カードケータイやPixel 3の狙いは? 融資サービスの需要はどれだけある? ドコモ吉澤社長が語る(2/3 ページ)

» 2018年10月18日 12時52分 公開
[石井徹ITmedia]

レンディングプラットフォーム、ドコモの強みは?

 「ドコモ レンディングプラットフォーム」の質疑応答では、レンディングプラットフォーム向けのアプリを開発したマネーフォワードと、最初のユーザーとなる新生銀行の社長も質問に答えた。登壇者はNTTドコモの吉澤和弘社長、マネーフォワードの辻庸介社長、新生銀行の工藤英之社長の3人。

ドコモ

―― 「ドコモ レンディングプラットフォーム」では個人の信用スコアの利用先として、まず金融機関からのスタートとなるが、例えばモノのレンタルなど、他の業種でも需要はありそうだ。サービスの将来像は。

吉澤氏 ドコモとお客さまの接点には、携帯電話の契約、料金の支払い、さまざまなd系サービス、dカードのような金融サービスなど、多様な形がある。そして、それに付随したビッグデータを保持している。

 こうしたデータの活用を期待する企業はさまざまな業界にあると認識しているが、まずは特に効果的な活用が見込めるレンディング分野で展開していく方針だ。他の業種についてももちろん検討していくが、決まっているものはない。

ドコモ NTTドコモの吉澤和弘社長

―― 今回のレンディングの仕組みは新たに開発したのか。どのデータを対象にしているのか。また、どのくらいのデータ量があるのか。

吉澤氏 ドコモ レンディングプラットフォームでは、データそのものを金融機関に提示するわけではなく、スコア化して、信用審査の材料として使っていただく。

 もちろん、お客さまの情報を実際に利用する際は、必ずお客さまに確認し、パーミッション(情報開示の許諾)をいただく運用が前提となる。

ドコモ ドコモ レンディングプラットフォームはユーザーの信用情報をスコア化して、金融機関が融資サービスに活用する仕組みだ

吉澤氏 活用するデータについてだが、どのくらいのデータ量かは把握していないが、基本的にドコモが保持しているデータの「全て」ではない。

 今回使うデータには、例えば携帯電話契約の期間、料金の支払い状況、あるいはdマーケットなどのサービスの取り扱い状況、支払い状況が含まれる。また、男女、年齢といった属性データも活用する。当初は利用するデータをある程度絞った形にして、活用する方針だ。

 先に挙げた例だけでも、例えば「この方は携帯電話の契約期間が長い、延滞も全くなかった(優良顧客だ)」といったことがすぐ分かる。

 ドコモが保持しているデータはもっと幅広く、位置情報や、いつどのようなサービスを受けたかといったようなものを保持している。それらを今後どのように活用していくかは、検討していきたい。

―― レンディングスコアでは比較的、少額な決済記録だと認識している。金融機関では融資を受けるのは大規模なローンだと思うが、どの程度参考になるのか。

工藤氏 今回の「共創」の価値は、切り口が違うデータを組み合わせられることにあると考えている。現代の金融機関は、それなりに高度な与信モデルを持っているし、独自のデータ量もかなりある。

 しかし、今回ドコモが作るスコアに入っているいろいろな要素は(金融機関が保持している信用情報とは)違う切り口だ。そうしたものと従来のデータを組み合わせていくと、より精緻なモデルを構築できると考えている。

 また、今回のサービス(ドコモの仕組みを活用して2019年3月に開始される「新生銀行 スマートレンディング」)は、個人向けの無担保ローンになるので、数千万円単位ではなく、数万円〜数十万円単位という単位の少額ローンになる。

―― 同様のスコアレンディングの仕組みはソフトバンクとみずほ銀行が「J.Score」として先行しているが、ドコモならではの強みは。

吉澤氏 みずほ銀行とソフトバンクのサービスについては、スキームなど詳細を把握していないためコメントできないが、今回ドコモが実施するレンディングの特徴は「レンディングマネージャー」があることだ。

 「レンディングマネージャー」は、マネーフォワードと連携して作り上げたアプリ。借り入れの状況を表示するだけでなく、家計の収支を“見える化”する機能も持っている。借り入れ情報と家計の情報を掛け合わせることで、返済の促進などに活用できる。こうしたところが強みだと考えている。

ドコモ ドコモとマネーフォワードが共同開発した「レンディングマネージャー」アプリ。家計の状況に応じて、借入額の目安表示や早期返済の提案などを行う

辻氏 フィンテックの利点は、コストの制約で実現できなかったサービスを、テクノロジーやデータ量を活用することで実現できるところだ。

 例えば「人が訪れて確認しないと実態の把握が難しい」といった状況で、データを活用することでよりローコストで実態を把握できる。コストが10分の1になれば、その分より多くのユーザーにより安い価格で提供できる。

ドコモ マネーフォワードの辻庸介社長

―― 融資の潜在顧客について。ドコモのユーザーは保守的で収支も安定しているのでは。融資サービスの需要があるか正直疑問だが、調査などで把握しているのか。

吉澤氏 私どもの契約者は個人で6000万ユーザーほどいる。その中でカードローンを利用する希望がある方を確実に把握しているわけではない。

 とはいえ、例えばカードローンの市場規模は10兆円と大きい。レンディングサービスとしては着実に成り立っていくのではないかとみている。

 2019年3月のスタート時点では新生銀行さんに使っていただくことになるが、将来的には(ドコモ レンディングプラットフォームを)他の銀行さんにも使っていただくことになる(ため、規模の拡大が見込める)。

 また、スマートフォンだけで融資が完結するという便利さ、使いやすさも特徴になっている。あるいは、ドコモ契約者だけに優遇金利で融資するといったことも今後可能になるだろう。そういったサービスのメリットをお客さまに理解してもらえれば、使っていただけるのではないか。

ドコモ 新生銀行の工藤英之社長

工藤氏 今回の取り組みは、個人のお客さま向けの無担保のレンディングという商品において、一つの将来像を示すことになるのではないかと考えている。新サービスには、先ほどから紹介しているように、レンディングマネージャーアプリのお客さまに対する親切さであったり、ドコモのスマートフォンの使いやすさであったり、あるいは精緻な与信審査の裏返しとしてのお客さまのメリットがある。こういった要素を組み合わせていくことで、新しいマーケットの創出にもつながっていく。

 銀行カードローンでは昨今、一部で問題として取り上げられたこともある。今回の新サービスでは、銀行の個人向けローンとしてのあるべき姿を示すことになるとも考えて、中長期的に取り組むつもりだ。

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