ライカと共同開発したカメラを搭載した「P9」の発売以降、にわかに注目を集めているHuaweiだが、2017年は「AI」を前面に打ち出してきた。同社はまず、独ベルリンで開催されたIFA 2017で、機械学習の処理に優れた「NPU」(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載した「Kirin 970」を発表(関連記事)。このプロセッサを搭載したスマートフォンの「Mate 10 Pro」を、10月に独ミュンヘンで披露している(関連記事)。Mate 10 Proは、12月に日本でもSIMロックフリースマートフォンとして発売された。
HuaweiはMate 10 Proで、機械学習の処理能力の高さをカメラに応用。映し出されたシーンを素早く認識し、それに合わせて最適なモードに切り替える機能を搭載した。ユーザーの利用動向を学習して、長く使ってもパフォーマンスが落ちない仕様も盛り込まれている。プリインストールアプリでは、Microsoft翻訳がKirin 970に最適化されており、ネットワークにつながっていない状態でも、素早く、かつ正確に言語を翻訳することができる。
もっとも、AIや機械学習をスマートフォンに応用したのは、Huaweiだけではない。日本では未発売だが、Googleの「Pixel 2」もその1つ。同モデルでは、機械学習の力を使うことにより、単眼のカメラで美しい背景ボカしを行う機能を実現した(関連記事)。先に挙げたiPhoneのFace IDや、ポートレートモードにも、A11 Bionic neural engineの力が使われている。
幅広いAndroid端末に採用されるQualcommのSnapdragonも、機械学習の処理能力を高める方向で進化する。12月に米ハワイで開催されたSnapdragon Tech Summitで、同社は「Snapdragon 845」を発表(関連記事)。CPU、GPU、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)やベクトル演算ユニットを組み合わせて、機械学習の処理能力を3倍高速化することが明かされた。専用のユニットを搭載するNPUやA11 Bionicとアプローチは異なるものの、スマートフォン側で機械学習の処理を担うという方向性は同じだ。この点については、業界全体が同じ方向に向かっており、2018年に登場するスマートフォンにも期待が持てる。
2017年は、ついに端末側の通信速度が1Gbpsを超えた1年でもあった。これを実現したのが、「Snapdragon 835」に内蔵される「X16 LTE modem」。真っ先にこれを搭載したのが、2月にスペイン・バルセロナで発表された、ソニーモバイルの「Xperia XZ Premium」だった(関連記事)。Xperia XZ Premiumは夏モデルとしてドコモが独占的に販売。11月には、nuroモバイルを展開するソニーネットワークコミュニケーションズが、SIMロックフリー版の取り扱いを開始している。
国内で発売された端末では、先に挙げたGalaxy S8/S8+や、シャープのAQOUS R、HTCの「HTC U11」など、幅広い端末がSnapdragon 835を採用。冬春モデルも、ハイエンドモデルの多くが、Snapdragon 835を搭載する。さらに、HuaweiのMate 10 Proは、下り最大1.2GbpsのLTE Advanced Proに対応(国内では下り最大500Mbps)。国内では帯域やネットワーク仕様の関係もあり、下り788Mbpsが最大となるが、2020年に導入される5Gに向け、2018年はさらにその速度を上げていくとみられる。
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