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» 2014年02月28日 13時53分 公開

Mobile World Congress 2014:NFC+SEは必須事項ではない――「モバイルペイメントの次」に向けて動き出した携帯業界 (2/2)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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クラウドペイメントの時代へ

 以上がHCEの簡単な概要だが、こうした仕組みは「クラウドペイメント」とも呼ばれ、決済の実体はあくまでクラウド上に存在し、NFCによるタッチ操作やPayPalによる店頭での支払いなどは、その決済トリガーを引いているに過ぎない。従来の内蔵SE+NFCによる決済方式の普及に暗雲が漂い始めた1〜2年前から注目を集め始め、前述のSquareやPayPalの台頭につながったり、Appleがクラウドペイメントで決済市場への参入を画策していると報じられたりと、最近の動きへとつながっている。

 実際、AppleはiBeaconを使って買い物客を店舗へと誘導し、実際の決済はクラウド経由でクレジットカードを提示しての引き落とし……といった仕組みを模索している可能性が高いといわれる。一方で内蔵SE方式とNFCを組み合わせたGoogle Walletでの市場参入を進めていたGoogleだが、事実上の同サービス失敗を受け、しだいにクラウドペイメントへと舵を切り始めたようだ。その現れが今回のメインテーマである「HCE」であり、理想と現実の狭間で考え出した最適解だったと思われる。これに関して、NFC関係で取材した複数の関係者が同じ感想を漏らしていた。

 筆者にとって驚きだったのは、今回のMWC 2014開催に合わせてクレジットカード会社のVisaが出してきた「HCEを全面サポートする」というプレスリリース(外部リンク)だ。これまでHCEは実験的なものと認識され、筆者が把握している範囲でもカナダのファストフードチェーンであるTim Hortonsが、自社のペイメントカードにHCEを採用したというニュース(外部リンク)があるだけだ。これはAndroid 4.4がリリースされて2カ月後の2013年12月のこと、Tim Hortons自体はBlackBerryでの利用をまず想定していたようだが、それからさらに2カ月後にカード会社最大手の1つであるVisaがHCE対応を表明してきたのは非常に大きな意味を持っていると考えている。

 もう1つのホットトピックは、MasterCardが前述C-SAM買収を発表(外部リンク)したことだ。C-SAMはモバイルウォレット技術開発では最大手で、世界的にみてもシンガポールのStarHub、米国のIsisといった大手での採用例が知られている。日本では大日本印刷(DNP)が代理店となっている。MasterCard自身は「MasterPass」と呼ばれるC-SAMの技術をベースにしたモバイルウォレットサービスを世界4カ国(米国、カナダ、英国、オーストラリア)で展開しており、これは間もなく日本でも登場が見込まれている。これについて日本のマスターカード マーケット・デベロップメント 上席副社長の広瀬薫氏に話をうかがったところ、MasterCardがモバイルウォレットを独占するという意図はなく、あくまで既存の出資ベースを拡大して開発や展開を加速する目的があるという。日本のDNPをはじめ、既存顧客との関係もそのまま維持されるようだ。重要なのは、クレジットカード会社として「現在キャッシュで行われている取引をクレジットカードへと誘導し、利用率を引き上げる」ことにある。モバイルウォレットはその先兵というわけだ。

 MasterPassはウォレットサービスの一種で、登録したクレジットカードでの支払いのほか、クーポンやストアカードの管理など、財布に入れられている各種カード情報を一元管理し、スマートフォン等を使って簡単に持ち歩けるようにすることを目的としている。

 登録できるクレジットカードもMasterCardだけでなく、VisaやAmerican Express、Discoverなど複数のカード会社のものをサポートし、決済方法もSE+NFCだけでなく、オンラインショッピングでのMasterPassアイコンのクリックによる一発決済やQRコードのスキャンによる支払いなど、さまざまな方法が利用できる。仕組み的にはiPhoneのようなNFC機能を持たないスマートフォンや、普通のPCでも利用でき、あくまで情報をMastePassが一元管理しているに過ぎない。ただし現状でMasterPassがサポートしているのは、オンラインのショッピングサイトにおける一括決済のみで、クレジットカード情報を逐一入力することなくMasterPass経由で安全に決済できるというものに限定されている。各種決済手段については、今後順次サポートされていくとMasterCardでは説明している。ゆえに、現在では楽天子会社のBuy.comなど、MasterPass

での支払いに対応するショッピングサイトを増やすことが課題となっている。

photo MasterPassを使った新しい商店システムのデモ。店頭のPOSにQRコードを表示し、それをMasterPassアプリの入ったスマートフォンでスキャンすることで支払いを行う。NFCを持たないiPhoneでも利用できる仕組みだ

 MasterPassの特徴の1つは、前述の「クラウドペイメント」の仕組みそのものという点にある。SIMカード経由の決済で携帯キャリアがモバイルペイメントを行うアプリの管理を統括するという状況から、クラウドサービスを提供する各社が決済や関連情報を自社のサービスへと集約するトレンドの変化だ。ただし1社独占というわけではなく、複数の業界プレイヤーらが先の展開を模索しているような状態だといえる。これは、縄張り争いによって普及が阻害されてきたという反省から、比較的オープンに、まずは普及を優先させるという業界全体の意図が感じられる。実際、GSMAでこれらプロモーションを主導するデジタルコマースプログラム担当シニアプログラムディレクターのJames Heaphy氏は「NFCにこだわることなく、HCEからさまざまな決済手段を模索していきたい。iBeaconのような仕組みとも共存できる」と強くコメントしており、「まずは普及から」という目標に向かって一致団結しつつある印象を受けた。

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