トーンのiPhone向けSIMが進化 石田社長に聞く“ネットワーク制御”に注力する狙いMVNOに聞く(2/2 ページ)

» 2019年01月25日 10時57分 公開
[石野純也ITmedia]
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AIを使った状態把握は完全にできている

―― AIを組み合わせて異常な行動を検知するという機能がありましたが、こちらについて、中身をもう少し詳しく教えてください。

トーンモバイル 子どもの異常な行動を検知して親に通知をする機能も追加された

石田氏 AIを使った状態把握は完全にできていて、走っているのか、歩いているのか、車に乗っているのかといったことを判断したうえで、「この時間に車に乗っているはずがない」というスケジューラーの情報と組み合わせて(アラートを出すようにして)います。

 今後は、スケジューラーと他の情報を掛け合わせて、AI側がユーザーに聞いてくるような仕組みも考えています。例えば、Googleフォトで顔の一致比率が低いと、「同じ顔ですか?」と聞いてきますが、ああいう形のものも考えています。

―― 子ども側の動きはアプリで検知しているのだと思いますが、バックグラウンドに回ってアプリが落ちてしまうといったことはないのでしょうか。

石田氏 GPS系やVoIP系のアプリは切断できないように作ることができます。ただ、バックグラウンドで常駐するアプリだと、Appleの審査が厳しくなることもあるので、かなり前もって出すようにしています。今回は、SIMカードを挿してアプリを設定するだけでよくなったので、かなりシンプルになりました。

―― 以前はもっと複雑だったということでしょうか。

石田氏 MDMなど、iPhoneの仕様をいっぱい使っていましたが、その部分がかなりキレイになりました。これは、お得意の垂直統合ソリューションです。IoT用にキャリアグレードファイアウォールが必要ということで、フリービットが研究を進めていたものを転用しています。

―― IP電話以外の音声通話で、迷惑電話の可能性がある着信を検知できるようになりました。これは何を使っているのでしょうか。

石田氏 標準の電話に対してやるのは相当難しかったのですが、外部提供業者との技術的な連携が取れて、やることができました。iOSの電話には外部のデータベースに接続するAPIがあり、それを利用しています。

―― IP電話では以前から提供していましたが、標準の電話でもという声は多かったのでしょうか。

石田氏 高かったですね。今後、シニア向けのサービスも出てきますが、そちらでは特に高かったです。やはりシニアだと電話のニーズが根強いですから。

黒字化は維持している

―― 経営面にお話を移すと、9月に単月で黒字化したということでしたが、今もその状態は維持していますか。

石田氏 もちろんです(笑)。(通信事業者は)継続課金のビジネスなので、ある程度蓄積されると、それ(黒字の状態)が続いていきます。

トーンモバイル トーンモバイル単体で9月には黒字化を達成した

―― 赤字に苦しんでいるMVNOも少なくありません。

石田氏 MVNEまで合わせてやると(黒字化も)やりやすいですが、MVNO単体だと難しいところはあります。トーンモバイルは、動画のトラフィックだけチケット制にして切り分けていたり、サポートセンターを遠隔にしてコストを抑えたりと、レッドオーシャンになったときのことを考え、もともとインターネット接続事業をやっていたときの経験を生かしてやっています。それでも黒字化は、半年から1年弱遅れてしまいました。

―― それはなぜでしょうか。

石田氏 あるMVNOの会社が破綻しましたが、そのときに新規加入者が少し減るという影響を受けています。また、MVNOの伸び率が一定になったこともあると思います。トーンモバイルはもともとMVNOに入りづらい人の枠を取っていましたが、シニアの部分があまり獲得できず、(計画に)ズレが生じました。

AndroidへのTONE SIM開放は「コスト構造を見て」

―― 子どもとシニアにターゲットを絞っていましたが、最近の発表は、子ども向けが多い印象があります。シニア向けが手薄になっているのではないでしょうか。

石田氏 シニア向けに関しては、大きめのことを今考えています。計画がズレたのは、4月に子ども向けのTONE SIM(for iPhone)を出してから、2カ月後に別の開発(TONE SIM 2.0の開発)に入ったためです。シニア向けは、今年度(2018年度)末ぐらいの繁忙期より後の施策になります。

―― お話をうかがっていると、ネットワーク側でかなりのことができるようになってきていることが分かりました。一方で、専用端末を作り続ける必要性は薄くなっているのではないでしょうか。

石田氏 Androidもだんだんとセキュリティ領域が高まってきていて、ベクトルを見ると、iOSに近づいています。本当にシンプルな構造でできるのかを考えたとき、ネットワーク側に寄せていくのは非常に大切なことです。

 ただ、(収益が)ブレークイーブンになったポイントには、やはり(端末が1種類で)サポートコストの安さがあります。(端末を自社で開発しないと)ユーザーにとって選択肢が多くなるのはいいのですが、やはりAndroidは種類が多い。そのため、まずはユーザーの多いiPhoneに開放しました。そこでのコスト構造を見て、今後全開放にするのかどうかは検討していきます。

取材を終えて:シニア向けサービスの拡張にも期待

 12月に機能強化したTONE SIM(for iPhone)だが、その裏では、ネットワーク側にサービスを寄せるなど、大幅な“改修”を施していたようだ。当初のTONE SIMは「あんしんモード」に切り替えるためにはMacが必要になるなど、ハードルが高かったが、ネットワーク側にこれらの機能の一部を実装することで、よりシンプルに使えるようになった。

 一方で、制限できるアプリ、サービスがまだ5種類しかなく、トレンドになっている「TikTok」や、ゲーム系アプリには時間別の制限が適用できない。親が安心して子どもに渡せるサービスにするためには、この部分の拡充を急ぐ必要がありそうだ。

 また、インタビュー中にも触れた通り、子ども向けサービスに開発リソースが集中しており、シニア向けのサービスがやや少々手薄になっている印象を受けた。こちらについては、既に何らかの展開を考えているというため、今後の展開に期待したい。

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