ソフトバンクとトヨタ自動車は10月4日、合弁会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を2018年度内に設立することを発表した。ソフトバンクの持つIoTプラットフォームとトヨタ自動車の持つモビリティサービスプラットフォームを活用し、自動車メーカーとモビリティサービスを提供する事業者の“間”に入る企業として、自動運転時代の新しいモビリティサービス(移動サービス)の構築を目指す。
トヨタ自動車は2016年、「コネクティッド戦略」を打ち出した。IoT(モノのインターネット)の普及や自動車の利用形態の変化を見越して、自動車メーカーとしてのあり方を見直そうというものだ。
この戦略の究極の目標は、同社が「Autono-MaaS(オートノマーズ)」と呼ぶ自動運転車によるモビリティーサービスの提供だ。2018年1月に発表された「e-Palette」は、Autono-MaaSのコンセプトカーだ。
Autono-MaaSの普及を目指し、同社は国内外のさまざまな企業と実証実験や協業をしてきた。その過程で、同社は「車両メーカーとサービス事業者の間に入る“第三の事業体”が必要である」(トヨタ自動車の友山茂樹副社長)と判断し、そのパートナーを探すことになった。
そこで同社が目を付けたのがソフトバンクだ。ソフトバンクの親会社であるソフトバンクグループは、米Uberを始めとする世界の主要なライドシェアサービスに大株主として出資している。ソフトバンク自身も、国内通信事業を通して培ったIoTプラットフォームや自動運転技術の開発子会社(SBドライブ)を保有している。
ソフトバンクとソフトバンクグループが持つプラットフォーム・資産と、自社が保有するモビリティサービスプラットフォームを生かすことで、Autono-MaaSをより早く事業化できる――トヨタ自動車はそう考え、ソフトバンクに提携を打診したようだ。
トヨタ自動車からの提携打診後、両社では若手社員を中心とするワーキンググループを設置。提携のあり方を協議してきた。その結果、今回の合弁会社設立に至ったという。
合弁会社の出資比率はソフトバンクが50.25%、トヨタ自動車が49.75%。打診を受けた側のソフトバンクの方が高くなっている。これは「ライドシェア事業者との結びつきを強化する」(友山氏)ために、「ソフトバンクから社長を出す」(同)ことにしたためだという。社長には、ソフトバンクの宮川潤一副社長兼CTOが就任する。
合弁会社はまず、「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」といったオンデマンドモビリティサービスを主力事業に位置付けてサービスを展開する。
このフェーズでは、オンデマンド交通の普及を通して、「交通弱者」「買い物難民」と呼ばれている人々の救済を図りつつ、赤字体質になりがちな地方交通の課題解決、モビリティサービスを通した地域活性化を図るという。
事業は、地方自治体や地域の輸送事業者などと連携して展開する。国家戦略特区制度を活用することも視野に入れている。交通課題が深刻な場所を中心に、まずは100地区への展開を目指す。
本来の合弁目的であるAutono-MaaS(e-Palette)事業については、2020年代半ばの展開を目指す。オンデマンドモビリティサービスを通して得られた知見を生かし、各種IoT技術を駆使したサービス展開を予定している。
合弁会社の社名は「MONET Technologies」だ。MONETには「『全ての人に安心・快適なモビリティをお届けする、Mobility Networkを実現したい』という両社の思い」が込められているというが、一部の読者の皆さんは別のことを思い浮かべたと思う。
実は、トヨタ自動車は1998年から2005年まで「MONET(モネ)」という自動車向け情報通信サービスを提供していたのだ。
今回の合弁会社設立にあたり、MONETは13年ぶりに社名として「転生」を果たした。これはトヨタ自動車側から「使ってくれ」という提案があったからのようだ。
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