インタビュー
» 2019年01月25日 10時57分 公開

MVNOに聞く:トーンのiPhone向けSIMが進化 石田社長に聞く“ネットワーク制御”に注力する狙い (1/2)

トーンモバイルがiPhone向けに提供している「TONE SIM(for iPhone)」が進化。ネットワークを制御することで「できること」が増えた。その手法や狙いを石田宏樹社長に聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 垂直統合的に端末からサービスまでを一体的に手掛けてきたトーンモバイルだが、子どもとシニアにターゲット層を特化させるうえで、避けて通れないことがある。それが、iPhoneへの対応だ。各種データを見れば分かる通り、iPhoneのシェアは未成年、特に学生が高く、トーンモバイルが提供する専用端末だけではニーズが満たせない状況が続いていた。

 これに対し、同社は2018年4月にiPhone用のSIMカードである「TONE SIM(for iPhone)」を発売。専用アプリを提供しただけでなく、ネットワーク側とそれを連携させることで、標準的に備わっている機能よりも、きめ細かな見守りサービスを提供した。そのTONE SIM(for iPhone)の機能が、2018年12月に強化された。

 新たに加わったのは、子どもの異常行動をAIで検知して親に通知で知らせる「移動通知機能」や、ネットワーク側で通信制限をかけられる「アプリ利用制限」など。いずれも、iPhoneそのものやアプリが、交換機側に置いたSDN(Software Defined Network)コントローラーやTONEコントロールエンジンと連携することで実現した。では、なぜトーンモバイルは子どもの見守りにこのような手法を用いているのか。同社の石田宏樹社長に、新機能を提供するに至った経緯をたずねた。

トーンモバイル トーンモバイルの石田宏樹社長
トーンモバイル TONE SIM(for iPhone)の1.0と2.0の違い

網側に価値を作った方がいいと判断

―― TONE SIM(for iPhone)が2.0に進化しました。1.0との違いを改めて教えてください。

石田氏 1.0に関しては、iOSの機能やMDM(モバイルデバイス管理=主に法人などが従業員向けの端末を管理する機能)を生かしていましたが、iOSがバージョンアップしたことなどがあり、レギュレーションにも一部触れるところが出てきました。結果として、1.0のときにお約束していた機能の一部が実行できない形になってしまいました。

 もともと通信でコントロールする部分と、MDMでコントロールするところの両方を準備していましたが、将来的なオープン化も含めて網側に価値を作った方がいいのではないかということで、そちらに開発を移行しました。iPhoneができて、その後はAIでというタイミングでしたが、そこを全て合わせてパーソナルファイアウォールも出すことができました。

 iPhone上でいろいろなことをやるのはチャンスもありますが、リスクもあります。iOSのバージョンアップをビクビクしながら待たなければいけないのは厳しいということで、そこは通信と分離する形にしました。

―― 制約が出るというのは、どういった部分がでしょうか。

石田氏 例えば、アプリごとのレーティングに合わせた設定はiPhone上でもできますが、時間ごとに利用の可否を変えるためには、ユーザーサイドの許可が必要になりました。実質的に(子どものユーザーが)時間帯による制限をかけるのが難しくなってしまいました。そこが解消できるまでは、積極的なセールスもやめていました。

―― それは、子どもが制限に「No」と言えるということですか。

石田氏 そうです。ただ、早くその機能(時間制限)を使えるようにしてほしいという声も、かなりいただいていました。網側でやるようにすれば、約款で許可をいただいておけばよく、端末が関係なくなります。また、時間帯だけでなく、網側だと、アプリと同時にブラウザからのアクセスも制限できます。

トーンモバイル 時間帯ごとに、Apple以外のアプリも利用制限の設定が可能になった

―― iOS 12で、スクリーンタイムが追加されました。あれを使うことは考えたのでしょうか。

石田氏 あの機能は、親もiPhoneである必要があります。活用してもいいのですが、スクリーンタイムだけだと、細かな時間まで設定することができません。Appleからすると、アプリベンダーは非常に重要なので、制限をかけづらいということもあるのでしょう。

 iOS 12では、移動を検知するためのAPI群もだいぶ変わっていて、その辺の開発はかなり大変でした。これは、深いところをやっているためでもあります。

制限できるアプリは5つから拡張する

―― 制限をかけられるアプリが、現状だとYouTube、LINE、Twitter、Facebook、Instagramの5つです。これだけだと足りない気もしますが、いかがですか。

石田氏 今は教師データを使って制御していますが、将来的には、SDNのコントロールエンジンがアプリのパターンを認識して制御していくようにします。学習効果にもよるので、利用頻度の高いアプリから順次増えていく予定です。

 最初の5つは「TONE m17」を使われている方々が規制しているアプリを高い順に入れつつ、親御さんや警察の要望が高いものになります。トーンモバイルでは「スマホあんしんラボ」を立ち上げましたが、あのページには要望を送れるコーナーもあるので、そういったところでもアンケートを取りながら考えていきたいと思います。

―― SNSや動画が中心ですが、アダルトサイトはいかがでしょうか。

石田氏 そちらは、フィルタリングでやっています。今はアプリ(フィルタリング適用済みのブラウザ)を使っていて、Safariは制限するのが推奨設定になっています。ただ今後は、それも網側に移すことはできると思います。

―― 今は「モニター」という扱いですが、これはなぜでしょうか。

石田氏 アプリの利用時間ごとの制限を使いたい方は、モニターという扱いになります。アプリとトラフィックの動向を把握しないといけないからです。検証期間ということで、料金も500円引きにしています。もともと、トーンモバイルのサービスは月額1000円(税別、以下同)が基本で、iOS向けは1500円でしたが、モニターとして協力していただければ、その差額の500円も無料になります。ここまで大規模なSDNはあまりないので、どういった形でネットワークに影響するのかも含めて検証していく期間と位置付けています。

―― 以前も、ネットワーク側に機能を入れていました。そことの違いを教えてください。

石田氏 網側は、アプリを消されてしまった場合、それを検知して通信を切断するというふうに使っていました。SDNを入れた2.0では、より柔軟に網側に機能を寄せる変更を行っています。具体的には、アプリ削除などセキュリティ機能の解除と推定される動きに対しての認知システムを変更しています。例えば、お客さまが誤ってアプリを削除した場合、検知後に突然LTEネットワークを切断するのではなく、一度管理者の方へ通知を入れ、ある一定期間対応されないようであれば、ネットワークを切断するようにしています。

―― このサービスを利用すると常時VPNにつながるようになりますが、これはセルラー、Wi-Fi関係なく制御がかけられるようにするためでしょうか。

石田氏 はい。VPNはiOSの機能を前提にしていて、プロファイルで制御しています。iPhone側から見るとVPNの1つでしかありませんが、つながっている先はトーンモバイルのSDNです。iPhoneに対しては、やはり特殊なことをしないのが一番ですから。

トーンモバイル SDNコントローラーを活用することで、より柔軟な通信制御が可能になった
トーンモバイル TONE SIM(for iPhone)を挿したiPhoneは常時VPN接続になり、VPNをオフにすることはできない
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