「Apple Watch Series 4」を分解して分かった、「3」との違い:バラして見ずにはいられない

» 2018年11月30日 15時09分 公開

 2018年9月にAppleが発売した「Apple Watch Series 4」は、通信機能の有無や画面寸法の違いで幾つかのバリエーションが存在する。今回は「Apple Watch Series 4 GPS + Cellular」、画面サイズ44mmの分解レポートをお届けする。ウォッチはAppleの実験場といわれているが、今回も見どころ満載で、考え方によってはiPhoneより興味深いデバイスといえる。

Apple Watch Series 4 製品外観。Apple Watch Series 3までと外観は変わらない
Apple Watch Series 4 分解したところ。画面左から3番目上の振動モーター「Taptic Engine」は下のバッテリーと比べてもかなり大きく、Appleのこだわり部品の一つだ

歴代Apple Watchの共通項目

 毎年1回、新モデルが発売されるApple Watchは2018年が4年目を迎えた。現在まで引き継がれてきた部品や機能は多い。1つは「Sシリーズ」と呼ばれる独自のプロセッサ。Appleが設計し、韓国SamsungがIC製造を行っているといわれる。ディスプレイは同じく韓国LG Displayのフレキシブル有機EL(OLED)パネルが採用されている。

 内部スペースの半分近くを占める振動モーター「Taptic Engine」のメーカーは不明だが、日本のアルプス電気、日本電産、中国の複数メーカーがこの分野のサプライヤーと知られている。

Apple Watch Series 4 Taptic EngineはAppleこだわりの振動モーター。右上にある灰色の重りが左右に動き、「コツコツ」という感触をユーザーに伝える

 緩やかなカーブを描くデザインも初代から受け継がれている。ディスプレイの上には高級腕時計で採用されている人工サファイアの風防ガラスが採用されており、タッチパネルを使って画面上でさまざまな操作が可能だ。加えて、アナログ時計で時間を合わせる際に使用する竜頭も付いており、これをクルクル回すことでタッチパネルに触れなくても操作可能だ。

Apple Watch Series 4 ディスプレイの構造。画面右端画像で解説すると、一番手前がフレキシブル有機EL(OLED)ディスプレイ、その下にタッチパネル、その下に人工サファイア製風防ガラスがある

 心拍センサーも初代から搭載されている。緑色のLEDで毛細血管に光を照射し、カメラのフィルムの役割を果たすフォトダイオードで検出し、心拍として認識する。心拍センサーで取得した情報はApple Watch本体で確認することもできるし、Wi-Fiとワンチップ化されたBluetooth無線を使って情報をiPhoneに転送し、スマートフォン側で確認することも可能だ。

少しずつ大きくなった本体

 2017年まで、製品は38mmモデルと42mmモデルの2種類であったが、2018年は40mmと44mmと少し大きくなった。このためディスプレイも少し大きくなり、2017年の42mmモデルでは画面体格寸法が1.65型だったのが、2018年の44mmモデルは1.78型になった。

 本体の大型化は、大きなバッテリーを積む上では朗報と思えるのが、なぜかSeries 4のバッテリー容量は291.8mAhで、Series 3の350mAhより減った。それでも、バッテリー稼働時間はSeries 3と同じ18時間なのは興味深い。さまざまな電子部品が省エネ化したのだろう。

電気式心拍センサーを搭載

 アメリカ食品医薬品局(FDA)はSeries 4に対し、電気式心拍センサーの医療機器認証を与えた。Series 3まではLEDとフォトダイオードの組み合わせの光学式心拍センサーが装備されていたが、Series 4には電気式が加わった。電気式の方がより精密で不整脈検出などに向いているようだ。センサーは竜頭に触れると作動する。

Apple Watch Series 4 Apple Watch Series 3と4の心拍センサーの比較。大改造が施されたことが分かる。恐らく新機能を搭載するためだと思われる

 これに伴ってか、センサーの外観も大きく変化した。初代からApple Watch Series 3までは2個のLEDと2個のフォトダイオードで構成されており、モジュール化は日本のロームが担当していたといわれる。一方、Series 4の心拍センサーは、2個だったLEDが4個になりモジュール中央部に集められた。また赤外線LEDと思われるものが中央に追加された。フォトダイオードは小型になって2個から8個に増え、LEDを囲むように配置された。モジュール化は日本の浜松ホトニクスが担当していると推定される。

 心拍センサー機能を維持するだけであれば、これほど大きな改造は不要である。今回の大きな設計変更は、今後より多機能の光学式バイタルセンサーを目指したものと推測される。例えば、入院すると指に洗濯バサミのようなものを付けられることがある。これは光学式バイタルセンサーで、心拍、血圧、血中酸素濃度を測定するためだ。現在は心拍のみだが、将来のApple Watchは血圧なども測定できるようになるかもしれない。

 Advanced 911という非常通報機能も加わった。Apple Watchを装着した状態で転倒したり脚立から落ちたりした場合、しばらくたってもユーザーが動かない場合、非常事態と認識して「911(日本では救急の119に相当)」へ自動通報してくれる。

Apple Watch Series 4 GPSは米Broadcom製。Intelが内製できていないモバイル部品の一つといわれる
Apple Watch Series 4 Advanced 911機能の主軸となるモーションセンサーはドイツBosch Sensortec製。加速度、ジャイロ、地磁気を1パッケージにした

QualcommからIntel製のチップに変更

 2018年のApple新製品では、主要チップが米QualcommのICから米Intel製ICへ切り替わった。Apple Watchでも同様で、Siries 4のプロセッサはIntel製となった。注目は通信ICをはじめとする大部分のICが厚さわずか1.2mmの薄い樹脂モジュールに実装された点だ。

 特に優れた実装技術として、メインのS4プロセッサは、その上に音楽などを保存するフラッシュメモリと、プロセッサと連動するDRAMを実装しており、3種類のチップが縦に積まれている。これを高さ1.2mmに抑えるのは大きな挑戦だったと思われる。また部品が大型化する傾向にあるといわれる電源ICも、その上に、やはり高さが大きくなりやすい大型の積層セラミックコンデンサーを多数搭載している。

 「S4」と書かれているメインボードの外観はApple Watch Series 3とあまり変わらないが、内部では大きな変化が起きている。Apple Watch Series 4は実装技術の粋を集めたものといえる。

Apple Watch Series 4 メインボードの表面は樹脂でモールドされており、外観から詳細は不明。厚みは1.2mm
Apple Watch Series 4 メインボードのX線画像(匿名の提供者のご厚意による)。12個のICが確認できる。6〜8は3個のICを縦に積み、厚みを抑える優れた技術が使用されている。実装技術の祭典と言っても過言ではない。
Apple Watch Series 4 電子決済カードなどの役割を果たす無線通信IC。モバイルSuicaなどはこのICを使う
Apple Watch Series 4 竜頭。周囲が赤いとCellularモデル。ここに触れると電気式心電図が作動する
Apple Watch Series 4 メインボード上のタイミングデバイスと思われる部品(匿名の提供者のご厚意による)。1は恐らく世界初の超小型水晶振動子。2はSiTIME製MEMSベースタイミングデバイスと思われる

世界で最も出荷数の多い医療機器

 血糖値計は、年間9000万台から1億台が出荷されており、世界で最も多く出荷されている医療機器である。現在は針を刺して血液を試薬に浸し、それを測定器に入れて血糖値を計っているので、痛みが伴う。しかし針を使わない測定手法が開発されており、これがモバイルに応用されれば、スマートウォッチの出荷数は大幅に増加するだろう。これこそ、Appleが目指すウェアラブル機器の将来像だと筆者は思う。

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