最近、「1台で全世界で使える!」「100か国以上の国をカバー!」といったうたい文句のモバイルWi-Fi(無線LAN)ルーターが増えています。
このようなルーターは「セカイルーター」ともいえるもので、SIMカードを別途用意しなくても世界中で通信できることが共通点です。一体、どのような仕組みで「SIM抜き」を実現しているのでしょうか? そして、そのメリット・デメリットは……?
セカイルーターがSIM抜きで通信できるのは、「クラウドSIM」という仕組みを採用しているからです。
その名の通り、クラウドSIMは「サーバ上にあるSIMカード」です。電源を入れると、セカイルーターは渡航・滞在先に合わせて最適なキャリア(オペレーター)を探して、そのキャリアのSIMカード情報をモバイル回線経由でダウンロードします。その後、クラウドSIMのデータを使って、モバイル通信を開始します。
この仕組み自体は、組み込み機器用の「eSIM(Embedded SIM)」と似ていますが(関連記事)、eSIMとは異なり物理的なSIMカードを内蔵していません。あくまで“仮想”のSIMカードということがポイントです。
セカイルーターの大きなメリットとして、ユーザーが物理的なSIMカードを意識せずに、世界各地のデータ通信が比較的安価に使えることが挙げられます。
海外でモバイル通信をする場合、現地のプリペイドSIMカードを購入して使うのが基本的に一番安上がりでした。しかし、セカイルーターの料金設定はプリペイドSIMカードのそれと近くなっています。場合によってはそれよりも安価な場合もあります。
例えば、韓国の短期旅行者向けのプリペイドSIMカードは、販売価格が日本円で3000円程度からです。それに対してグローカルネットの「GLOCAL NET」の料金体系では1日あたり800〜1600円(非課税)で使えます。短期間の海外旅行・出張であれば、セカイルーターの方が料金面で特に有利になることは多いです。
また、複数の国や都市をまたいで移動する時にも便利です。飛行機を空港内で乗り継ぐ場合は公衆Wi-Fiでも大きな支障はありませんが、空港を出て電車やバスなどで別の空港で乗り継ぐ場合、移動中の通信手段としてプリペイドSIMカードを……と思っても、時間やお金が惜しいものです。
このような場合でも、セカイルーターなら電源を入れてから短時間で利用開始できる上、複数国・地域にまたがって使ってもサービスに定める時間単位内であれば追加料金はかからず無駄なく使えます。大手キャリアが提供する国際データローミングサービスにある意味で近い特徴を持ちつつも、おおむね安価に使えるということも魅力なのです。
「世界各地を1台でカバー」という売り文句にもある通り、複数の国・地域をまたいで渡航する場合でも、その国・地域の数だけスマートフォンやルーターを用意する必要がないことも魅力です。
筆者は以前、複数の国を周遊して移動する際にモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスを利用しましたが、国ごとに4台のルーターを借りることになってしまいました。ルーターが4台ともなると、さすがにかさばってしまいます。その点、セカイルーターなら1台だけでOK。荷物を減らす意味でも便利といえます。
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