第2部の終了後、吉澤氏の囲み取材も実施された。一部の質問にはドコモFinTech推進室長の江藤俊弘氏も回答している。
記者からの質問の内容はレンディングプラットフォームを含めた金融分野の事業が中心となった。
―― 内閣改造したにもかかわらず、官邸の「携帯料金の4割値下げ」の声が強い。ドコモとしては落としどころを探っているのか。
吉澤氏 いずれにしても料金については、いろいろな方からさまざまな要望がある。ドコモとしてもそうした話を真摯(しんし)にお聞きして、どのような対応をしていくのかをしっかり検討していきたい。
以前から申し上げているように、お客さまサービスの向上については継続的に取り組んでいる。料金の見直しだけでなく、サービスの拡充についてもつねに考えている。そうしたものを逐次、発表してきたいと考えている。
―― 総務省の有識者会議でも、携帯電話料金以外での収益の確保を求める声がでているが、今回のレンディングプラットフォームが収益に与える影響は。
吉澤氏 今回の取り組みは、銀行との連携を進めていく側面もある。現時点では具体的な数値目標は持っていないが、レンディング事業は今後拡大していき、金融分野における収益の1つの柱となるよう育てていきたい。
金融分野に限らず、スマートライフ分野など、通信事業以外での収益を増やす取り組みには、力を入れていきたいと考えている。それを進めるためにも通信分野では「5G」の導入によって、収益拡大の基盤としていきたい。
―― レンディングの導入で、ドコモが扱うフィンテック関連サービスはかなり幅広くなってきた。金融分野は現在どのくらいの規模で、今後どこまで増やしていく見通しか。
吉澤氏 ドコモの通信、スマートライフが2大事業。金融・決済関連事業は、決算で「その他事業」として、保険、コンテンツ、収益、ヘルスケアなどの事業の収支を計上している。金融・決済は「その他事業」の中では利益として3番目くらいの規模になっている。収益や規模の面ではもっと育てていきたい分野だと考えている。
―― レンディングサービスについて、金融機関との連携における目標はあるか。
江藤氏 今まさにどのくらいの銀行に使っていただけるのか、また銀行以外にもスコアリングを使っていただける企業をいかに戦略的に増やしていくかを社内で議論している。今後の規模感として社外に公開できる数字は持っていないが、ぜひ今後の広がりに期待いただきたい。
吉澤氏 われわれも地銀さん(地方銀行)とか、いろいろなところに声をかけている。銀行さんにとっても、お客さまにとってもメリットがあると理解していただいた上で広げていきたい。もう少しお待ちください。
―― 三大メガバンクやゆうちょ銀行には声をかけていないのか。
吉澤氏 ノーコメントです。
―― レンディングサービスで提供する「パーソナライズ」の具体的な内容は。
江藤氏 具体的な優遇の内容は、お客さま個人によって異なってくる。信用状況をスコア化して、金利や貸し出し額が決まってくる。この点が、一般的な無担保ローンとの違いでもある。一般的な無担保ローンでは。貸し出し額に応じて金利が決まる。
―― ドコモは先日、「dカード」や「iD」の展開で提携している三井住友カードの株式の売却を発表した。その動きは金融分野を強化していくという方針からは矛盾しているようにも思える。
吉澤氏 三井住友カードとの取り組みでは、もともと出資した際の契約に「買い戻し」の取り決めがあり、それに従って三井住友フィナンシャルグループに買い戻していただいたという流れ。
実は三井住友フィナンシャルグループとは、今でもいろいろ検討を進めている。出資した株式を手放したから関係が終わったというわけではない。
―― iDは、iPhoneでは「Apple Pay」という形で提供されているが、Androidの方はフィーチャーフォン時代のサービスから変わっていないように見える。iDにリニューアルなどは検討しているか。
吉澤氏 今のところは、大きくリニューアルする予定はない。ただ、iDはかなり古くから展開している決済事業の一つだ。ドコモが注力している決済、保険、投資、レンディングという4つの分野では、スマートフォンを全面的に活用することで、コストを抑えて、お客さまに寄り添ったフィンテックサービスを提供していきたい。
―― dポイントについて。先般、加盟店のローソンで不正利用される事案が発生したが、その後の対策は。
吉澤氏 今回の件では、ローソン側のアカウントを取り直してもらうなどの対応を進めている。
また、今までも継続的に進めてきたところではあるが、dポイント自体のプロコトルのセキュリティレベル強化する、二段階認証の導入を推奨するといったセキュリティ対策も確実に遂行していくことで完全な対策になると考えている。
今回発表したレンディングサービスもdアカウントの基盤を利用している。そうしたサービスを提供する上でも、二段階認証などでセキュリティの堅牢(けんろう)性を高め、対応していきたい。
―― Pixel導入の本気度は。以前Nexusシリーズを販売していたとき、実績を残していた印象がないが。
吉澤氏 Nexusはだいぶ前に、サムスンのGalaxyブランドのNexus(GALAXY NEXUS SC-04D、2011年発売)を扱っていましたね。台数はそれなりに売れたんじゃないかと思っています(注:吉澤氏は言及していないが、ドコモは2015年にNexus 5Xも発売した)。
吉澤氏 今回のPixelでは、AndroidのOSを握っているGoogleが本格的に展開する端末ということで、われわれも非常に期待している。Android全体の底上げも含めてしっかりと対応していくつもりだ。どのくらい売れるのかはわれわれのPRのやり方などにもよるので、そうした面も含めてしっかりと対応していきたい。
―― iPhoneとPixelは「ツートップ」的な推し出し方をするのか。
吉澤氏 ツートップ、というのはやはりなかなか……。だいぶ以前にそういうものもありましたが(笑)。個別の機種を「ツートップ」として推すのは今のところ考えていません。
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