店舗を変えるモバイル決済
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» 2019年02月07日 06時00分 公開

モバイル決済で店舗改革:店舗がモバイル決済を導入するメリット 政府の“補助金”にも注目

今、店舗のキャッシュレス対応が急務とされている。今まで現金決済のみに対応していた個人店や中小小売店がキャッシュレス対応するためには、越えなければならないハードルがある。加えて、それを超える価値があるのかを見極める必要もある。

[小山安博,ITmedia]

 今、店舗のキャッシュレス対応が急務とされている。キャッシュレス対応というと、簡単なものはQRコード決済対応から、本格的なクレジットカード対応までのレベルがあるが、将来的にはクレジットカードへの対応が必須だろう。

 とはいえ、今まで現金決済のみに対応していた個人店や中小小売店がキャッシュレス対応するためには、越えなければならないハードルがある。そしてそもそも、それを超える価値があるのかを見極める必要もある。

キャッシュレス対応にまつわる2つの課題

 キャッシュレス決済は今、日本が国を挙げて取り組んでいる大きなテーマだが、現在の日本には2つの課題がある。

 1つは支払いをする消費者側の課題だ。日本は現金支払いが多く、経済産業省によれば2015年の段階で8割以上の支払いが現金によるものとされている。それから多少の変動はあるだろうが、キャッシュレス決済比率は2割程度という理解で間違いはないだろう。

店舗キャッシュレス 各国のキャッシュレス比率(2015年)。経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」から引用

 この比率は、世界の先進国の中ではドイツに次いで低く、現金信仰の根強さを物語っている。消費者にとっては、保有している現金以上の買い物ができない安心感や匿名性の確保などのメリットがある反面、ATMに並ぶ時間、盗難・紛失の危険性などのコストがかかる。

 もう1つの課題が店舗側で、これはキャッシュレス決済への対応状況だ。といっても、実のところ日本のキャッシュレス決済への対応状況は悪くはない。大手コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストア、家電量販店、大手ファミリーレストランなど、店舗数の多いチェーンでは、既にクレジットカードをはじめとした各種決済手段に対応しているところが多い。

 交通機関でも、Suicaをベースに各社が対応しており、全国津々浦々で同じカードがそのまま切符として利用できる国は多くない。クレジットカードでのチャージなどの課題はあるが、Suicaは多くの店舗でショッピングにも使えるなど、比較的先進的だ。

店舗キャッシュレス 幅広いスマートフォンで利用できる「Suica」

 そうした中で課題となるのが、中小事業者、特に個人商店のような小規模事業者だ。中小企業庁によれば、日本企業のうち小規模事業者は86.5%で、中でも小売業で小規模事業者が占める割合は84.4%に達する。宿泊業、飲食サービス業でも87.3%が小規模事業者だ(2012年)。

 小売や飲食だけがキャッシュレス決済の対象ではないが、決済の場として日々使われる小売や飲食業は小規模事業者が多く、そのキャッシュレス対応が遅れているというのが、日本のキャッシュレス決済の課題だ。

 この課題を解決するには、客と事業者双方の歩み寄りが必要だ。鶏と卵のように、どちらが先に解決すればいいというわけではなく、どちらも順次対応を進めていく必要がある。

キャッシュレス対応のメリットとデメリット

 キャッシュレス化のメリットとしては、消費者側にとっては現金を持ち歩かないことで盗難・紛失の心配がなく、支払時に小銭を数えてお釣りをもらう必要がないこと。履歴が確認できるため、家計簿をつける手間も省け、ATMを探してお金を下ろさなくてもすむという時間的なメリットも大きい。

 使いすぎるという懸念に関しては、銀行口座と直結して支払いを口座から行うデビットカードや、あらかじめチャージした金額の範囲内でしか使えないプリペイドカードなどによって、キャッシュレス化のメリットを享受しつつ、使いすぎを抑えられる。

 店舗側にとってのメリットは、やはり時間的なコストの削減が大きい。消費者がレジ前で代金を支払う速度は、全体としてキャッシュレス決済の方が早い。特にレジが混雑するような店舗ではその効果が大きいだろう。

 現金を扱わないため、レジ締めをはじめとした現金管理も容易になる。手作業ではないため、売り上げとの差額が発生することもなく、レジ締めが短時間で終わらせられるし、最後に現金を銀行に預けに行く手間も省ける。強盗などの犯罪でも被害を抑えられるだろう。

 これらはコストを下げるという点でのメリットだが、プラスの効果を発生させるメリットもある。クレジットカードなどのキャッシュレス決済サービスは、日々の決済の記録を集約している。1店舗だけでなく、全国の店舗の動向がまとめられており、それは多くの示唆に富むデータとなっている。

 このデータを分析して消費者の動向を把握しようというデータマーケティングも、キャッシュレス対応のメリットだ。世間の売り上げを活用したデータによって、売り上げ予測や仕入れの工夫など、売り上げ増に向けた新たな取り組みの指標としても利用できる。

 こうしたメリットに対して、店舗側は手数料などの費用が必要となる。特に決済ごとに発生する決済手数料は、1件1件の支払いが少額で利益も薄いような小規模店舗では大きな負担となる。また、今までのレジからキャッシュレス対応のレジに更新するための費用も負担だ。

店舗キャッシュレス スマートフォンやタブレットを活用したモバイルPOSも数多くある。写真はリクルートライフスタイルの「Airレジ」

 とはいえ、政府は店舗のキャッシュレス対応を推進しており、特に消費税増税に向けて中小企業向けに決済端末導入の補助が用意されている。例えばiPadなどを使うモバイルPOS(mPOS)の導入では、タブレットの2分の1、プリンタなどの付属機器や導入費用の4分の3、設置にかかる費用で4分の3までの補助金が国から支給される。

 タブレットと付属機器、導入費用は1システムとして上限20万円、設置費用も上限20万円までだが、こうした補助金が出ることで、導入ハードルは格段に下がっている。

 今後、消費税増税に向けたポイント還元も話題になってくるし、QR決済の話題を含めて、日々新しい情報があふれている。そこで本連載では、個人商店などの小規模事業者がキャッシュレス、主にモバイル決済に対応する際に役立つ情報を紹介していきたい。

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