従来SIMから何が変わるのか? 「eSIM」の正体を知る(1/3 ページ)

» 2017年06月05日 15時27分 公開

 最近「eSIM」というキーワードを聞く機会が増えてきている。NTTドコモの2017年夏モデル「dtab Compact d-01J」は、同社としては初のeSIM搭載機種ということで話題になった。eSIMとは「Embedded SIM」の略称であり、その最大の特徴はSIMカードを抜き差しすることなしに携帯キャリアの契約情報を書き換えられる点にある。つまり、必要なタイミングだけ契約を行ってデバイスの携帯ネットワークへ接続開始したり、必要に応じてSIMの差し替えなしに別のキャリアに接続先を切り替えたりできる。

 こうした仕組みはApple SIM+iPadなどでおなじみだが、d-01Jのケースでは購入時にeSIMが本体に挿入されており、利用開始時に端末側から契約できる仕組みになっている。形状は通常のnanoSIMと同様だが、現時点ではeSIMは対応機種専用のものとなっており、非対応機種に移し替えても利用できない。

 さらに5月31日(台湾時間)、台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2017においてMicrosoftが「Always Connected PC(常時接続PC)」戦略を発表。LTEとeSIMを使ったPCの常時接続環境を推進していくとしており、より広範囲での活用が進みそうだ。

eSIM IntelとQualcommとの提携でLTE+eSIMによる常時接続PCコンセプトを発表したMicrosoft

 今回はこのeSIMについて理解を深めつつ、その狙いや将来性についての基礎情報を紹介していきたい。

eSIMはデータ通信専用、メインターゲットはM2M

 一般のSIMカードでは、あらかじめ契約情報をICチップに書き込んでおき、これを加入者が適切なデバイスに挿入することでネットワーク回線の利用が可能になる。ネットワークの制御そのものは携帯キャリアのセンター側で対応可能だが、SIMカード内の加入者情報そのものは固定化されているため、何らかの変更時や機能のアップデートに際してはSIMの差し替えが必要となる。一方でeSIMは基本的に差し替えを前提とした仕組みではないため、遠隔から加入者情報を書き換えられる。

eSIM eSIMと従来のSIMの違い(出典:NTTドコモ)

 また複数の加入者情報、つまり複数キャリアの加入者情報を同時に書き込むことが可能で、必要に応じて切り替えられるようになっている。例えば海外を訪れるユーザーが、OTA(On The Air)方式によって、事前に行き先のSIM情報を書き込んでおいたり、現地到着のタイミングで契約したりするなど、わざわざ携帯キャリアショップへ寄らずとも、ネットワーク環境さえあればすぐに通信できると思うかもしれない。

 こうした、必要なときだけ通信サービスを契約する仕組みのことを、Microsoftは「On The Go」と呼んでいる。だが現在のところ、こうしたスタイルでの利用は必ずしも全ての携帯キャリアやeSIMで有効ではなく、将来的な利便性向上に期待したいといったところだ。

 もう1つ大きな注意点として、現在のeSIMは「データ通信専用」ということを知っておく必要がある。eSIMはもともと組み込み機器、いわゆる「M2M」と呼ばれるIoTソリューション向けに開発が進められていた。例えばネットワーク接続が可能な工事機械などの産業機器を国外に輸出する場合、その国のネットワーク事情に応じて契約プロファイルを切り替える必要がある。

 通常ならSIMカードを差し替えることで対応するのだが、全ての機器に対してそうした作業を行うのは非常に手間だ。そこでリモートから契約情報を書き込んで一括管理できるソリューションとしてeSIMが登場する。今後は、IoTの進展で車や家電といったものが携帯ネットワークを通じてインターネットへと接続されるようになる。さらに小型のセンサーをネットワークとして構成するLPWA(Low Power Wide Area)の用途が広がると、従来のSIMの差し替えによるソリューションでは限界があり、さらにeSIMを必要とする場面は増えてくるだろう。

eSIM eSIMが主なターゲットとするM2Mの適用例
eSIM eSIMが登場した背景。チップ化して基板などに組み込むことで実装面積やデザイン面の自由度が上がる。特にスロットの実装が難しい小型組み込み機器で有効となる
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