新世代サービス「WiMAX 2+」の強みと弱み“速度制限なし”はWiMAXだけ、220Mbpsで業界最速を奪還(2/2 ページ)

» 2013年09月30日 19時30分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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既存WiMAXサービスに対するデメリットを考える

 3つの高速モバイルデータ通信サービスをシームレスに利用できること、使用料を定額3880円/月(当初の2年間は)としたこと、そして近い将来下り最大220Mbpsの高速サービスに発展する道筋ができていること──など、WiMAX 2+に期待すべき点は多々あるが、既存WiMAXサービスと異なる仕様もいくつか存在する。

photophoto SIMカードで契約情報を管理する仕組みに変わる。これによりメリットもあるが、WiMAXサービス“ならでは”だったサービスのいくつかが非対応となってしまう。APNは「Internet」というものが登録されていた

 まず、WiMAX 2+は契約管理に「SIMカード」を使うスタイルとなった。SIMカードは他社通信事業者のスマートフォン/通信機器全般でおなじみのものだが、WiMAX 2+も同じようにSIMカードで通信契約を管理する。これまでのWiMAXは、機器個別のMACアドレス(など)で管理していた。

 この変更により、一般的なスマホと同じように機器の使い分けはSIMカードの入れ替えでできるようになる一方、WiMAXサービスならでは特に大きな魅力だった「機器追加オプション」(同一契約で最大3台の機器を登録できるオプション)や、複数台同時に使える「WiMAXファミ得パック」などサービスは事実上使用できなくなる。

 SIMカードスタイルでの「同一契約で複数台」の手段としては3G/LTEのMVNOが採用する「3枚までSIMカードを提供」といったサービスがすでに存在するが、WiMAX 2+は現時点、同一の契約に複数枚のSIMカードを提供する計画はないという。

 また「白ロム」機器の入手や運用もしにくくなる、というか入手性はよくあるスマートフォンと同様になる感じだ。WiMAX 2+機器は原則としてSIMロックを施して出荷するようだ。発表会の展示機はauのロゴが入ったMicro SIMカードが差してあったが、WiMAX 2+対応機機はSIMカードを機器から抜くと、WiMAX 2+接続はもちろん、「ノーリミットモード」な既存WiMAXネットワークでも使用できなくなる。SIMカードに契約情報が記録され、それで管理する仕組みのためだ。

photophotophoto iPhone 5とサイズ感を比較。超薄型化が進んだWiMAXルータと比べるとやや厚めだが、“トライブリッドの性能ならばこれでもいいかという感じで悪くはない。ソフトウェアはカスタマイズされたAndroidベースのもののようで、(ユーザーカスタマイズはできないが)タッチ操作で各種情報や設定項目にアクセスできる。意外にもQi充電に対応するのもよさげ。Qi充電器は付属せず、別売りとなる(au標準オプションのQi充電器はUQショップでも販売するという)
photophotophoto ノーリミット(WiMAXのみ)/ハイスピード(WiMAXとWiMAX 2+)/ハイスピードプラスエリア(WiMAX 2+とau 4G LTE プラス1055円/月) 3つの通信モードを切り替えて運用できる。なにげに、スマホなどの外部USBバッテリー「USB給電機能」も備わっている。7Gバイト制限の対応のため、通信量カウンターも実装する
photo WiMAX 2+をノートPCで通信する実動デモ。現時点の上限値ほぼいっぱいの「下り103Mbps」が出ていた(HWD14とノートPCは、Wi-FiではなくUSB接続している)。ただ、PC内蔵化は現時点計画にないようだ

 もう1つは「WiMAX内蔵PC」。WiMAXユーザーには、ノートPCでは内蔵WiMAXモジュールにて、機器追加オプションでルータも追加してスマートデバイスとも併用するといった人もかなりいたと思われる。WiMAX内蔵PCの特に喜ばしかった利便性が「PCを開けば、(WiMAXも自動認証→接続され)そのままネットにつながっている」を実現できることだった。Wi-Fiルータを使うスタイルも、Wi-Fi接続設定は済ませつつルータの電源さえ入れてあればほぼ同じ使い勝手ではあるが、PC内蔵モジュールはサイズ的にアンテナ利得も比較的得やすいうえ、PCとルータ、それぞれのバッテリー残量を考慮しなくてよい。スマートデバイス用に別途ルータ機器が必要としても、機器追加オプションを活用すれば比較的低価格に複数台まとめて1契約にて運用できた。WiMAX内蔵PCを好んで使う利点はいくつかあったのだ。

 なお、これまでのWiMAX内蔵PCではインテル製のWi-Fi+WiMAXコンボモジュールが多く採用されたが、WiMAXではなくLTEを推進する傾向のインテルの状況などを含め、WiMAX 2+内蔵PCが登場する可能性は現時点かなり低いとみられている。

 というわけで、WiMAX 2+サービスは既存WiMAXサービスと互換性はあるが、SIMカード方式の採用によりWiMAX内蔵PCとは残念だが併用できない。PCの内蔵WiMAXモジュールで使い続たいなら既存WiMAXサービスのまま契約し続ける必要がある。

photo WiMAX 2+、3モードの料金詳細

 最後に契約スタイルについて。WiMAX 2+の料金プラン「UQ Flatツープラス」はこれまでの1年契約から「2年契約」に、つまり、他社と同様の事実上「2年縛り」となった。

 WiMAXは、当初「契約年数縛りなし」の4480円/月(UQ Flatなど)からはじまり、追って1年契約で月額料金を下げた3880円/月のプラン(UQ Flat 年間パスポート)を追加した。2013年9月現在、定額モバイルデータ通信における「3880円/月」は他社も追随する先駆け的でいわば標準的な値付けだが、さておきWiMAXはデータ通信サービスを比較的「契約解除料金の不安なし」に利用しやすかったのがユーザーの心理的に好ましいところだった。

 また、これは通信事業者にとっては好ましいことではないのは理解しているが……、このため1年ごとに解約→新規契約をして「ルータ/機器を1年ごとに新機種に換えられる」のも利用者として喜ばしかった。2年縛りの契約となれば、新規契約によって受けられる特典の質やキャッシュバック額も上がると思われるし、もちろん今後2年はWiMAX 2+を使い続けても陳腐化はしないはず……と期待はしているが、「そのとき、自身に最良のデータ通信サービスを使いたい」と思うユーザーの利便性を欠く可能性が高まったことは否めない。



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 以上、WiMAX 2+は現サービスと比べた変更点もいくつか存在するが、速度の大幅向上やマルチネットワークで利用可能など、期待したいメリットは多々ある。

 10月31日のサービスイン、そしてまずは2013年度末時点でどこまでエリア化が計画通り進むか。そして今後は「2年縛り」がひとまずの契約条件になるため、LTEかWiMAX 2+か、それともAXGPなどか、どれが自分に向くサービスかの見極めは楽しくも、いっそう難しく悩ましいものになりそうだが、ともあれWiMAX 2+の展開には大いに期待したい。


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