日本民間放送連盟(民放連)は3月6日、FMラジオとIPサイマルラジオ「radiko.jp(ラジコ)」双方の聴取に対応するスマートフォン「ラジスマ」を発表した。対応するスマートフォン第1弾は、NTTドコモの「らくらくスマートフォンme F-01L」(富士通コネクテッドテクノロジーズ製)とau(KDDIと沖縄セルラー電話)の「URBANO V04」(京セラ製)の2機種。民放連はラジスマ対応機種の拡大を図りたいとしている。
ラジスマは、radiko.jpアプリとFMラジオアプリを統合した「radiko+FM(ラジコプラスエフエム)」アプリをプリインストール。1つのアプリで双方を聴取できる「ハイブリッドラジオ」として位置付けられている。
radiko+FMアプリのユーザーインタフェース(UI)はradikoアプリとほぼ同じだが、特定のラジオ局(※)を選択すると「FMラジオスイッチ」が出るようになっている。このスイッチは放送ソースの切り替えスイッチで、オンにすると「radiko.jp」から「FM放送」に切り替わる。FM放送の受信中も、radiko.jpが提供する番組情報や楽曲情報は取得可能だ。
radiko.jpの配信は、実際の放送よりも数秒遅れとなる上、権利の都合で一部または全部が配信されない番組もある。よりリアルタイムに番組を楽しみたいとき、あるいは権利の都合で配信されない番組(コーナー)を聴取したいときにFM放送に切り替える、といった使い方も想定している。
※ radiko.jpで聴取できるラジオ局のうち、FMラジオ局と「ワイドFM(FM補完放送)」を提供しているAMラジオ局が対象(実験配信中のNHKラジオを除く)
FM放送は周波数を決め打ちして受信することもできるので、radiko.jpに対応していないFMラジオ局(コミュニティFMなど)も聴取可能。災害などでネットがつながらない時にも役立つ。バッテリー消費量が少なくなるのも魅力だ。
なお、今回登場するラジスマは両機種ともにFM放送受信時にイヤフォンを接続する必要がある(アンテナとして利用)。
日本では、1925年に東京放送局(現在のNHK東京第1放送)が初めてのラジオ放送を実施。中部日本放送(現在のCBCラジオ)を皮切りに、1951年からは民間のラジオ放送も始まった。
時代の流れとともにラジオ放送が取り巻く環境も変わってきた。ここ数年はスマートフォンが普及し、これから5G(第5世代移動体通信システム)の商用サービスが始まろうとしている。スマホや5Gといった情報通信技術の発達は「人々の生活を豊かにする点では有意義」(民放連 岩崎正幸ラジオ委員会委員長)である一方、「ラジオ局にとっては“埋没”の危機」(同)をもたらすものでもある。
激動のラジオ業界において、救世主ともいえる存在がインターネットを使って放送をサイマル(同時)配信するradiko.jpだ。2010年3月の一部地域での実証実験から始まったradiko.jpは、次第に対象地域を拡大。2014年4月には有料(月額350円)でエリア外聴取もできる「プレミアム」サービス、2016年11月からは過去1週間の配信番組(一部非対応あり)を後から無料で楽しめる「タイムフリー」サービスを開始するなどサービスを随時拡充している。最近ではある種の“課題”だったジャニーズ事務所所属タレントの出演する番組のエリア外聴取とタイムフリー聴取にも対応した。
2018年3月現在、radiko.jpアプリのダウンロード数は3000万回、1日のユニークユーザー数は120万人を超えており、ラジオを聴取する新たな手段として一定の支持を集めている。
一方で、先にも触れた通り、radiko.jpは「本放送より数秒遅れる」「一部番組(コーナー)が配信されない」「非対応のラジオ局がある」といった弱点がある。災害などで通信が途絶した場合に放送を受信できないという課題も抱える。
ラジスマは、スマホ自体にFMラジオを搭載し、それをradiko.jpアプリと同じUIで使えるようにすることで、互いの弱点を補完しあおうというアプローチ。ラジオの聴取層を広げる意味では「千載一遇のチャンス」(民放連 升家誠治・ラジオ未来経営研究部会長)なのだ。
現時点のラジスマは、高年齢層向け機種が多い。民放連ではメーカーやキャリアにラジスマ対応を呼びかけているが、特に若年層向けのラジスマの存在は重要な鍵となるだろう。
今後、民放連と参加ラジオ局の“本気”が問われそうだ。
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