―― キッズやシニア向けのサービスを伸ばしていく一方で、IIJや楽天などの大手と同じ土俵で比べられなくなっている印象も受けます。30〜40代のITリテラシーの高いユーザーに対しては、どう攻めていきますか?
石田氏 競争の激しい世界なので、そこに対する取り組みはもう少し後に出す予定です。例えばSIMを単体で出すかもしれないです。TONEはスペックシートで比べられないサービスを目指しているので、比較サイトでよく取り上げられないんですけど(笑)。そこでスペック勝負になるとレッドオーシャンになるので、ビジネスとして成り立たなくなります。
通信速度についても、TONEは遅いから動画が見られないのではなくて、動画を見るには別のチケットが必要だと。僕自身もTONE1台しか持っていないですし、電話もIP電話しか使っていない。チケットも1枚(1GB分)あれば、YouTubeを見ても足りるので。
―― そういう声をもっと広げてもいいのではと思います。
石田氏 そうですね。少なくとも、(Androidで)ハイスペックなマシンを使いたいという人のニーズはほぼ満たせると思います。
―― 一方で、最近はキャリアのサブブランドも伸びていて、MVNOの純増が鈍りつつあります。そのあたり、TONEに影響は出ていますか?
石田氏 あまり影響は受けていないですね。全体的に見ると、MVNOの解約率が高すぎる気がしています。解約率は1%弱じゃないと構造的に厳しいと思います。
―― TONEの解約率はどれぐらいですか。
石田氏 0.75〜1%なので、だいたい大手キャリアと同じぐらいですね。
―― 低いですね。これはどういう要因があると思いますか。
石田氏 弊社が実施している満足度調査を見ると、(サービス内容を)分かってご利用いただいている方が多いですね。
―― 特にどこが評価されていると感じていますか。
石田氏 家族向けの特殊な機能と、もう1つは「これでいいんだね」というところはあると思います。「無印(良品)」に近い感じじゃないですか。
―― 突出した何かがあるわけではないけど、全体的に使っていて心地よいと。今の状態は理想に近いですか?
石田氏 そうですね。いろいろなものがコントロールできています。
―― 逆に、ここをもう少し改善すべき、といった課題はありますか。
石田氏 IP電話に対して、漠然としたイメージがあるんですよ。「つながりにくい」とか。それを払拭(ふっしょく)しないといけない。TONEのIP電話は交換機までセットでやっているので、そんなことはないのですが。あとは「TONEは遅いんじゃないか」とか。
―― 通信速度は、実際どれぐらい出ますか。
石田氏 だいたい4Mbpsぐらいで、混むときで500〜600kbpsぐらい。
―― それは高速チケットを使っている場合ですか。
石田氏 いえ、それは関係ありません。高速かどうかという違いはないんですよ。(通信速度は)もともとは500〜600kbpsに上限を決めていたんですけど、この上限は撤廃しました。高速チケットでは動画が見られることしか違いがないので、「高速チケット」という名前は変えないといけないと思っています(笑)。また、YouTubeなどの動画を見ると、自動でチケットがオンになるので、手動で切り替える必要もありません。
―― 単純な通信速度という意味では、チケットを買っても買わなくても変わらないということですね。高速チケットで見られる動画は、YouTubeなどのストリーミングサービスですよね。
石田氏 そうです。ただ「TSUTAYA TV」の動画はチケット無しでも見られます。
―― ある種のカウントフリーですよね。
石田氏 動画以外はカウントフリーということです。
―― さすがに動画も使い放題にすると、コスト構造が崩れてしまいますか。
石田氏 結局、使う人と使わない人の差って、動画でしか起こらないんですよ。PCだとファイル共有のような機械的なトラフィックがものすごく大きかったんですけど、スマホだとまだそれがない状態で、動画しか差がありません。
―― 動画はチケットを購入すると見られるとはいえ、お昼時の混雑した時間帯でもちゃんと見られるのでしょうか。
石田氏 見られます。1000円の中でサービスを提供するKPIと動画(高速)チケットのKPIは違います。大きいのは、動画チケットは粗利がほぼゼロであることです(その分、トーンモバイルが負担している)。あくまでピークを低減するための施策なので、そこで利益を上げる構造にはしていません。(動画を)使うユーザーの通信料を使わないユーザーが負担するというのはおかしな状態なので。
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