トレンドマイクロは7月31日、コンシューマービジネスにおける新しい分野の取り組みについて、事業戦略説明会を実施した。1998年に設立された同社は、これまでPC向けセキュリティソフトを主軸としたコンシューマー事業を展開してきたが、今後はユーザーの利便性を追求する、より広範なソリューションを提供していくという。
説明会の冒頭に登壇したトレンドマイクロの大三川副社長は、デジタルライフスタイルの大きな変化として、クラウドやソーシャルネットワーキングに代表される、情報の新しい利用形態や、多岐に渡るデジタルデバイスの普及を挙げ、今後は「顧客がITを意識することなく、自由で安全に情報を利用できる環境を提供する」として、現在の事業領域を拡大する方針を明らかにした。
具体的には、「デバイス」(ウイルス対策)、「データ」(データ紛失・盗難防止やデータ整理)、「プライバシー」(プライバシー保護)、「ファミリー」(ペアレンタルコントロール)の4分野で展開し、クラウドベースの写真管理・共有サービスや、モバイル向けデータバックアップなど、「デジタルライフスタイル支援サービス」を包括的に提供していく。また、事業戦略の刷新にあわせて社内の組織を変更し、新たにホーム&マネージメントとビジネスデベロップメントという2つの部署を設立する。同社はこれらの施策により、2014年に550億円(2011年比25%増)、2016年に650億円(2011年比45%増)の総売上を目指す。
続いて、新規分野の開発責任者に就任したコンシューマーマーケティング部統括部長の吉田健史氏が登壇し、新規サービスの具体例として2つのデモを行った。
1つ目は写真管理サービスについて。PCやスマートフォン、タブレットなど、個人で複数のデバイスを使い分けている環境では、データが分散しやすく、データが増えれば増えるほど、写真などのデジタルコンテンツを管理するのが難しくなる。また、ローカルだけにデータを保存していると、自然災害などで失われる可能性もある。
吉田氏は、iPhoneで撮影した写真がクラウドを通じて簡単に同期される例(フォトストリーム)を挙げる一方で、「Androidでも同等のソリューションはあるが、PCリテラシーが高い人でないと利用は難しい」と指摘。今後同社が展開するサービスによって、デジカメやAndroid端末で撮影した写真が、ホームネットワーク上で自動的に同期され、PCや大画面テレビといったほかのデバイスで簡単に閲覧できる様子を示した。
もう1つは、すでに同社がβ版(先行無料体験版)として展開しているパスワード管理ソフト「パスワードマネージャー」についてだ。現在、オンラインショッピングや航空機のチケット予約、ネットバンキングなどは日常的に利用されているが、サービスごとにIDとパスワードを管理するのが面倒だと感じている人もいるだろう。パスワードマネージャーを使うことで、複数のIDとパスワードをクラウド上で管理し、1つのマスターパスワードで各種Webサービスを簡単に利用できるようになる。
吉田氏は「個人が管理するパスワードは平均で18個」という調査結果を示し、「セキュリティレベルを上げると利便性が下がり、かといって(パスワードを)簡単にするとセキュリティレベルは下がってしまう。この相反するものを1つにしていく。これまでトレンドマイクロは『ウイルスバスターの会社』と言われてきたが、これからは『複雑なセキュリティを簡単に解決する会社』を目指していく」と述べ、「(面倒なことはトレンドマイクロにまかせて)あとは、楽しむだけ。」という新しいスローガンを紹介した。
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