スプリントとT-Mobile USが経営統合へ――孫社長、もはやアメリカ市場は「諦めモード」か:石川温のスマホ業界新聞

» 2018年05月11日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 噂通り、スプリントとT-Mobile USの経営統合がまとまった。

 あれだけ経営権にこだわっていた孫社長。2回目の経営統合交渉は破談となったが、要は、孫社長が首を縦に振れば話が一気に進んだということだろう。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年5月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 このリリースをソフトバンクから受け取ったとき「孫社長はアメリカ市場を諦めたのではないか」。そんな印象を抱いてしまった。

 4Gネットワークはなんとか立て直したものの、これから5Gへの投資をするとなれば、途方もない戦いとなる。しかも、アメリカの5Gはどちらかと言えば、固定回線としての需要からまずはスタートする。5Gとして固定回線を売り、そこにコンテンツを配信していくというビジネスモデルが必要となってくる。AT&Tがタイム・ワーナー、ベライゾンが旧ヤフーと一緒になろうとしているのは、まさにその世界観を目指しているわけで、第4位のキャリアが5Gネットワークだけを手がけても歯が立ちそうにない。

 孫社長にとって、誤算はいくつもあった。ひとつはT-Mobile USを一緒に買収できなかったこと。もうひとつは予想外にT-Mobile USが復活し始めた点にある。

 T-Mobile USが5月1日に発表した決算を見ても、売上高は前年同期比9%増の104億5500万ドル、純増数は61万7000件だった。純増数で比較すると、ベライゾンが2万4000件の純減、AT&Tが2万2000件の純減、スプリントが5万5000件の純増であった。

 アメリカ市場においては、T-Mobile USの一人勝ち状態と言え、スプリントは全く歯が立たない状態だ。スプリントが第3位で、T-Mobile USが第4位だった頃が懐かしい。

 いまの勢いを持ってすれば、経営統合する際に、スプリントが経営権を持つというのはちゃんチャラおかしいわけで、T-Mobile USの名前を引き継ぎ、経営権もT-Mobile USが主導権を握るのは至極当たり前のことといえる。

 現在のCEOである、ジョン・レジャー氏の経営手法が冴え渡っており、孫社長としても、新会社もジョン・レジャー氏に任せてしまった方が安泰と考えたのではないか。

 ソフトバンクとしては、会社の買収云々よりも、ジョン・レジャー氏に互角に戦える経営陣を揃えられなかったのが、最大の敗因ではないか。マルセロ・クラウレCEOは経費削減などを行い、会社としては持ち直したものの、上位3社を攻めるまでには至っていない。

 ソフトバンク全体を見ていて思うが、孫社長が突出して経営を上手く回している一方、孫社長以外の経営陣が、関連会社をうまく経営できていないというのが、弱点になりつつある。

 孫社長が仮に100%出資したとしても、ソフトバンクから経営陣を送り込んで、新たに経営を回すのに限界を感じているような気がしてならない。「群戦略」で、経営自体は他人にお任せし、出資者に徹するやり方のほうが、身の丈にあっていると感じたのではないだろうか。

© DWANGO Co., Ltd.

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