WWDCを間近に控えた5月28日、Appleが突如、第7世代の「iPod touch」を発表した。新モデルの登場は実に4年ぶり。処理能力が大幅に向上した他、256GBのストレージを備えた大容量モデルもラインアップに加わっている。
価格は32GB版の2万1800円(税別、以下同)から。現行のiOSデバイスでは最安になり、同社のサービスの普及を後押ししたい狙いも見え隠れする。
このiPod touchを試用することができたので、レビューをお届けしたい。
iPod touchと銘打っているが、その見た目はiPhone、それもホームボタンを搭載していたころのそれに近い。ただ、普段からフルスクリーンになったiPhone X系統のiPhoneを使っていると、その小ささには改めて驚かされる。
iPod touchのディスプレイサイズは、わずか4型。これはiPhone SEなどと同じサイズで、筆者のように手の大きなユーザーであれば、手のひらにきちんと収まる。ただし、形状などは、4年前に登場した第6世代のiPod touchを踏襲しており、以前からのユーザーだと、あまり驚きはないかもしれない。
デザインこそ踏襲したiPod touchだが、中身は別物だ。プロセッサには、iPhone 7と同じ「A10 Fusion」を採用。Appleによると、これによって、処理能力は従来モデルの2倍に向上したという。A10 Fusionは、AR対応アプリを作成する際に利用できる「AR Kit」に対応した、2世代目のプロセッサでもある。
第6世代のiPod touchは「A8」を搭載していたため、AR対応アプリを利用できなかったが、第7世代のiPod touchでは、AR対応アプリも動作するようになった。実際、カメラに映ったモノの長さなどを図る「計測」アプリも、最新のiPhoneと同様、標準搭載されている。
処理能力がどれほどなのかは、Geekbench 4でベンチマークを取り、スコアを確認してみた。まず、CPUはシングルスコアが2723、マルチコアスコアが4713で、これはiPhone 7よりやや劣る数値になる。GPUの処理能力を測るMetalスコアは1万118だった。これもiPhone 6sと同程度で、iPhone 7よりは低い数値になる。
原因は、CPUのクロック数が1.63GHzに抑えられているためだと思われる(iPhone 7は2.34GHz)。とはいえ、iPhone 6sも十分現役で、いまだに最新のiOSが提供されて続けている。最新のiPhoneと比べると力不足になる面もあるが、ゲームをはじめとしたさまざまなアプリは十分な速度で動いた。
docomo with(5月31日まで)やMVNOの端末として、iPhone 7がいまだに“現役”であることを考えると、アプリがきちんと動作するのはある意味当然ではあるが、それが2万1800円で手に入るのは、お買い得感がある。もともとは音楽プレーヤーとして誕生したiPodだが、第7世代iPod touchは、むしろアプリプレーヤーとして重宝しそうだ。とはいえ、最新のiPhoneと比べると、処理中の熱が気になるなど、やはり違いもある。あくまでiOSの世界の入り口になる端末と考えるべきかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.