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» 2011年08月08日 11時00分 公開

神尾寿のMobile+Views:Windows Phone、日本市場での可能性と課題 (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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日本市場の前にある3つの課題

 しかし、その一方で、Windows Phone 7.5が日本市場で成功するには、大きく3つの課題がある。

 まず1つめの課題は、「市場投入タイミングの遅れ」である。

 周知のとおり、現在のコンシューマー向けスマートフォン市場は、AppleのiOSとGoogleのAndroidに二分されており、激しいシェア争いをしている。Windows Phone 7.5は確かに完成度の高いOSであるが、端末メーカーやアプリ・コンテンツ企業に新たな開発投資を求めるには、“遅きに失した”感は否めない。

Photo 富士通東芝モバイルコミュニケーションズやNokiaなど、一部のメーカーがWindows Phone 7の採用を表明しているが、果たしてほかのメーカーに採用の動きは広がるのか

 特にハードルが高いのが、端末メーカーだ。

 独自OSを採用するAppleとRIM以外の端末メーカーは、すでにGoogleのAndroidに多くの開発リソースをかけており、実装やチューニング(最適化)のノウハウも蓄積している。いくらWindows Phone 7.5のクオリティが高くても、後発でシェアも低い新たなOSに投資することは、メーカーにとって大きなリスクだ。そのため、すでにAndroidスマートフォンでシェアを持つ端末メーカーほど、Windows Phone 7.5には本腰が入れにくい。

 現時点では、フィンランドのNokiaがWindows Phone 7.5の全面採用を決定しているが、同社は2008年に日本市場からほぼすべての携帯電話事業を撤退。今年には富裕層向けブランド「VERTU」も日本から引き揚げた。こと日本市場という観点では、端末メーカー/ラインアップがどれだけ増えるのかは大きな課題になるだろう。

 実際、Windows Phone IS12Tでいち早くWindows Phone 7.5搭載機を導入したKDDIも「本音で言えば、他のキャリアにも(Windows Phone 7.5搭載機の)採用が広がってほしい」と話す。

 2つ目の課題は「国内ニーズへの対応」が難しいということだ。

 Androidスマートフォンでは“日本の市場規模(需要)が拡大したこと”と、“メーカーやサプライヤーの独自開発が進んだ”ことなどにより、すでに赤外線通信やワンセグ、おサイフケータイといった日本市場の共通ニーズへの対応が進んでいる。一方、Windows Phone 7.5は後発であり、当面は日本だけで大きな需要が見込めないことなどもあり、これら日本独自のニーズへの対応が十分にできていないのが実情だ。

 AppleのiPhoneは、ブランド力とデザイン性の高さで“日本市場のニーズ”にすべて応えなくても市場競争力があるが、その他のスマートフォンはそうはいかない。Windows Phone 7.5搭載のスマートフォンが、すでにAndroidスマートフォンでは実現している日本市場のニーズに対応できていないのはかなり不利な状況である。おサイフケータイをはじめとする国内ニーズへの対応は、特にAndroidスマートフォンとの競争において急務といえる。

 そして、3つ目の課題は、日本市場では「Xbox 360との連携」が、あまり優位性にならないことだ。

 先述のとおりWindows Phone 7.5はXbox 360のノウハウが生かされているだけでなく、アプリの開発環境やオンラインゲームの仕組みの多くが、Xbox 360と共通化されている。これによりゲーム開発企業は「Xbox 360とWindows Phone 7.5」の両方にゲームの開発が可能であり、両者を連携させた新たな遊び方も提案できる。またユーザーも、今まで使用してきたXbox Liveのアカウントサービスを、そのままWindows Phone 7.5で利用できるというメリットがあるのだ。

 MicrosoftのWindows Phone 7.5普及計画では、“Xbox 360の市場をブースターとして使える”ことを、AppleやGoogle陣営に対する優位性にしている。Xbox 360のシェアが高い地域であればあるほど、コンシューマー市場への普及がしやすくなるのだ。これはXbox 360の人気が高い欧米市場では、とても有効な戦略である。

 しかし、日本市場を翻ると、国内の家庭用ゲーム機市場は任天堂の「Wii」と、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PS3」が強く、Xbox 360の人気はいまひとつだ。特に日本の一般コンシューマー市場のトレンドを牽引する女性層に、Xbox 360はまったくといっていいほど売れていない。本来はかなり有効なはずの「Xbox 360というブースター」が使えないのは、Windows Phone 7.5にとってかなりの痛手である。Microsoftが本気でWindows Phoneを日本市場で成功させたいのなら、同OSとあわせて、Xbox 360もしっかりとマーケティングする必要があるだろう。


 若干厳しい見方もしたが、今回のWindows Phone 7.5は、スマートフォン向けOSとしての素地はとてもよい。だからこそ、過去のWindows MobileやWindows phoneのように「ニッチ市場向けで終わる」という結果にならないでほしいと思う。日本市場での普及は北米や欧州市場以上に苦しい戦いになるだろうが、Microsoftそして日本マイクロソフトにはぜひマス市場を狙ってもらいたい。積極的で、なおかつ息の長い取り組みに期待したい。

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