3月21日にアメリカ・カリフォルニア州クパチーノで開催されたアップルのスペシャルイベントに行ってきた。
iPhoneSE、iPad Pro 9.7インチはネットで予想されていた内容であったため、さほど驚きはなかった。しかし、予想外で思わず、食い入るように確認してしまったのが、iPad ProがApple SIMを内蔵しているという点だ。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年3月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
実際、手元にiPad Pro 9.7インチがあるが、SIMカードスロットがあるのはもちろんだが、モバイルデータ通信の項目から新たに現地のキャリアのネットワークサービスを契約できるようになっている。
アメリカ滞在中は、iPad Pro 9.7インチのSIMカードスロットにドコモのSIMカードを指しつつ、Apple SIMの項目としてAT&Tやスプリント、T-Mobile US、GigSkyの設定画面が出てくるのだ。
プラスティックのSIMカードとは別に、いわゆる「eSIM」のモジュールが基盤に内蔵されているものと思われる。アップルではeSIMとは呼ばずに「Embedded Apple SIM」という名称にしているようだ。
今度はiPad Pro 9.7インチを日本に持ち込むと、KDDI、GigSky、AlwaysOnlineに接続できる項目が登場する。
これまでのApple SIMは、アメリカでiPadを購入した際に同梱されるか、アップルストアで500円程度で購入するしかなかった。日本でもようやく購入できるようになったが、わざわざアップルストアでSIMカードを購入するというのは結構面倒といえる。
実際、アメリカのアップルストアで「Apple SIM、ちょうだい」と店員にお願いしても「何それ、知らないけど」と突き返されることもある。Apple SIMが一般的ではないなか、iPad Pro 9.7インチから内蔵されたというのはかなりのインパクトがあるだろう。
日本から海外へ渡航する人とすれば、わざわざ現地でプリペイドSIMカードを調達しなくても、現地のプランで契約できる。また、海外から日本に訪れたユーザーとすれば、iPad Pro 9.7インチを持ち、日本に上陸したとたんにKDDIのネットワークを利用できるようになる。KDDIとしては、いち早くアップルに協力し、Apple SIM対応になったことはかなりメリットがあったといえるのではないだろうか。
アップルには是非ともiPadに閉じることなく、iPhoneやMacBookでも、Apple SIMを内蔵してもらいたい。海外渡航時にiPhoneでも現地の料金プランでネットに接続できるメリットは計り知れないはずだ。
業界を俯瞰すると、グーグルはMVNOサービス「Project Fi」により、世界各国でLTE接続により1GB10ドルという料金設定でローミングできるし、マイクロソフトもマイクロソフトSIMを準備しているという。
訪日外国人に向けて、MVNO各社がSIMカードを自動販売機や機内販売で取り扱い始めているが、アップルやグーグル、マイクロソフトが本気を出し始めると、MVNOの出番はなくなってしまうのかも知れない。
© DWANGO Co., Ltd.