「全てのドラクエに堀井雄二さんがいる」――キーマンが語る「ドラゴンクエスト」のスマホ展開(前編)スマホアプリの最前線(2/2 ページ)

» 2013年12月25日 10時00分 公開
[村上万純,ITmedia]
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タッチパネルは、押しても気持ち良くない

―― フォントが滑らかなのも印象的でした。ドットのままにしなかった理由はありますか。

三宅氏 音楽も絵もフォントも全てそうなんですけど、あまりクラシックすぎると、今見ると、とても違和感があるんです。思い出の中ではきれいな音楽やフォントだったりしますが、実際に今見るとびっくりすると思います。

藤本氏 最初は良いかもしれませんが、だんだんと文字を読むのが辛くなると思います(笑)。

―― 画質の調整はどうしましたか。

三宅氏 スマホは機種によって画面の大きさや解像度が違うので、そこはゲーム機と違って難しいところです。どの端末に最適化するのか、という話になるので。

藤本氏 解像度はプレイステーション2(以下、PS2)よりスマホの方が高いですからね。ドラクエVIIIも、よりきれいに見えるようになっています。

―― ドラクエIのセーブ方法は、オートセーブやメニュー画面からの中断のほか、王様に話しかけて冒険の書を付けられますが、どういう経緯で今の形になったんですか。

photo 「音楽は容量も大きく、作り直す量も多いので時間がかかっています」と藤本氏は言う

藤本氏 いつでもセーブできるように中断セーブを用意しました。また、中断セーブをする時間がない時もあると思いますので、ホームボタンを押してゲームを終了させるオートセーブ機能も付けました。王様に話しかけるのは古き良き伝統なので、わざわざ削る必要はないかなと。

三宅氏 いまどきセーブしにいくということ自体がなかなかないと思いますし。

―― 「ふっかつのじゅもん」を採用することは考えなかったんですか。

藤本氏 可能なんですけど、文字打ちたくないですよね(笑)。

三宅氏 ゲーム機のコントローラーに付いてるボタンって、押すと気持ちいいんですよ。でも、タッチパネルは押しても気持ち良くないんです。だから、なるべく押さなくて済むようにしました。

藤本氏 ドラクエVIIIは、目的地まで自動で走る「AUTO」ボタンやAI(人工知能)での戦闘なども実装し、タッチ回数を減らしています。

―― 音楽はスマホ向けにアレンジしたんですか。

藤本氏 今後配信が予定されているタイトルの分も含めて、音楽は歴代の300曲くらいを全部作り直しています。すぎやまこういちさんもスマホに特化した音源を鳴らすことにこだわっていて、開発面でも時間をかけている部分です。

―― スマホ向けに提供するにあたって、データ容量の問題をどう解決しましたか。

藤本氏 ドラクエVIIIが一番容量が大きくて、まだ開発中だった半年前までは2.5Gバイトもあったんです(笑)。それを1.2〜1.4Gバイトくらいまで落としました。スマホ向けのドラクエI〜VIIIは合わせて6Gバイトくらいになると思います。全てインストールしても、今のスマホなら問題なく保存できる容量です。実は、ドラクエIは30Mバイトでそのほとんどが音楽データだったりします。

三宅氏 ゲーム機は、ゲームを面白くきれいに見せるという意味ではよくできていて、スマホとは全然違うなと再認識しました。PS2の3Dゲームをスマホで動かすのは最後の最後まで本当に苦労しました。

ドラクエらしさ=分かりやすさ

―― 「ドラクエ」シリーズ全タイトルに共通するコンセプトはありますか。

三宅氏 分かりやすさです。説明書を読まなくても、遊んでいるうちにいろんなことを覚えていって、どんな人でも最後にはラスボスを倒せるという。そういう面での修正は堀井さんが本当に細かいところも含めて全タイトルを監修しています。根本にあるのは堀井さんという個人で、堀井さんが遊びやすい、分かりやすいと思うかです。みなさんが思っている以上に、何から何まで堀井さんに見ていただいてます。

―― 既存のドラクエユーザーと、ドラクエを知らないユーザーの両方を満足させるために、どんなことを重視しましたか。

三宅氏 全く遊んだことがない人たちでもすぐに遊べて、既存ユーザーも満足ができるように、というのはゲームを作るときにいつも心がけていることで、それは今回のことに限りません。

 ドラクエは年齢層でユーザーを見ていません。むしろ、スマホでほかに何をやってるかといった環境面の方が重要ですね。イメージとしては「男子中学生」。大人の方でも中学生の時の気持ちで楽しめるものとして作っています。


 前編では主にゲーム作りの観点から話を聞いたが、後編ではスマホ市場でのゲームの売り方・見せ方というビジネス的な側面に焦点を当てていく。

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