「“慣れる”と気持ちよくなってくる」Windows Phone 7.5──PCと共存するスマートフォンという考え方

» 2011年07月28日 00時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

「じわじわ来る」スマートフォンの新たな選択肢

photo 左から、富士通東芝モバイルコミュニケーションズの大谷信雄社長、KDDIの田中考司社長、日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 「最初の1、2日は取っつきにくい。ただ、慣れるとじわじわ気持ちよくなってくる」。KDDIは、Windows Phone 7.5をOSに採用するスマートフォン「Windows Phone IS12T」を発表、2011年9月以降に発売する。

 Windows Phone 7.5は、国内でのデバイス投入が見送られたWindows Phone 7の次期バージョンとしてリリースされるモバイル機器向けのOS。Windows Phone 7より500以上の機能追加、対応言語の強化(5→21言語)、Windows Marketplaceを35カ国/地域まで拡充したほか、タイル状に情報を表示するホーム画面「ライブ・タイル」や左右方向への操作も自然に行える「パノラマUI」、独自の日本語入力環境など、iPhoneやAndroidスマートフォンとは異なる操作スタイルで、ユーザーの「心地よさ・軽快・つながり」に結び付く工夫を取り入れた。

 “PC/Windowsの機能を携帯機器でも”とうたった過去のWindows Mobile搭載デバイスと大きく異なるのが「スマートフォンでの使い勝手を最重視」したコンセプトにある。Windows Phone 7.5搭載スマートフォンはPCの代替とするものではなく、PCやXbox、テレビ機器なども含めてネットワークにつながるデバイスそれぞれの機能を補完し合い、インターネット環境とソフトウェアをWindows Liveサービスでシームレスにつなぐ機器の1つとして展開するという考え方だ。

photophoto Officeファイルの扱いは他スマートフォンでもできないことはないが、OSの機能としてOfficeを標準搭載する点が異なる。クラウドストレージと複数のデバイスを連携・共有する利用シーンももはや新しいものではないが、標準機能ならではの、その存在も感じさせないような自然な使い勝手の実現を目指したという。なお、有線での映像出力機能は持たないが、無線LAN経由でDLNAクライアント搭載テレビ/PCなどでコンテンツを再生するDLNA対応「リンクキャビネット」機能を備えている

 国内第1弾として投入する「Windows Phone IS12T」(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製)は、幅59ミリ×厚さ10.6ミリ(最薄部)、重量約113グラムの薄型軽量ボディに800×480ドット表示に対応する3.7型ワイドの静電タッチパネル付き液晶ディスプレイを採用する。プロセッサはQualcommのSnapdragon MSM8655/1GHz、メインメモリは512Mバイト、32Gバイトのフラッシュストレージ(利用可能容量は約28Gバイト)。通信機能に、下り最大9.8Mbps/上り最大5.5MbpsのWIN HIGH SPEED(EV-DO Rev.A)とIEEE802.11b/g/n準拠の2.4GHz帯無線LAN、Bluetooth 2.1+EDRを搭載する。

 月額料金は、auのスマートフォン向け(ISシリーズ向け)料金プラン・パケット定額プランに準じ、Windows Phone専用のプランは特に用意されない。パケット定額プランとして、390円〜5985円/月のダブル定額スーパーライト、5460円/月定額のISフラットなどに加入できる。

 ブラウザはInternet Explorer 9ベースの技術を盛りこみ、グラフィックスアクセラレータとともにHTML5もサポートする。IS12TはInternet ExplorerのTest Driveサイト「FishIE Tank(Mobile向け)」で47fps前後とかなり優秀なレンダリング速度を示しつつ、スクロールや拡大/縮小、タブ切り替えといった一般的なWebサイト表示操作も非常にスルスル快適に動作する。

IS12TでInternet ExplorerのTest Driveサイト「FishIE Tank(Mobile向け)」を表示
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 また、OSの機能の1つという考えでWord/Excel/PowerPoint/OneNoteの基本機能を包括したOfficeをプリインストールする。Office 2010を含むこれらオフィススイートアプリケーションで作成したファイルの表示はもちろん、編集も可能。容量25Gバイト分が無料を使えるオンラインストレージ「SkyDrive」やSharePointOffice 365サービスなどと、ユーザーはあまり意識せず自然に連携・同期しながら活用できる。SkyDriveへ保存(あるいは手動アップロード)したファイルは、インターネットに接続されたPCあるいはスマートフォンで、あたかもいずれのローカルにあるファイルを開くように扱える。表示の互換性は「かなり大丈夫」(説明員 プリインストールフォントにはやや限りがある。未インストールの使用フォントは置き換わる)、ちょっとしたマクロやVBスクリプトなども動作可能だという。

 これらOfficeデータ以外に、People、Pictures、Games、Music+Videos、Marketplace、6つの「ハブ」という概念を設け、それぞれ数多く存在していたアプリケーションの機能やサービスをこのハブでシームレスに連携させる仕組みを取り入れた。例えば「Peopleハブ」は、FacebookとTwitterのソーシャル機能をOSに融合し、アドレス帳、着信確認、投稿・コメント内容といった“人”単位の情報をまとめて確認できる。「アプリを立ち上げるというより、どんな目的で使うかを想定した自然な操作感で使えるUIとしている。自分の優先順位に沿って適宜カスタマイズもできる。これはWindows 8など今後のOSでも統一的な考え方として採用していく」(日本マイクロソフトの樋口社長)

Windows Phone 7.5のメトロデザイン、Peopleハブ、独自の日本語入力「カーブフリック入力」などの操作感、動作レスポンスのデモンストレーション
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photophoto これまでのアプリケーションという単位ではなく、人や写真、ゲームといった単位で情報を集約して表示する「ハブ」という概念も、使うとなるほどと思えるUI

 KDDIの田中社長はWindows Phone 7.5搭載のIS12Tについて「最初の1、2日はかなり取っつきにくい。ただ、それを過ぎるとじわじわ気持ちよく使えるようになってくる」と使い勝手に関する感想を述べたが、これまでのPCあるいはスマートフォンで慣れていた「サービスを使うためにアプリケーションをまず起動する」という概念をスパッと取っ払ったUIのため陥った感覚だったと思われる。

 Officeデータの編集なども担う日本語入力環境は、カーブフリックと呼ぶ独自の日本語入力スタイルを用意する。iOSなどのフリックスタイルと似てはいるが、濁点のある文字も1フリック操作入力できる工夫を取り入れている。

 ただ、IS12TはBluetoothは搭載するものの、HIDプロファイルには対応しないため、外付けのBluetoothキーボードやマウスは基本的には活用できない。こちらは少し残念だ。ついでに画面キャプチャーも著作権保護の観点で機能しない(開発環境でない一般利用時はキャプチャーできない)。カスタマイズして遊べる要素が多かったWindows Mobileとは少し異なり、OS側で制限をかけている部分はやや多めのようだ。

photophoto 「アプリケーション開発者、メーカー、通信事業者からなるエコシステムも重要。Windowsで培ったMS製品群・サービス群とさらなる連携強化も図り、MS資産を総動員する考え」(日本マイクロソフト樋口社長)


 Windows Phone 7.5搭載スマートフォンは「これにしかできないのは何か」と問われると疑問符は浮かぶ。「そんなことはiPhoneやAndroidスマートフォンでもできる」確かにそうだ。

 ただ、Windows Liveサービス群をかなり自然に、シームレスに連携できる点、スルスルと快適に扱えるユーザーインタフェースや操作感の心地よさは、少しデモ機に触れただけでもWindows PC利用者として「確かにじわじわ来る」と感じられた。

 「これだ!」と決め手になるポイントはまだぼんやりしているが、ユーザーニーズに応じて細分化されつつある国内のAndroidスマートフォンより「どう連携して活用するか」「で、何に使うのか」の点で、PCやネットワークを軸にした活用例を思い描きやすい。出遅れたと言ってもスマートフォン市場はこれから本格成長期に入るところ。新世代の通信規格を内蔵、980円/月からのb-mobileSIMが使える通信事業者からも登場してほしい、もっとぶっ飛んだ仕様のモデルは出ないかなどと妄想しつつ、まずは国内初号機の、ある意味無難な仕様のIS12TでWindows Phone 7.5がどうユーザーに受け入れられるか、今後の様子を見守りたい。


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