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ボタン1つで「○○Pay」を簡単に実装 OrigamiがQRコード決済事業に参入する狙いモバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)

» 2018年04月24日 06時00分 公開
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加盟店がOrigami Payを採用するメリット

 このようなOrigami Payの仕組みだが、仮にIDを登録して行動履歴だけを取得され、加盟店側からリーチされやすくなるだけでは利用するメリットが薄い。そこで同社が提案するのが「安い」という分かりやすい価値だ。

 「金融商品や金融サービスで以上は当たり前の話で、2つの商品があったとき、コアとなる部分にそれほど違いがない場合には皆が必ず安い方を選択する。これは住宅ローンなどでも同じで、当然ローン金利のいい方を選ぶ。実はいま中国やインド、東南アジアで起きていることは全部同じで、なぜ新しい支払い方法にスイッチしているのかといえば、『100円の水を買うのに現金では100円支払わないといけないものが、スマホ決済だと安くなる』ということでしかない。

 われわれもOrigami Payで同じことを実現しようとしており、6パターンくらいを想定していろいろ模索している。例えば、これまで小売店舗がハガキを印刷したりCRMを構築したりしていたものをお手伝いしてコスト削減を助けた分、Origami Payでの割り引き分に還元してもらうとか。あるいは銀行やカード会社などが利用活性化のために投入したマーケティング原資を割り引きに充当してもらうなど。そもそもインターネット活用で決済原価が下がっているので、そのスプレッドを最小化することで実現するといった具合です」(康井氏)

 また、「IDとIDを結び付ける」といったも加盟店に全てのデータを渡しているわけではなく、別にデータを販売しているわけでもないと同氏は説明する。データは全て匿名化されており、Origami Payのアプリを通じて最低限の接触ポイントを得られているにすぎない。

 基本はFacebookのようなダッシュボードに近く、同アプリを通じた接触の他、スタンプカードのような仕組みを利用できるなど、ツールの一部として活用するイメージだ。「クレジットカード会社やポイント事業者でよく『うちはデータをいっぱい持っています』という話を聞くけれども、持っているデータは限られたものだし、従来ながらの手法では接触がどんどん難しくなっている。『顧客を見える化する』、これを助けるのがOrigamiの役割」だという。

競合はライバルにあらず

 キャッシュレス化が浸透し、既存の現金を用いたオフライン決済からインターネットを経由した決済へと移行が進んだ世界では、いろいろなことが起こる。康井氏が言うように、これまで決済機関の主要な収益源だった手数料は今後さらに下落が見込まれ、やがては「それだけではビジネスが立ちゆかない」世界となる。

 「ゆうちょ銀行とか大手であれば、ATM手数料や投資、資産運用でまだ稼げる部分はあるが、そもそも既存の銀行は個人のお金を使うところで稼げるスキームを持っていない。そこでOrigami Payのような仕組みをひも付けて環流する仕組みを作ることで、新しいビジネスとなる。実際に喜んでもらっていることもあり、銀行口座の即時引き落としのようなサービスもはじめ、いろいろな銀行と組んでいきたい」と同氏は今後の動きについて説明する。銀行口座のひも付けをはじめ、ユーザーがポケットに持つ支払い手段はまだいろいろあり、各社のポイントプログラムや店舗マネーなども含め、いろいろつなげていくのが目標だという。

Origami Origamiマーケティング部ディレクターの古見幸生氏

 楽天は「2018-2019年が勝負の年」と述べていたが、昨今ライバルと目される企業が一気に市場になだれ込んでいる状況について康井氏に話を聞いたところ、「まだ言えない話もあるが、あまり競合とは考えていない。むしろ仲良くやっていると考えている」と述べている。

 「そもそもクレジットカードもDinersしかなかった世界に他の会社が参入しなければ、今日の普及はなかった。それくらい現金とは強いものなので、それをどうリプレースしていくかを考えるうえで、QR決済もプレーヤーが多い方がいいと純粋に思っている。しがらみのある既存事業者と違って守るべきものもないので、カード会社から大手金融機関まで、オープンに一緒に盛り上げていきたい」というのが、会社と康井氏個人の考えのようだ。振り返ればAlipayとの2016年末という、かなり早いタイミングでの提携発表も「インバウンド需要取り込みを望む加盟店に決済手段を提供する」ことが目的にあり、競合よりは提携というのは昔からのスタンスなのだろう。

 そんな康井氏に今後の金融と決済について尋ねてみたところ「未来の銀行はどのような姿かを意識している」との回答が返ってきた。銀行というと、今日ある“銀行”の姿をどうしても想像してしまうが、将来的には新しい銀行の姿が認知され、割と本気でAmazonのような事業者が“銀行”シェアの多くを得てしまう未来もあり得る。

 “クレジット”という概念についても現在のようなプラスチックのカードだけでなく、そもそもIDだけで仕組みが成り立つわけで、後は与信についてライフタイムバリューと獲得コスト、デフォルトリスクさえ分かっていればできることはあるという。金融の世界がこれから大きく変わろうとしているなか、非常にいいタイミングで「キャッシュレス」の話題が登場してきており、「摩擦の多い世界でお金の流れをもっと滑らかにし、そこで新しいプラットフォームを作れたらいいな」と康井氏は結んでいる。

Origami Origamiは2018年初頭に六本木ヒルズ森タワーにオフィスを移転したばかり。入り口には巨大な折り鶴のオブジェがあるが、康井氏によれば社名の由来は「海外に認知してもらえる日本由来のキーワードはそう多くない」とのこと
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