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» 2015年08月14日 13時46分 公開

佐野正弘のスマホビジネス文化論:韓国で人気のソーシャルギフト、日本での普及には何が求められているのか (2/2)

[佐野正弘,ITmedia]
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スターバックスのソーシャルギフトに向けた取り組みとは

 では、実際にソーシャルギフトを導入している企業は、どのような経緯でこれを導入し、実績を出しているのだろうか。スターバックスコーヒージャパンのマーケティングカテゴリー本部 WEB/CRMグループ マネージャーの長見明氏からは、同社のソーシャルギフトサービス「Starbucks eGift」を提供した経緯と現在の状況について説明があった。

photo スターバックスコーヒージャパンの長見氏

 スターバックスでは2011年よりより前からソーシャルギフトを提供する検討を始めていたとのことで、「人と人との間にコーヒーの存在があるのは素晴らしいと思っていた。そうしたことをオンラインでできないかと考えた」(長見氏)ことが、そのきっかけになるという。同社では2013年にクーポンシステムを立ち上げたことから、それに決済機能を付ける形で、2014年に自社サイトでソーシャルギフトサービスを展開するに至ったのだそうだ。

 そうして立ち上げられたStarbucks eGiftでは現在、ドリンクの引換券付きオンラインメッセージを500円で販売している。それゆえ500円を超えた料金分は受け取った人が負担する形となる。引換券を一律の料金にした理由について、長見氏は「毎日会っている人でもない限り、贈り先の相手が何を飲みたいか分からないことから、このような仕組みに落ち着いた」と話している。

photo Starbucks eGiftの仕組み。デジタルのギフトカードとドリンク引換券のセットで、500円で販売しているとのこと

 現在、スターバックスでは自社サイトのほか、gifteeなどいくつかのソーシャルギフトサービスで、このギフトサービスを提供している。そして長見氏によると、自社サイトでの実績に限った場合、2014年4月からの1年で約2倍に増えているとのこと。「元々マーケットがある訳ではなく、3年位は赤字かと思っていたが、すでに単月で黒字が出ている状況。こんなに伸びるとは思っていなかった」(長見氏)と、想定以上にマーケットが伸びていると捉えているようだ。

photo Starbucks eGiftの売上推移。すでに1年前の倍の水準に達しているとのこと

 さらに長見氏は、自社でサービスを展開する上で、ある傾向が見えてきたと話す。それは「アクセスが増えても、贈る相手がいなければアクションしてくれないので、単に集客するだけでは売上が上がらない」ということ。実際、ソーシャルギフトが多く利用されているのは、クリスマスやバレンタインデー、ホワイトデーなど物を贈り合うイベントが多い12月から3月にかけてが最も多く、それ以外では誕生日の利用が多いとのことだ。

 長見氏はソーシャルギフトについて、「人と人とがつながるところでビジネスを生み出し、ブランド価値を上げることにもつながる。とても好循環をもたらす存在になってくれるのではないか」と評価。特に小売業との親和性が高く、普遍的なサービスになり得るのではないかと見ているようだ。

国民性の違いをサービスに取り込めるか

 各社が伝えているように、ソーシャルギフト市場は順調な拡大を見せ、プレーヤーも増加傾向にある。だがその注目度が大きく高まっているかというと、まだそこまでではないというのが実際のところであろう。2014年に大きな注目を集めた“フリマアプリ”などと比べると、伸びや勢いは大きくないように見える。

 その要因として筆者が感じているのは、ギフトに対する国民性の違いだ。冒頭で触れた通り、ソーシャルギフトが人気を獲得しているのは韓国だが、同じ東アジアの国でありながら、日本と韓国では感情表現や贈り物、インターネットサービスの利用に対する考え方は大きく異なっており、そうした点は韓国の方がより積極的だ。例えば、最近韓国発で人気を獲得しているサービスとして「Between」に代表されるカップル専用コミュニケーションアプリがあるが、そうしたサービスが韓国で生まれ、人気となっているのも、韓国でスマートフォンの普及率が高く、しかも恋人同士が日常的、かつ積極的な愛情表現をしているからこそといえよう。

photo カップル専用コミュニケーションアプリとして日本にも進出している「Between」(Between Blogより)。愛情表現が積極的な韓国の国民性が、こうしたアプリを生み出したといえる

 それだけに、シャイな人が多く、個人間で贈り物をする習慣が弱い上、“手作り”などアナログ要素を含む贈り物がもてはやされる傾向が強い日本において、ソーシャルギフトが韓国と同じ形でブレイクするとは考えにくいというのが、正直なところだ。この点について、サービスを提供する側はどう考えているのだろうか。

 ギフティの代表取締役CEOである太田睦氏は、贈ることのできる商品や店舗の充実がその鍵になると見ているようだ。「サービス開始当初は店舗数が少なく、あまりリピートされなかった。POSの入れ替えが必要なことなどもあって難しい部分もあるが、コンテンツ自体が増えなければ韓国のようにはならないのではないか」と話している。

photo ギフティの太田氏は、コンテンツ面の充実が普及には不可欠と見ているようだ

 また長見氏は、「最初に旦那さんが奥さんにギフトを贈り、その後奥さんがヘビーユーザーになるという話はよく耳にする。女性の方が日常的にギフトのやり取りをすることか多いことから、ちょっとした心遣いで活用する機会が多くなっていくのではないか」と話す。また男性にも、ギフトは贈らなくても“奢る”という習慣があることから、「“ギフト”という言葉ではないところで(ソーシャルギフトへの)置き換えが進んでいくのではないか」(長見氏)とも考えているようだ。

 スマートフォンが多くの人に広まったことから、特に法人のギフト利用などにおいては、アナログの商品券などからソーシャルギフトへと変化していく可能性が高い。だが市場を一層広げるためには、やはり個人間でギフトする習慣を活性化させていく必要があるだろう。そのためには、日本人の贈り物に対する感覚や習慣を的確に捉え、それをサービスに反映させて利用シーンを増やしていくことが求められているのではないだろうか。

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