XR誕生の背景、eSIM採用の狙い Appleフィル・シラー氏が語る「2018年のiPhone」石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)

» 2018年12月17日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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Appleが業界標準を普及させるお手伝いをしている

 モバイルの技術という観点では、iPhone XS、XS Max、XRにeSIMが採用されたことも大きなトピックだった。このeSIMは携帯電話事業者の業界団体GSMAが策定した標準仕様に基づいたもので、結果として、Apple SIMのとき以上に多くのキャリアが採用を決めている。中には、香港のハチソンが展開する3のように、オンラインで日本から簡単に契約できるキャリアもある。

 こうした広がりを見せているのは、eSIMが標準に準拠していることに加え、1機種あたりの販売台数が群を抜いて多いiPhoneに採用されたためだ。

iPhone XS nanoSIMとeSIMによってDSDS(デュアルSIM、デュアルスタンバイ)に対応したことも新iPhoneのトピックだ

 また、業界標準の技術を取り込んだという点では、11月に発売されたiPad Proが、USB Type-Cを採用したことも記憶に新しい。ここ最近のAppleは、業界標準への対応に積極的なようにも見える。一方で、シラー氏は、こうした見方を否定。もともとAppleは「業界標準を導入できるときにはしてきましたし、自ら業界標準を広めることもしてきました」とシラー氏は語る。

 ただし、ユーザーの利便性などを考えると、「新しい技術を作ることもしてきました」とシラー氏は言う。iPhoneでいえば、Lightningがその典型例といえる。表裏がなく、上下どちらでも差し込めるのはユーザーにとってメリットだったうえに、映像出力などの面でも優位性があった。

 一方で、USB Type-Cのような技術が登場した際には、「Appleが業界標準を普及させるお手伝いをしています」とシラー氏。業界標準の技術を採用し、それが広がれば「(業界標準の採用は)デバイスに柔軟性をもたらしてくれます」と同氏は言う。

 SIMカードについては、標準の普及を後押ししてきた側面が大きい。microSIM、nano SIMと、Appleが率先してサイズの小さなSIMカードを採用し、他社もそこに追随してきた歴史がある。SIMカードはユーザーが頻繁に出し入れするものではないため、できるだけ小さい方がいい。実際、「Apple Watchはサイズ的にSIMカードが入らないので、eSIMがとても重要です」とシラー氏。こうした思惑もあり、eSIMはAppleが「業界に働きかけ、標準を作ってもらった」という。

 シラー氏は「世界中のキャリアと協力し、eSIMは広まっています」と話すが、先に挙げた通り、実際に対応するキャリアの数は徐々に増えつつあるのが現状だ。iPhoneが採用し、その後、他の端末にも広がったnanoSIMのように、近い将来、eSIMがスタンダードになる可能性もある。オンラインでの契約も容易になることから、物理的なカードのサイズが小さくなってきたこれまでよりも、大きな変化になりそうだ。

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