分離プランで“端末割引”はどうなる?/接続料によらない仕組みとは?:モバイルフォーラム2019(1/2 ページ)

» 2019年03月15日 19時08分 公開
[房野麻子,ITmedia]

 テレコムサービス協会のMVNO委員会が主催した「モバイルフォーラム2019 〜2030年を見据えた新たな競争ルールとMVNOの果たすべき役割〜」では、「激動のモバイル業界 MVNOの発展に必要な競争環境とは?」と題して関係者によるパネルディスカッションが行われた。

 モデレータはITmedia Mobile編集長の田中聡が担当。パネリストはジャーナリストの石川温氏、野村総合研究所 パートナーの北俊一氏、MVNO委員会副委員長でケイ・オプティコム 執行役員の浜田誠一郎氏の3人だ。

 パネルディスカッションは、(1)モバイル市場の競争環境、(2)中古市場の変化がもたらすもの、(3)MVNOと新技術の関係、という3つのテーマで行われた。

モバイルフォーラム ジャーナリストの石川温氏、野村総合研究所 パートナーの北俊一氏、MVNO委員会副委員長でケイ・オプティコム 執行役員の浜田誠一郎氏
モバイルフォーラム モデレータは本誌「ITmedia Mobile」編集長の田中聡が務めた

矛盾が多い競争環境

 大手キャリアが分離プランを導入し、料金を値下げすると、MVNOにも大きな影響があると予想される。

モバイルフォーラム MNOの値下げでMVNOにどんな影響があるかを議論

 浜田氏は「影響が大きいのはどのMVNOも同じ」とし、どのように料金を下げるか具体的な施策がまだ不明なので「注視している」と答えるにとどめた。また「サービスや値付け、売り方を考えていかなくてはいけない。気が気ではない」と危機感を募らせた。

モバイルフォーラム MVNO委員会副委員長 浜田誠一郎氏。MVNO全体とケイ・オプティコム執行役員としての両方の立場から発言した

 現在、コンシューマー向けのMVNOの契約数が伸び悩んでいる現状に対しても、「MNO自身の低価格メニューやサブブランド、MNOグループのMVNOのあおりを食らっているのは事実。そこにどう対応していくかは、お約束の発言だが、付加価値を磨いていくこと」(浜田氏)と語る一方、接続料に注目しており、「接続料が動くのであれば、それを利用者に還元して対抗していくことを考えている」としている。

 石川氏も「多くのユーザーがMNOは値下げすると思っているので、格安スマホが選択肢からなくなりつつある」と分析し、値下げの影響は大きいと見る。MVNOが対抗してさらに値下げをすることになった場合、「本当に経営が成り立つのか」と危惧した。「ユーザーがようやく格安スマホという選択肢に気が付き、2年縛りが終わったらMVNOに乗り換えようと思い始めたところに、“2割から4割値下げ”でドコモに目が向いてしまった。なぜこんなことをしたのかというのが正直な感想」(石川氏)と語った。

モバイルフォーラム ジャーナリストの石川温氏

 MNOの値下げに応じて接続料が変わるかとの質問に対し、北氏は「値下げに応じて接続料が下がる美しい構造になっていればいいが、必ずしもそういう形になっていない」と回答。石川氏の疑問に対しては、「ドコモも値下げしたくないんじゃないかと思うが、言ってしまったので今さら取り消せない」と現状を認め、「価格を追求するMVNOがいてもいいが、新しい付加価値を付けていくことが重要」とし、ユーザーのロイヤリティーを上げていくmineoの戦略を「世界的に見ても非常にユニーク」な例として挙げた。

モバイルフォーラム 野村総合研究所 パートナーの北俊一氏。総務省「モバイル研究会」の構成員の1人

 MNOに値下げを求めた政府の言動に対しては、「スイッチングコストを下げるなど、MVNOが成長するためにさまざまなことをやってきたが、多くの国民がMNOから動かない。MVNOを育て、MVNOにスイッチすることで全体の通信料金を下げようという施策に限界を感じて、こうなったらMNO自身に値下げしてもらうしかないというロジックが官邸の方に働いた」(北氏)と説明した。

 それに対し、石川氏は「長期ユーザーが優遇されるとユーザーは同じキャリアから動かない。競争させたいのに長期ユーザーを優遇するのは明らかに矛盾している。航空会社のように、たくさん使う人が優遇されるべき。矛盾が足を引っ張ってうまく回っていない気がする」(石川氏)と疑問を呈した。

端末の買い方はどうなるのか

 分離プラン導入で、気になるのが「端末の割引がなくなるのか」ということだ。ハイスペック端末を好む人にとって、定価でしか購入できなくなると影響は大きくなるが、北氏によると「全く決まっていないというのが正しい表現」という。

 その上で、「家電でも、新品のときに利益を出して、だんだん売れ残ってきたら粗利を削る。在庫が残りそうなら、場合によっては少し赤字でも売っていく。そういう世界と同じような世界になるのではないか」(北氏)と自身の考えを語った。

 なお、本当に自由に値付けになるのか、割引ができるのか、あるいは韓国のように割引に上限を設けるのかといった具体的な中身は、これから省令やガイドラインで規定していくと説明。そこでも「値引きができなくなるということではない」と強調しつつ、「ガイドラインを作る必要はないんじゃないか、いやいや、ある程度の目安は必要とか、そんなことを議論しているところ。これからなので、何ともいえない」と、まだ決まっていない状況であることを説明した。

 石川氏は、「ケータイからスマホの移行時や、型落ち端末、在庫処分の端末には割引をしてもいいのではないか」というドコモの吉澤社長の考えを紹介。また、docomo withではAppleよりも安く購入できるiPhone 7について「余った端末をかき集めるというより、新たに作っているのではないか。表向き型落ち端末で、実は新品として作られ安く売るというようなやり方もあり得る」(石川氏)と語った。

 浜田氏は分離プランについて「MNOからスイッチがしやすくなるのは間違いないので、mineoをやっている立場からは歓迎」としつつも、「われわれは完全分離プランをやっていてそれが強みだった。MNOが同じことをすることになれば、新たな差別化を考える必要がある」(浜田氏)と複雑な心境を語った。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月26日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  3. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  4. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
  5. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  6. iPhone Duoを使って痛感した「Face ID」のありがたさ 充電スタンドに置いたまま通知が見られない不便さに苦しむ (2026年10月24日)
  7. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
  8. デジタル庁が「Androidのマイナンバーカード」対応機種を公表 属性証明機能を使える機種は限定的 (2026年10月19日)
  9. KDDI、子会社モビコムのモンゴルでの火災について事実関係を公表 「法令違反行為を行っていない」 (2026年10月24日)
  10. 【ニトリ】599円の「マルチスタンド」 スマホやタブレットのキッチン利用も便利 (2026年10月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー