LISMO Book Store」を立ち上げることも明らかにした。コンテンツの供給は、KDDIも参画している電子書籍配信事業会社「ブックリスタ」から受け、サービス当初は2万点を、2011年度中に10万点のラインアップを目指すという。

 ブックリスタが関連しているほかの電子書籍ストア――例えばReader Store――と比較して、目玉コンテンツこそないが、基本的な品ぞろえや価格は変わらない。ただし、KDDIではLISMO Book Storeのオープニングキャンペーンとして、2011年3月末までコンテンツを通常価格の半額で提供するという大盤振る舞いで一気に市場を拡大させたい考えだ。また、2011年4月からは同社のスマートフォン「ISシリーズ」向けにもサービスを展開する計画であるとし、この段階でコミックなどの配信にも踏み出すものとみられる。なお、LISMO Book Store内での定期購読サービスについては「検討中」と答えるにとどまった。

 LISMO Book Storeで扱う電子書籍のファイルフォーマットはXMDF。雨宮氏は、コンテンツ流通におけるマルチユース・マルチネットワークを志向していきたいとし、まだ版元や権利者とは今後調整していかなければとしながらも、同一ユーザーであれば、購入したコンテンツがデバイス依存することなく、複数のデバイス間で利用できるようにしていきたい考えを示した。ReaderがKDDIから登場する可能性についても柔軟に検討していきたいと否定することなく述べた。

 ブックリスタからコンテンツの供給を受けるストア事業者は、今回のKDDIのほか、すでにReader Storeを立ち上げたソニーが存在する。ブックリスタはソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社によって立ち上げられたのだから、ソニーやKDDIがストア事業者となったのはさほど驚くことではない。後は朝日新聞社がいつストア事業を展開するのかが注目されるが、書評などのサービスで連携する可能性が示される程度だった。

 この日、雨宮氏とともに発表会の壇上に立ったブックリスタ代表取締役社長の今野敏博氏。同氏の前職は携帯電話向け音楽配信を手掛けるレコチョクの代表執行役社長だった。同氏はこれまで音楽配信がたどってきた歴史を踏まえ、電子書籍市場もまずは市場のパイ自体を拡大することが何より重要であるとし、ストア事業者間で囲い込みをするのは百害あって一利なしだと説いた。

 「まずはコンテンツの充実。それから電子書籍ストア間を横断したキャンペーンや、ポイントプログラムの共通化なども進めていきたい」(今野氏)

 また、今野氏はストア事業者だけでなく、ブックリスタへの資本参加なども歓迎したいと述べており、上述した雨宮氏の話すマルチユース・マルチネットワークを支持するとともに、ブックリスタ自身もオープンに振る舞うことで、この市場の早期拡大を図りたいと述べた。

 「ユーザーには電子書籍との出会いを提供したい。ブックリスタは新しい刺激となって出版社に貢献できると思う」(今野氏)

 今野氏によると、ブックリスタの出足は、「予想を上回る売り上げ」だったと明かす。同氏は、「携帯電話で売れ筋のものとは少し異なるという印象。そうした意味でもやはり今年は電子書籍元年」と話し、新しい市場が成長しつつあることを強調した。

 なお、発表会終了後の囲み取材で今野氏に、ソニーのReader Storeが当初発表していたラインアップをそろえられていないことについてブックリスタとしてはどう考えているのかを聞くと、「出せる状態にはある。年末にかけて順次公開して予定通りの数に近づけていく」と露出方法に関する戦術であることをにおわせた。

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