今年のMWCは「5G一色」という感じであった。
しかし、日本は2019年9月にプレサービス、2020年春に商用サービスがスタートするということもあり、MWCの5G祭からは蚊帳の外という感があった。5Gスマホが発表されても「これ、日本じゃ買えないんでしょ」という諦めの気持ちが先行してしまうのだった。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年3月2日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
そんななか、やはり個人的に熱心に取材したのが料金関連だ。特にNTTドコモ・吉澤和弘社長のインタビュー取材では広報から「MWCなんで5G関連の質問でお願いします」と言われたが、最初に「5Gの料金はどうなるのか」「今度の値下げは5Gを意識した設定になるのか」という質問をしつつ、春の値下げをどのようにしていくのかを深掘りしていった。
詳細は日経電子版の連載「モバイルの達人」(「春の値下げに悩むドコモ 政府意向をくみ取れるか」)に掲載している。
印象的だったのは「NTTドコモの料金体系はわかりづらい」という声が多いのを感じているようで、吉澤社長としては「シェアパックからの脱却を図りたい」とのことであった。家族を囲い込むのがNTTドコモの勝ちパターンであり、そのためのシェアパックであったが、やはり家族で分け合えるといっても、それが結局、一人あたりの料金のわかりにくさに繋がる。
おそらくシェアパックを辞める一方、他社のように、家族の人数が多ければ、それだけ適用される家族割引が拡大する手法が取られるのではないか。
KDDIの高橋誠社長にもインタビュー取材をしたが「(NTTドコモが)いままでのシェア型をキープするのか興味はある。対抗策は考えている。NTTドコモが分離モデルを用意しているので、世の中が大きく変わるのではないか」と警戒していた。
総務省では電気通信事業法を改定し、完全分離プランを導入しようとしている。完全分離プランが導入されることで、影響を受けるのがdocomo withだ。
吉澤社長は「docomo withは端末も安く料金も安いというので、直近では500万件近く契約されている。しかし、完全分離プランを導入するとなると、docomo withもできなくなる」という。
つまり、すでに契約している人は継続できるが、新規での契約受付は停止になる可能性があるというわけだ。
すでに安価に使えるプランがあるにも関わらず、「完全分離プランを導入せよ」ということで、安いプランが新規受付停止になるというのは理解に苦しむ。総務省の本来の目的は「国民の通信料金に対する負担を下げる」はずではなかったのか。
まさに本末転倒な展開になりそうで、先が思いやられるというものだ。
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