LINEモバイルとの“すみ分け”は? ソフトバンク「併売」の効果は?――「Y!mobile発表会」一問一答(2/3 ページ)

» 2018年08月02日 20時45分 公開
[井上翔ITmedia]

囲み取材

囲み取材に応じる寺尾氏 囲み取材に応じる寺尾氏

「4年縛り」は難しい問題

―― KDDIが「4年縛り」(アップグレードプログラムEX)の見直しを行うという報道がある(参考記事)。

寺尾氏 皆さん、(4年縛りの是非について)どう思いますか。難しい問題だと思う。

 売り方の面で「次はブロックする」(≒残債免除の条件として買い換えプログラムの継続を要求する)というのは(ユーザーの)流動性に問題が生じうる。ただ、お客さまの(購入する際の)端末価格は高くなってきている中で、「2年」「4年」という買い方(分割払い)が出てきたが、これも同じである(捉え方次第では問題になり得る)と思う。

 お客さまが動きにくい(乗り換えづらい)状況を作ることは競争上良くないが、そのこと(を解決すること)が全ての問題を解決するとも思わない。変にルールで縛ると、かえってお客さまの流動性が低くなるのではないかという懸念もある。

 (ユーザーを)取る立場からすると「どんどん自由になれよ」とは思うが、お客さまから見て買いやすい売り方・買い方は提案していく必要もある。

 ルールが決められればそれに従うが、我々としてはお客さまがより買いやすくて選びやすい環境を作ることが大事だと考えている。

iPhoneを含む端末ラインアップについて

―― 公正取引委員会がAppleの「iPhone Agreement」について言及する発表を行った。この中でiPhone Agreementを改訂したという旨の話も出てきているが、Y!mobileとして何らかの影響はあったか。

寺尾氏 分からない。Agreementの中身については関知していない。

―― 取り扱うiPhoneの種類が増えるということはないのか。

寺尾氏 (取り扱い機種は)Agreementに縛られているのではなく、戦略の中で決めている。Agreementの話とは切り離して考えてもらっても良いと思う。

―― 今回の新製品はシニア向けだが、他の大手キャリアではジュニア向け機種もある。今後、ターゲットを絞った端末を継続的に投入していくのか。

寺尾氏 ジュニア向け端末は少し悩みどころ。「ジュニア市場のスマホ」とはどんなものだろうと。

 もう少し年齢層の低いキッズ(小学校低学年)向けであれば一定の需要があることは認識しているが、その間(小学校高学年から中学生まで)という所だと(需要的に)すごく狭いので……。

 ただ、いつも言っていることではあるが、今日話していることは明日の決定事項ではない。世の中は常に変わっていくし、進化しないことは(市場の中で)死んでいくことにつながるので、今後は分からない。

 今の所は「あんしんフィルター」を既存機種に入れて対応したい。親子の約束も大事だと思う。

―― 今回の新端末でサポートコストを減らす観点で「押すだけサポート」を取り入れたが、シニア層は真っ先に(サポートに)電話をかけてしまうというイメージがある。

 専用のコールセンターを設けるという話もあるが、コスト増は見込んでいるのか。

寺尾氏 もちろんある程度のコスト増は見込んでいるが、そこまで大きくはならないと思う。

 お客さまが増えれば問い合わせが増えるのも当然なので、全体のコストの中でやりくりしていくことになる。

―― (シニア向け端末を)Android Oneで作ることはできなかったのか。

寺尾氏 (Android Oneに準拠する場合)ハードウェアボタンの搭載など、難しい面が出てくる。

 セキュリティ更新はやっていくにしても、OSバージョンアップも原則として自動で行うとなると、それがシニア層にとって(使い勝手の面で)「プラス」になるかというと難しい。例えばこれ(四角いアイコン)が突然丸くなったら、パニックに陥ると思う。

 シニア層はこれ(かんたんスマホ)だけ買いなさい、というわけではなく(リテラシー次第で)iPhoneやAndroid Oneも用意している。この機種は「メールがしたい」「LINEがしたい」といったベーシックな機能を前に(ホーム画面のトップに)持ってきているので、サポートコストも下げられるのではないかと考えている。

 やってみて反省して、改善していきたいと思っている。

(筆者注:Android Oneでもメーカーごとのハードウェア・ソフトウェアのカスタマイズは可能だが、カスタマイズできる項目数に厳しい制限がある)

かんたんスマホ Android Oneを適用すると、ここまでのカスタマイズは不可能だったという「かんたんスマホ」

―― かんたんスマホのホームアプリみたいなものをAndroid Oneスマホに入れて売る、というアプローチは考えなかったのか。

寺尾氏 「初心者向けのホームアプリをAndroid Oneにインストールして売る」という取り組みを一部の店舗ではしているとは聞いている。ただ、1〜2枚設定をめくると、(画面のカスタマイズがなされていないため)リテラシーを要求するというか、少し小難しくなってしまう。

 そんなスマホを自分の80〜90代の両親にそのまま渡せるかというと、それはしんどい。親不孝な息子は、一番な簡単なモノを渡したいという発想でいる。

 実際の購入シーンでは、シニアの方はお孫さん、あるいは息子・娘と一緒の機種を買う傾向にある。(家族の)サポートを受けられるなら「こうするのよ」「ああするのよ」と教えつつ使えば良いが、そうでないなら「困ったら真ん中のボタン(押すだけサポート)を押せ」とできるこの端末が良いと思う。

MVNOとの競争

―― 9月からの容量増で、MVNOに対する価格競争力が増したと思う。そうなるとMVNOから「(ソフトバンク回線を)もっと安く貸してほしい」という話も出てくると思う。

寺尾氏 (MVNOも含めて)全体的に月間データ容量の増加は進んでいる。この料金体系であれば、MVNOさんの現状の取り引きレート(帯域料金)でも十分カバーできる(同じような料金体系にできる)と思う。

―― 容量が倍増することで「1つ下のプランでいいかな」と考える人もいると思う。収益への影響はどのくらいを見込んでいるか。

寺尾氏 具体的な金額については申し上げにくいが、それほど大きな影響はないと思っている。

 お客さまは、データ容量の上限に当たることでストレスを抱えている。上位のプランほど増える容量も大きくなるので、(データをより多く使う人が)プランを変えるというケースも出てくると思う。

 よく「既存のユーザーへの還元が少ない」という指摘を受けることもあるが、今回の容量アップである程度還元できると考えている。Lプランなら、後から容量を購入する場合と比較して(月額)7000円分の還元ができる。

 少しずつでも既存のお客さまに還元ができればと思っている。

―― 現状の「1年目が一番安くて、2年目は少し高くなる」という料金はどうにかならないのか。

寺尾氏 誰がしかけたものか分からないが、競争がある。

 「1年目が安い」というのはデファクトスタンダード(事実上の標準)になってしまった感もある。

―― 「2年間安い」と言いながら、3年契約となっているケースも見受けられる。

(筆者注:楽天モバイルの「スーパーホーダイ」の3年プランは、月額料金の割引期間が2年間となっている)

寺尾氏 他社のことについてはコメントを控えるが、あまり複雑なこと(割引)はしたくないと思っている。

 お客さまが乗り換える際には、解約金を始めとして大きな負担がかかることもある。なので「(負担感を軽減するために)1年目だけ料金を下げる」という形態を取っている。

 できるだけ(そういったことは)なくしたいとは思っているが、競争もあるので踏み切れない面もある。

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