au(KDDI・沖縄セルラー電話)は「アップグレードプログラムEX」、ソフトバンクは「半額サポート」という名称で、4年間(48回)の分割払いと端末下取りを組み合わせた販売プログラムを実施している。
これらのプログラムについて、公取委は一度選択してしまうと、「下取り」と「プログラムの再契約」をしない限り実質的な負担が大きくなると指摘。消費者の選択権を事実上奪っていると判断される場合は独禁法上の「私的独占」や「取引妨害」に当たる可能性があるとする。
さらにプログラムの説明において、他キャリアよりも著しく有利であると誤認を招く場合は独禁法上の「ぎまん的顧客誘引」に相当し、景品表示法上も問題が生じる可能性があることも指摘する。
現在、MNOが販売する端末には原則として「SIMロック」がかかっている。このロックは一定条件のもと解除できるが、店頭での解除手続きが原則有料であること、中古端末の解除が本人限定かつ解約から100日を経過するとできないことなど問題点もある。
公取委はこれらの問題が通信事業者への乗り換えを妨げると指摘。独禁法上の「私的独占」や「取引妨害」に当たる可能性があるとする。
なお、中古端末のSIMロック解除に関する問題は、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」の改定が案通りに進めば解決する見通しだ。
MNOは下取りした端末を中古端末業者などに転売している。しかしiPhoneを中心にその多くが海外に転売され、国内中古端末市場に出回っていないという指摘がある。
前回の報告書において、公取委は端末の流通先制限が独禁法上の「拘束条件付取引」や「取引妨害」に当たる可能性に触れた。これを受けて、NTTドコモとKDDIは下取り端末の取引条件から関連する条項を自主的に削除したという(※)。
今回の報告書でも、取引条件への記載の有無を問わず、下取り端末の流通先を実質的に制限する行為が独禁法上問題になりうることを指摘している。
合わせて、自らSIMロックを解除するユーザーが少ないことを踏まえ、中古端末市場の活性化も図れることから、SIMロック解除条件を満たした場合は、MNOが自ら(≒自動的に)SIMロックを解除することが望ましいという提言もしている。
※ソフトバンクについては、2017年度の契約条項には端末流通先制限の記載がないとの回答を得られたものの、それ以前については取引先業者との秘密保持契約(NDA)を理由として回答を得られなかったという
その他、今回の報告書ではユーザーを拘束する契約の累積(重畳)や根拠のない値引き表示による「競争者排除効果」の増幅に対する指摘や、MNOがMVNOに回線を“積極的に”貸し出すようなインセンティブ(動機付け)ができるような制度設計への提言なども盛り込まれている。
公取委は「スイッチングコスト(事業者乗り換えにかかるコスト)を高めることにより利用者を不当に囲い込む行為に対しては独占禁止法を厳正に執行していくことにより、MVNOの競争環境の整備更にはMNO間の競争促進をも図っていく」としているが、この報告書の作成に当たって行われたユーザー調査では、以下のような傾向も出ている。
契約期間拘束を緩和し、スイッチングコストを低くするだけで、MVNOへの移行は活発化するのだろうか。
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